■名古屋グランパス 3 - 1 セレッソ大阪
名古屋グランパス:藤本(24') ケネディ(42') 永井(76')
セレッソ大阪:小松(36')
フォーメーション |
■名古屋グランパス
GK:1 楢﨑正剛
DF:32 田中隼磨 4 田中マルクス闘莉王 5 増川隆洋 6 阿部翔平
MF:33 磯村亮太 14 吉村圭司 8 藤本淳吾
FW:10 小川佳純 16 ケネディ 11 玉田圭司
SUB:50 高木義成 3 千代反田充 38 三都主アレサンドロ 7 中村直志 28 田口泰士 18 永井謙佑 25 金崎夢生
交代:磯村→金崎(61') 小川→永井(61') 玉田→田口(85')
■セレッソ大阪
GK:21 キム ジンヒョン
DF:3 茂庭照幸 14 丸橋祐介 17 酒本憲幸 22 上本大海
MF:2 扇原貴宏 9 ファビオ ロペス 10 マルチネス 13 清武弘嗣 23 倉田秋
FW:15 小松塁
SUB:1 松井謙弥 4 藤本康太 32 尾亦弘友希 6 山口螢 7 大竹洋平 19 永井龍 31 杉本健勇
交代:マルチネス→杉本(68') ファビオ ロペス→大竹(77') 酒本→山口(83')
久しぶりにセレッソのサッカーができた磐田の次は優勝争いをしている名古屋戦。
名古屋とは組み合せが悪く昨年から全ての試合でどちらの流れでもない試合になり結果全て負けている。まあ近年の名古屋はそういうサッカーをするチームなので名古屋ペースになってしまっているといえばそうなのかもしれない。
その名古屋はダニルソンがサスペンションの為、吉村と磯村のダブルボランチで玉田は2トップというよりも2列目に入る。
セレッソは快勝した磐田戦と同じメンバー。ただベンチには播戸のケガで永井が入り右SBの控えという位置付けだけど山口が戻って来た。
■名古屋のセレッソ対策
普段はダニルソンをアンカーに置いた4-3-3の名古屋はそのダニルソンがサスペンションなので、メンバー表上はケネディ・玉田・小川の3トップ、報道ではケネディ・玉田の2トップとされていたが、実際は玉田が2列目に入った4-2-3-1。攻撃の時には玉田が前線まで飛び出す事も多いので4-4-2とも言えなくはないけど、玉田は守備では明確な役割を持って一旦中盤に入る。
中盤に入る玉田 |
玉田の役割はセレッソの攻撃の起点となるボランチに行くこと。
玉田はセレッソボールになれば一旦中盤に入ってそこから後ろから組み立てようとするセレッソのボランチに対してプレッシャーをかける。
事前の報道では「2トップ」ってのがあったので、もしそうならボランチに対してプレッシャーをかけにくくなるから嬉しいのにと思っていたがやっぱりそうでは無かった。(まあ実際そうするとは思ってなかったけど)
DFラインに下りるマルチネスにはケネディがチェック |
そうなればセレッソはマルチネスがDFラインにまで下りてボールを落ち着かせようとする。
名古屋はそれに対しては玉田が行くわけではなくケネディがマルチネスの前に立ち玉田はもう一枚のボランチにはいる扇原を捕まえるようなポジションを取ってくる。
まあケネディはそれほど熱心にマルチネスに当たりに行くわけでもない(実際何度かあった様に前からプレスに行ってもGKを使ってそのプレスはかわされる)のでそこで厳しい状況になる事はないんだけど、簡単にはボールを運ばせないよという状況は作り出していた。
SBにはSHがチェックに入る |
後、名古屋のやり方として特徴的なのはセレッソのSBをかなり速いタイミングでSHが捕まえに来る点。
これは3トップの時もこの日の4-2-3-1の時も同じなんだけど、ボールを持つセレッソのボランチのところに寄せた後SBにボールが出た時はかSHが前に出て速いタイミングでそこに当たりに行く。
