スタジアム | 三協フロンテア柏スタジアム | 主審 | 中村 太 |
入場者数 | 6,458人 | 副審 | 西橋 勲、和角 敏之 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇時々晴 / 19.4℃ / 57% | 第4の審判員 | 榎本 一慶 |
VAR | 山本 雄大 | ||
AVAR | 聳城 巧 |
メンバー
柏
C大阪
- 監督
- ネルシーニョ
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
カップ戦を挟んでの5連戦、アウェイ4連戦の最後となる明治安田生命J1リーグ第35節、敵地三協フロンテア柏スタジアムでの柏レイソル対セレッソ大阪の一戦は試合終盤の失点で1-0で敗戦し、セレッソ大阪は連勝ならず。そして対戦相手の柏レイソルはこの勝利で今季のJ1残留を決めた。
■メンバー
柏レイソルのスターティングメンバーは、4日前に行われたリーグ戦前節と全く同じ11人。ベンチメンバーも代わっているのはGKのみでフィールドプレーヤーは全く同じ6人が並ぶ。前節の名古屋戦でも敗れはしたものの悪くない時間帯もあったので継続ということなのだろう。
ということで前線はクリスティアーノと武藤雄樹、右SHにマテウス・サヴィオが入りCHはドッジと三原雅俊となる。
セレッソ大阪のスターティングメンバーは、同じく4日前に行われたリーグ戦前節からキム・ジンヒョン、坂元達裕、加藤陸次樹の3人を残し8人を入れ替え。ほとんどが連戦の2試合目、勝利した天皇杯準々決勝名古屋戦でプレーしたメンバーで最終ラインは右から進藤亮佑、チアゴ、鳥海晃司、新井直人。CHは藤田直之と原川力。左SHには清武弘嗣が入り、前線で加藤とコンビを組むのは豊川雄太となった。
小菊監督就任後、鳥海はチアゴとセットになっておりこの2人はカップ戦でプレーしていたので、この試合がJ1初先発。新井直人もリーグ戦としては5月23日の第15節広島戦以来3度目の先発となる、
またこの試合で外れた8人のうち、松田陸、瀬古歩夢、丸橋祐介、奥埜博亮、乾貴士の5人はベンチ外。奥埜は前節終盤に負傷交代しているのでその影響かもしれないが、他の4人は前節の勝利でJ1残留を決めたこともあり完全休養といったところだろう。
■ビルドアップの出口を作れないセレッソ
最初の数分こそセレッソが柏ゴール近くまで迫る場面をいくつか作ったが、徐々にそれもなくなり柏がセレッソゴール近くまで迫る場面を増やしていくという立ち上がりになった。
柏のボール保持ではビルドアップの時に両SBが前に出てCHの1人主に三原がCBの間に降りてきて3バック化する。
そして前線では片方のSHが中央に入ってCH化し、もう片方のSHがシャドゥになる3-4-2-1化と両方のSHがIH化する3-1-4-2と2パターンあるが、この試合でよくやっていたのは3-1-4-2の方。これはセレッソ対策という部分もあるのだろうが、2トップが武藤とクリスティアーノというどちらもセカンドストライカー的な選手でCFがいないことから前線は2トップで流動的にしたいという狙いがあったのではないかと思われる。
これに対してセレッソは4-4-2。プレスにいく事もあるがブロックを作る場合もあるという感じで、この試合で多かったのはブロックの方。アンカーを2トップで挟み中央を消す形となる。
となると柏はバックからCH(アンカー)にボールをつけることがあまりできないのでボールの運び方としてはサイドから。
これも両サイドで少しキャラクターが違っており、右サイドはまず大南にボールをつけそこから右IHになるマテウス・サヴィオが内側からサイドのスペースに飛び出し、さらにそこに中央からクリスティアーノも出ていくという形。
一方左サイドでは仲間と武藤がポジションを入れ替えながら2トップの脇に落ちてビルドアップの出口になり、大外の三丸を高い位置に上げようとする。
この柏のボール保持で目立っていたのは右サイド。13分にクリスティアーノのクロスに武藤がヘディングで飛び込むという場面を作るが、どうしてもサイドで人数をかけるので中に人がいなくなることも多かった。
なのでどっちかといえばセレッソにとって守りにくかったのは左サイド。武藤は仲間の動きを見てポジションを変えてくるのが少し厄介だった。
そんな左サイドから決定機を作ったのが28分の場面になるが、この仲間と武藤にクリスティアーノも絡んでアイデア爆発から最後は武藤が抜け出してシュートするもキム・ジンヒョンがセーブした。
この場面は仲間がコントロールしきれなかったボールが武藤に渡ってという形なのだが、リプレーで見ると仲間に当たった時点で武藤は進藤よりも前におり、鳥海よりも身体半分前に出ていたので、もしこの場面でゴールネットを揺らしていたとしてもVARでオフサイドになっていたと思われる。
