スタジアム | 鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム | 主審 | 高山 啓義 |
入場者数 | 7,677人 | 副審 | 川崎 秋仁、西村 幹也 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 21.1℃ / 37% | 第4の審判員 | 浜本 祐介 |
VAR | 井上 知大 | ||
AVAR | 武田 光晴 |
メンバー
徳島
C大阪
- 監督
- ダニエル ポヤトス
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
ルヴァンカップ決勝から中3日で迎える明治安田生命J1リーグ第34節。敵地、鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアムで行われた徳島ヴォルティス対セレッソ大阪の一戦は0-1でセレッソ大阪が勝利。悔しい敗戦直後の試合という大切な試合で勝利を挙げるとともに、これで2021年シーズンのJ1残留を無事確定させた。
■メンバー
徳島ヴォルティスのスターティングメンバーは、リーグ戦前節から1人入れ替え。左CBを石井秀典から福岡翔太入れ替えてきた。先週1週間は天皇杯、ルヴァンカップ決勝という日程だったので徳島にとっては中10日ぶりの試合となるが、石井は横浜FC戦で脳震盪の疑いで途中交代しており、前節も前半で交代しているので大事をとった形か。その前節石井に代わって出場したのが福岡だった。
そして前線は4試合連続でムシャガ・バケンガと垣田裕暉の2トップ。2トップになった第29節の川崎F戦以降は全試合で得点を決めており、この2トップになって3試合で7得点と得点が奪える様になってきたのでそのまま継続となった。
セレッソ大阪のスターティングメンバーは、リーグ戦前節から2人入れ替え。藤田直之と松田力が外れ、奥埜博亮と山田寛人が起用された。直近の公式戦である4日前のルヴァンカップ決勝からは1人入れ替え。原川力に代わって喜田陽が起用されている。
ベンチ外となった原川力はこの1週間半での3試合でプレーしたのはルヴァンカップ決勝だけなので、もしかすると小さい負傷を抱えている可能性もある。そしてこの試合でも清武弘嗣はベンチスタート。ということでルヴァンカップ決勝とほぼ同じメンバーとなるが、決勝で敗れた次の試合ということで小菊監督はあえてその選択を下したのだろう。
■準備してきたものがハマった立ち上がり
開始1分にも満たない段階でセレッソは加藤をDFラインの背後に走らせ、これをジエゴが倒してしまいイエローカードを受ける状態に持ち込む。このファールについて開始早々ということもありジエゴを含む徳島の選手が抗議していたが、この場面はファールで相手のビッグチャンスになり得る場面を阻止しているのでSPA(Stopping a Promising Attack)。ファールの程度云々は関係なくファールをした時点でイエローカードが出される場面である。
この場面も含めてハーフタイムで紹介された前半のアタッキングサイドで右サイドが60%、そして試合終了後に紹介された前後半のアタッキングサイドでは右サイドが58%となっていたようにセレッソは明確にこのサイドを狙ってきた。
これは徳島の戦い方からくるもので、徳島は左SBのジエゴが最終ラインに残ってビルドアップを行うが、セレッソがこの時に右サイドでボールを奪うことに成功するとジエゴの背後にスペースがある。とはいえスペースだけなら最初から高い位置を取ることが多い右SBの岸本の背後にもあるし、どちらかといえばこちらの方がより広いスペースはあるのだが、ここは徳島も最初からスペースがあることを前提にしているし、その分右CBには対人にも強いカカを起用している。しかしCBの左に入るのはビルドアップの能力は高いが守備面ではどうしても不安が残る福岡。なので狙うのはこの右サイド、そしてジエゴと福岡の間なのである。
最初に抜けられかけてジエゴがイエローカードを受けてからはジエゴのプレーもより慎重になったことでここまで簡単に抜け出す場面は少なくなったが、セレッソは一貫してここを狙い続けていた。
そして試合の立ち上がりからセレッソのプレッシングが機能した。徳島の左SBが残る3バックは中盤で岩尾がアンカー気味に残り、もう1人の藤田譲瑠チマが前に出る、そして宮代が少し低い位置にいるという形になることが多いが、2トップの1人が岩尾へのパスコースを消しながらサイドに押し出すようなプレスをかけることで最終的に徳島は長いボールを蹴らざるを得ない状況を作ることに成功していた。
そして11分にセレッソがCKから先制。その直前の逆サイドからのCKでも丸橋はニアの瀬古に低いボールを送りフリックさせるという形からチャンスを作っていたが、直後の右サイドからのCKでは低くて速いボールをニアで奥埜がフリックするとファーサイドで加藤が詰めてゴール。
このニアでフリックする形はルヴァン決勝でも名古屋にやられたように守備側にとっては非常に守りにくい形なのだが、徳島CKはゾーンとマンツーの併用なのでニアのストーン前で触られるとどうしてもボールウォッチャーになる。そこに加藤がうまく飛び込んでゴールを奪ってみせた。丸橋のボールやニアでのフリックというパターンだけでなく、ファーサイドに流れた加藤の動きを見ると完全に準備した形だったことがわかる。