長居で柏と対戦した時にネルシーニョは選手をジグザグに配置することでマルチネスと丸橋の前にトップと2列目の選手を置きビルドアップを制限しようとしてきたがのと同じような考え方。
■セレッソの狙い
セレッソ SBからのアーリークロス |
高さと強さを兼ね備えた名古屋のCBコンビだけど速さは無い。それに対してセレッソの小松やファビオロペスは速さがある。(小松は数字上は高さでも負けてないんだけどね)
なのでセレッソの狙いはDFとGKの間のスペース。そしてそこに向けて執拗に酒本や丸橋からDFとGKの間に向けてアーリークロスを狙って行く。
しかし名古屋のCBもスピードが無い事は自覚しているようでDFラインを下げるタイミングが速いので、そのアーリークロスのタイミングが速くなっていく。
そしてこのアーリークロスはセレッソの守備方法にも影響を与える。ようは早いタイミングで前にボールを入れてしまうので相手ボールになった時にセレッソは前からのプレッシングという方法はあまり使えなくなる。
■名古屋の攻撃
名古屋 DFラインからのロングボール |
セレッソが前からプレッシングに行けないので名古屋はDFラインではフリーでボールを持てる。
なので名古屋の攻撃はDFラインからケネディや両サイドへのロングボールを狙ってくる。ただセレッソも名古屋の高さに対しては十分注意しているのでSBの帰陣も速く人数をかけて守る。
という訳で名古屋はロングボール、セレッソはアーリークロスが攻撃の中心。
■どちらのものでも無い試合は名古屋のゲーム
その結果、昨年からの試合と同じようにやっぱりこの日もどちらがゲームを支配している訳でもなく両チームともシュートがほとんどない状態で進んでいく。
名古屋は吉村と磯村のダブルボランチが良い距離感で常にCBの前に居続ける事に成功していた。まあ逆に言えばセレッソは相手のポジションを動かす事が出来ていなかった。そしてセレッソはSBもきっちり帰陣して人数をかけて守る事ができていた。
名古屋も時々は良い形でボールを奪えた時はボールを繋ぐ事もあるんだけど、まあ絶対的な武器があるのでリスクを組み立ての部分で犯してまでいかなくても良いという判断なのだろう。
どちらのものでも無い試合は名古屋にとっては自分たちの試合だということなのだろう。
実際、名古屋はその絶対的な武器であるセットプレーでゲームを動かす。
まずはCKの流れからペナルティエリアのすぐ外で扇原が玉田を倒してしまいそのFKを藤本に決められて先制。
前半36分に清武が鬼トラップに体を張って対応した田中隼磨がこぼれ球を拾った小松を倒してしまったPKで同点に追いつかれるものの、前半終了間際には左サイドからのFKをケネディに合わされて突き放され、最後にはなんとか守っていたものの奪ったボールのつなぎでミスが相次ぎ途中出場の永井に決められて3-1となってしまった。
■どちらのものでも無い試合につきあってしまうセレッソ
一方セレッソは少しアーリークロスを狙う事に固執しすぎていたんじゃないかとは思う。
いつものセレッソの様にポジションを崩して攻めていくわけではなく早いタイミングでアーリークロスを狙うことで、ボールを奪われてもスムーズに帰陣できるので守備の部分では安定しやすい。ただそれでは吉村と磯村をCBの前からほとんど動かす事が出来ない。なのでその状況ではシャドーにボールが入ってもバイタルで名古屋のダブルボランチとCBに潰されてしまう。
このやり方では確かに守備は安定しやすいしそれなりに成果はあげていたんだけど、セレッソのストロングポイントであるシャドーを活かすということにはつながっていなかった。