なのでこの2つの場面はあったものの、柏はどうしても大外からのボール前進なので攻めあぐねている時間の方が圧倒的に長く、セレッソのブロックを動かすようなボール保持はなかった。
ただ、これは柏にとっては通常運転というかそもそも相手を動かすという部分については3バック化して両SBを上げるという可変だけ。そこからコンビネーションやアイデアで勝負しようというスタイルなので、2つチャンスが作れたというのはポジティブなのだろう。だからこそネルシーニョのハーフタイムコメントが「攻めの形は悪くない。焦れずに決定機を作っていこう」となり、試合後のコメントでも「非常にいい入りができた」と語っているのだと思われる。
そして、こういう捉え方ができる試合展開になった最大の要因は、セレッソが効果的なボール保持が全くできていなかったからでもある。
柏の布陣は4-4-2。そもそもの守備の考え方がマッチアップを合わせて人への意識を強めてというものなので4-4-2のセレッソに対しては当然4-4-2である。
ここからセレッソはまず両SBを出して両SHは内側に入る。しかしこれだけだと柏の2トップに対してセレッソは2CBなので数的同数。ということで後ろを安定させるために藤田がCBの間に降りて3バックになる場面が多かった。
これに対して柏のCHは基本的にはついてこない。例えば中盤に残る原川は常にマークを続けていたように自分のエリアでマッチアップする相手に対しては常に監視を続けるが、自分のエリア外にまで下がってしまった選手は放置。なので3人対2人になる、
ただ3人対2人はまだなんとかなる人数。ということで全てではないが、柏の2トップが3バックに対してアプローチをかけてくる場面も見られた。
そうなるとセレッソは前にでたSBに。しかしここはSHが徹底的に監視。なのでセレッソはなかなかビルドアップの出口が見つけられずSBのところで詰まってしまう場面が続出した。
おそらくセレッソの狙いとしては内側に入れたSHで柏のSBを引っ張り、2トップの片方がそのSBの背後を狙うというものだったと思われるが、そもそもその手前で捕まってしまうのでそこまで至らなかったのだ。
■ビルドアップの出口になったのは
そこでセレッソは飲水タイムの後から3バックの形を右SBの進藤を最終ラインに残した形にかえる。
こうなると仲間は自分のエリアの外にまで下がる進藤に行ってもいいのかどうかという問題が出てくるので、ようやくセレッソがボールをもつ時間を作れるようになった。
そして柏は、先ほどの下がるCHに対してCHはついていかないということと同じ基準で、仲間が進藤にまで出ていくことはせず、仲間が捕まえるのは大外の選手ということになる。その結果セレッソのビルドアップの出口になったのは新井直人の後ろに落ちてくる清武。藤田や原川はCHが捕まえにくるし、大外はSH。しかし新井直人の後ろに落ちてくる清武にまではSBがついてくることができないので、ようやくここで浮かせることができたのだ。
およそ前半の半分をかけてようやくビルドアップの出口を作ることができたセレッソだったが、この形はおそらく当初のプランにはなかったもの。なのでここから攻めあぐねることになる。
先に書いたように当初セレッソが狙っていたのはSHでSBを引っ張ってFWがそのSBの背後を狙う形。しかしたどり着いたビルドアップの形では相手のSBは誰も見ていないのでSBを引き出すことができないのだ。
最初に何度かチャレンジしていたようにもしここで例えば新井直人が左サイドで縦に行くことができれば相手の大南とマテウス・サヴィオのポジションをひっくり返したり、受け渡すのであれば相手のSBが動きFWがそのスペースを狙うことができるのだろう。しかし新井直人は右利きなのでどうしても縦という選択肢は持ちにくい。
そんな苦しい展開の中でようやくなんとかチャンスを作ったのが38分の藤田のクロスに坂元がヘディングで合わせようとした場面。
この場面では清武が大外に出て新井直人が内側。清武にボールが入ったところでSBが清武に食いついたところに3列目の藤田が飛び出していくという形でチャンスを作っている。
チャンスを作れない展開が続いていたので、このあたりの時間帯から清武は大外レーンでボールを受け新井直人を内側に入らせるというプレーを増やしていた。アディショナルタイムに藤田がミドルを放った場面もスタートの立ち位置としては清武が大外だった。
こうして何とかセレッソが柏陣内に攻め込む場面を作り始めるが、ここでネルシーニョが打った手はFW2枚を下がらせないこと。
セレッソはCHまでもがサイド攻略に関与しないとチャンスを作れないのだが、ここでFW2枚が残るとCHは被カウンターのことを考えると当然出て行きにくくなる。そして出ていったら出ていったで進藤も前に行きたがるのでCBと2トップで2対2。カウンターはかなり狙いやすくなる。