ここからしばらく徳島はセレッソのプレッシングを嫌がりゴールキックでも繋ぐのではなく長いボールを蹴るという選択を余儀なくされていた。
■ビルドアップで前線に届けられない徳島
しかし15分を過ぎた頃から少し徳島がペースを握りだす。
小菊監督は試合後のコメントで「ハイプレスをかけたい選手と、引き込んで相手にボールを持たせる選手と、意思の疎通でギャップがあった」と語っているが、SHの背後で岸本や西谷にボールを持たれる状況を作られ、その結果DFラインとCHが下がらざるを得ない状況を作られたからだった。
こうなると徳島は前線でのレーンの分担やローテーション、移動が非常に上手いのでセレッソを押し込むことに成功。18分にはゴール前のバケンガにボールが届く場面を作られ、20分には垣田にヘディングシュートを放たれる場面を作られている。
しかしそのあたりの意思疎通を飲水タイムで整理すると以降は守備も安定。徳島がボールを持つ時間は長くなったがチャンス自体は作られないようになる。
徳島にとって厳しかったのはビルドアップでスムーズに前線に時間とスペースを届けられなかったことだろう。
立ち上がりに比べるとセレッソはCBにまでアプローチにいくことは減ったので徳島もボールは持てる。ただし岩尾は2トップでケア。さらにSHは絞ったポジションを取るので最終ラインからCHやインサイドレーンにいる宮代へはなかなかボールは入らない。
なのでどうしてもボールが外回りになるのだが、ここでSHに寄せられるので例えば岸本に残された選択肢は個人突破やプレスを受けた状態でのパス。個人で頑張らないといけないという状況になっていることが多かった。
徳島にとっての岸本の役割はセレッソにとっての丸橋になるが、例えば6分の瀬古から丸橋に渡って丸橋が斜めのクサビを打った場面のような選択を岸本はなかなか取れなかった。
■改善できない徳島のビルドアップ
徳島にとって絶対的な存在である岩尾が下がったことで、試合後のポヤトス監督へのフラッシュインタビューでも最初の質問が岩尾を代えた理由だったように徳島界隈には色々と衝撃というか心配があったようだが、理由は岩尾に少し違和感があったからとのこと。すでにビハインドの状況なので違和感があるなら残り試合を考えてもここで無理をさせるのは得策ではないことは理解できる。
しかし徳島は岩尾に代わって鈴木が入ったことで少しビルドアップでのCHの動きが変わった。徳島はビルドアップの時にCHが必ず段差をつけるのだがこの段差の作り方が変わった。
垣田の判断が遅くここは奥埜が垣田からボールを奪うことに成功するが、これは前半見られなかったパターンである。
しかしここから51分に山田、52分に松田陸がビッグチャンスを迎えると徳島は2人目の選手交代を行う。
チームの心臓である岩尾に続きエースの垣田が早い段階で交代となったことで中継でも驚きの声が出ていたが、これも前半の飲水タイム以降ビルドアップでなかなかうまくいっていなかったからだろう。
徳島の右SHは岸本が大外に出てくる分内側に入る。となると前線ではシャドゥストライカー的に振る舞う役割となるがビルドアップではIH的に振る舞ってほしい。
そこで宮代だとどうしてももう1列前の選手なのでなかなかIHとしてビルドアップに絡む、ビルドアップの出口となる仕事は難しい。そこでCHもできる小西を投入したということだろう。FWまで時間とスペースと共にボールが届いていないので2トップである意味がなかった。実際に小西は何試合か右SHで先発しているが基本的にはこの役割。そしてだからこそ左シャドゥにもなる2トップの左に宮代は移動している。
しかしそれでも徳島はセレッソの守備に対して効果的にボールを運べず。
68分には丸橋のFKから奥埜がニアで合わせるというビッグチャンスを作っている。
ここまで上福元のスーパーセーブでなんとか1点ビハインドのままで耐えているが、セレッソももう2点は入っていてもおかしくない展開だった。
試合はそのまま終了。0-1でアウェイのセレッソの勝利に終わりこれでセレッソの勝ち点は45。4試合を残して今季のJ1残留を確定させた。
■その他
序盤に危ない場面はあったものの、試合としてはセレッソが危なげなく勝ち切った試合となった。
展開としては典型的な小菊監督の勝ちパターン。最初のプランがうまくいって先制できると試合はスムーズに進めることができる。
ハマらなかった時の対応や修正、先制できずに我慢比べのような展開になると我慢できなくなるという弱点はあるので、磐石のチームというわけではないが、勝ったり負けたりぐらいにまではチームを持ち直すことができたことがJ1残留を確定させることができた最大の要因だろう。
例年ならこの第34節が最終節になるが、今季は2チーム多いので後4試合ある。
そのうち2試合が川崎Fと名古屋という上位勢となるが、チームとしてどこまで戦えるかをチャレンジし、残された最後のタイトルである天皇杯に向けて準備をしてほしい。
また徳島はこの敗戦で降格圏から抜け出せず。下位チームが軒並み勝てなかったので順位やすぐ上のチームとの勝ち点差は変わらないが、厳しい状態であることには変わりない。
もうちょっと3バック化した時の両サイドがビルドアップで貢献できれば楽になりそうなのにとも感じるが、そうなると守備の部分で難しくなるという部分もあるのだろう。
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