アーリークロス自体はセレッソの武器の1つでもあるし、それを早いタイミングで狙っていく事は全く悪いことではないんだけど、そればっかりになってしまうと何のためにシャドーに人を置いているのかという事になるし、低い位置にマルチネスがいる意味もあまり無くなる。(なので実際マルチネスを途中で下げてしまった)
まあ酒本・丸橋のアーリークロスから小松という形で先制できればこの形でも十分だったんだろうけど。
結果論になるけど、セレッソとしてはやっぱりもうちょっとボールを持って相手を崩すという事にウエイトを置いたほうが良かったんだと思う。
実際少しペースを握れていた立ち上がりの時間、後半の終盤はアーリークロスではなく中盤で動いてボールを受けることで相手のボランチを動かせていたし、最初のシュートを打ったのもセレッソだったわけなので。
まあ高さとセットプレーの1発がある名古屋相手に守備を考えるとずっとそれをやり通すのは難しいとは思うけど、今回はちょっとポジションバランスを崩さない事にウエイトを置きすぎたのかなと。あ、今回じゃなくってここまでの4試合全てでした。
■その他
試合後のインタビューで選手それぞれも言っていたけど今回もやっぱり煮え切らない試合になってしまい、やっぱり名古屋に負けた。
名古屋にとってはこれが勝ち点を取る上で最もリスクが少なく確実な方法なんだろう。
セレッソにとってはやられてる感はほとんど無いんだけど、昇格後の4試合全て同じような展開で負けているのでこの一見平坦に感じる状況は実は名古屋の方が圧倒的に有利な状況。なので本文中にも書いたけど、名古屋相手にはもっとセレッソはリスクを犯さなきゃいけなないだろうなと。平坦に見えても平坦じゃないんだから。
豊田スタジアムで見ていた席が丁度できそうな感じだったので、今回は新しい取り組みとして写真を使って見ました。
どうしても試合を見ながら写真を撮ってるのでもうチョットいい写真は無いのかと思う所もありますし、この試合はそんなにこの方法の良さがでるような内容では無かったのはちょっと残念ですがww
いつも解説ありがとうございます。
返信削除nonchyanmanです。
実写でのポジション解説とても分かりやすかったです。
今後もこのスタイルできれば希望します。
素人の私にも良く分かりました。
名古屋との対戦はいっつもこんなんですよね~。
名古屋のサッカーはリスクを最小限にして勝つ確立を最大限にする方法でセレッソとは間逆の感じがします。
名古屋のセットプレーとパワープレー。
藤本のキック精度。
ケネディ・釣男・増川の高さ。
これだけなんですがね~。
ホームの時1点差でしたが、
終了間際に乾が決めて1点差になっただけで、
今回と同様にセレッソが1点決めるとすぐに突き放され、
2点差になるので、なんぼがんばっても、
逆転も、引き分けることすら無理な展開になります。
ゲーム展開も後手後手になってますよね。
今節ですが、AKIさんのご指摘どおり、
セレッソは徹底して両サイドからアーリー一辺倒でした。
「釣男・増川ですけども~」と何度もつぶやきました。
その分、サイドバックの裏をずたずたにされることもなかったですが、残念なセレッソらしくない内容にもなってしまいました。
ボランチや真ん中からボール回せないと前にボール運べない。
サイドからボールあげても高さや枚数不足。
ポゼッションやロングボールで前に運べないなら、
どうしたら、ボールが前に運べるか。
ドリブルで自分で運ぶしかない気がします。
乾がいなくなって、
ドリブルで前に運べる選手がいなくなって、
攻撃のバリエーションが減っていて、
相手が読みやすい状況になっているのではないでしょうか。
ご意見お待ちしております。
後、ドリブルで運ぶと言う点では、
大竹や村田はどうでしょうか?