人数を調整して駆け引きを行ってくるあたりはまさにネルシーニョ。
ということで後半に入るとセレッソがボールを持ち、柏がカウンターを狙うという展開になっていった。
■肉でも魚でもない
最初に動いたのはセレッソ。60分に豊川に代えて大久保嘉人を投入する。
ここまで色々とセレッソの推移について書いてきたが、ボール保持についてはこの試合に向けて準備してきたことはもうなくなっている。
なので頼るのは個の力だ。
直後のヘディングで合わせようとした場面なんかはまさにそれである。
しかし一方で前がかりになるほどカウンターの脅威はどんどん上がる。63分、64分と連続でカウンターを浴びている。
強度を維持したい柏は71分にドッジと仲間に代えて椎橋慧也と神谷優太を投入。75分にセレッソも加藤に代えて山田寛人を投入する。
このあたりの時間帯からは柏もボールをもつ時間が長くなっていくのだが、柏もボールを持ってしまうとブロックを動かす手はないので特に何も起こすことはない。チャンスになるのは79分の場面のようにカウンターだった。
そんな中でチアゴが右足を痛めたことで85分に西尾隆矢と交代。これに合わせて藤田、坂元に合わせて喜田陽、高木俊幸も交代させる。
これで3枚替えという形になるが、3枚替えになったのはこれが3回目の交代だったから。
1試合での交代は5人まで認められているが、交代を行うことができるのはハーフタイムを除く3回まで。60分、75分と既に2回の交代を使っているので、ここしか交代できるタイミングはない。そしてチアゴは負傷なのですぐに代えるしかなく、となると後2人もということなのだろう。
しかしここで失点。
クリスティアーノがスペースでボールを受けたことを起点に逆サイドに展開されると新井直人と鳥海晃司の間から深い位置で武藤にボールを受けられ大南に。そして大南が椎橋とのワンツーでペナルティエリア内に侵入するとそのまま左足でシュート。86分に柏が先制に成功する。
少し喜田の対応も軽かったが、セレッソはうまくいっていない時間が長すぎた。
先制した柏は89分に武藤に代えて戸島祥郎を投入。
CHもできる戸島は中盤の守備に関与する形でそのまま逃げ切りに成功。
1-0で柏レイソルが勝利し、1時間前に試合をしていた大分が敗れたことで柏のJ1残留が決定。
セレッソはリーグ戦3連勝とはならなかった。
■その他
試合終了後にTwitterで「薬味も醤油もかかっていない豆腐のような試合」と呟いたが、いわゆる「肉でも魚でもない試合」だった。
試合後のコメントで原川が「意図的に何かをできたかと言えば、今日は何もできない試合だった」と語っているがこれも同じニュアンスだろう。
前節の最後に書いたが、小菊監督の勝ちパターンは最初に準備したプランがはまって先制した試合。
この試合はそれが全部逆だったので負けパターンの試合である。
準備したプランがはまらなければなかなか軌道修正は難しい。
ビルドアップの部分は立ち位置を変えることで何とか改善したものの、アタッキングサードへの仕掛けの部分では修正する手段はなかった。
ここまでの小菊監督の戦い方を見ると、ディフェンシブサードからミドルサードへボールを運ぶビルドアップ、ミドルサードからアタッキングサードへボールを届ける仕掛けの部分を相手ごとに準備し、アタッキングサードでは基本的に選手に任せるという傾向になっているので、準備がはまらないとどうしてもこういう展開になってしまうのだろう。
そしてハマらなかった準備の部分も、例えば松田陸と進藤、丸橋と新井直人ではプレーの特徴もできることも全く違うので、それを踏まえた準備・プランが必要だったように感じた。
プレスとブロックを使い分けようとしていたり、ボール保持でもきちんとビルドアップをしようとする部分、そして対戦相手に向けた対策などはよくわかるのだが、どうやって、何をもって相手を上回ろうとしているのかという根っこの部分がちょっとまだよくわからない。
お疲れ様です。
返信削除ロティーナ(イバン)のときもこう言った、睨み合いのような試合はありましたがゲームの中で意図の見えるトライをできる部分があったりもしました。
小菊さんの場合試合の中での状況に応じた組織的な局面打開のアイデアの引き出しがまだまだ少ないように感じます。
いろいろな監督にコーチという形で師事し、引き出しこそ増やし、日本人監督の中では戦術家とは言わないまでも理にかなったオーガナイズが出来る人になったとは思います。某日本代表監督よりは上じゃないかとすら。
来季も継続のようですが、そういった試合の中でのアイデアが少ないのはリーグタイトルに近づく上で川崎や名古屋にむしろ差をつけられるのでは無いかと思いますし、勝ったり負けたりが続き中位止まりになるような印象しかないので個人的には外国人監督を呼んできて欲しいなと思うところです。