長文失礼いたしました。
あと、ドリブルで運ぶことの意見は、サッカーダイジェストかサッカーマガジンかの、浦和についての評論から、セレッソに当てはめて考えてみました。
返信削除ちなみに浦和はドリブルで運べるけど、パスで運べないと書いてました。
いつもありがとうございます。
返信削除アーリークロスについてですが、闘莉王と増川なので引かれちゃうとクロスでは可能性が低いけど、アーリーで楢崎との間ならなんとかなるというのはわかるんですけどね。CBはスピードが無いし楢崎も前に出るプレーはそんなに多くないので。
まあリスクヘッジと天秤にかけたんでしょうがあまりにも一辺倒過ぎた感はありました。
あとボールを運ぶプレーですが、セレッソの特徴としてシャドーがドリブルでボール運びに加わるというのは確かにあります。
で、今のメンバーではそのプレーは清武・ボギョンが得意にしてますし、倉田も清武やボギョンには劣りますが出来ないわけではありません。
なので倉田と清武が出ていたこの試合に限って言えば、そのプレーが少なかったのはアーリー一辺倒の影響じゃないかなと思っています。
まあ少し前に比べるとご指摘の様に去年の後半あたりから乾もコレを頻繁にやっていたけどファビオはあまりやらないので1つ減ったといえばそうなんでしょうが、まあ残りの2人はできるのでそれほど懸念するような状況ではないかと思います。
あと名前が出てる大竹もボール運びができそうですが、村田はマリノス戦だったかの時にそういうプレーを一度だけやってましたけどあまりできていないですね。
浦和についてはペトロビッチが監督の時は右SBの高橋峻希がボールを運べるなと思って見てました。
ちょっと本題ではないかもしれませんが、このボールを運ぶドリブルというのは本当に重要です。日本ではあまりこれについて書かれていたりする事は少ないのですが、ヨーロッパではドリブルはボールを運ぶドリブルと相手を抜くドリブルに完全に分かれていて言葉もそれぞれ別の言葉になっています。
で、僕の知る限り今のところ清武が日本人で一番これが上手いです。(世界最高峰はイニエスタです。)
ボールを運ぶドリブルについてはここに書かれておられるのでもし良かったら
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/hamayoshi75/article/28
あと乾が今ボーフムで低めの位置からプレーをはじめてるのはドリブルでボールを運べるからなんでしょうね。ボーフムは乾がボールを運んでチャンスを作ってなんだったらフィニッシュまでやってって感じの乾におんぶにだっこの状態になっちゃってますがw
あ最後に、ご期待に添えず申し訳ないですが写真のヤツは多分ホームじゃ出来ないですよw今回はたまたまですw
いつも誠実な分かりやすいお返事ありがとうございます。
返信削除御回答に対する質問です。
完全に引かれる前にアーリーを狙ったと言う訳ですね。
CBとGKの間を抜けるスピードのあるFWがいれば良いのですが・・・
乾が抜けて痛いですが、確かに、清武やボギョンはドリブルで運べますよね。納得です。
「運ぶドリブル」と「抜くドリブル」。
高橋峻が運べてスピードもありますが、
最近は浦和の右SBは平川。左が宇賀神が使われています。
運ぶことに対して右側はSH(右ウイング)の梅崎に任せて、
右SBは守備に強いタイプを選んでいるからでしょうか?
あと「抜くドリブル」ができるのは、
原口元気のような選手ということでしょうか?
という事は、乾は「抜くドリブル」の選手で、
「運ぶドリブル」の選手ではないという事でしょうか?
あと、乾のポジションってえらいことになってますよね。
ダイヤモンド型の後のCHを任されて、
前線まで出没。
こんなこと想像もでいませんでした。
今季残りはキンチョウですもんね。
それは無理だ。
すいませんでした。
nonchyanmanでした。
返信ありがとうございます。
返信削除アーリーを狙ったのは小松とファビオで闘莉王と増川に勝てるのはスピードだって計算だったと思いますよ。
小松は高さは飾りだし反応の速度はイマイチですけど、単純に走るスピードはありますからね。
あと浦和についてですが、監督が代わってからは横浜戦の1回ぐらいしかちゃんと見てないのでハッキリした事はわかんないんですが、ペッカーの時よりは少しカウンターに寄ったからじゃないですかね。
カウンターではSBで運ぶより前の選手で運ぶ方が効率が良いしリスクも少ないですから。ペッカー時代は高橋がボールを運んで後は前の選手でおっしゃるように原口の抜くドリブルなどで何とかしてよっていう攻守分断サッカーでしたけど。
あと乾に限らず真司も清武もボギョンも抜くドリブルも運ぶドリブルもどっちもやりますが、09年や昨シーズンに限って言えば乾は抜くドリブルの方が多かったですね。まあ昨シーズンは家長もいたのでバランス的に乾が運ぶよりも前で仕掛けたほうが良かったからってのもあるでしょうけど。
またボーフムの乾はスタートポジションが低くなってるだけで、今シーズンのセレッソとやってる事自体はあまり代わってないと思いますよ。ただ、セレッソ時代は他の選手と一緒にや、順番にやってくれてたけど、今は全部一人になってますけどw
写真は、図を書くより写真の方が楽なんでやりたい気持ちはあるんですが…まあ出来たらやりますが期待しないでくださいw