2017年6月26日月曜日

6/25 明治安田生命J1リーグ第16節 VS ベガルタ仙台 @ ユアテックスタジアム仙台

第16節
2017年6月25日(日)18:03KO ユアスタ

スタジアムユアテックスタジアム仙台主審今村 義朗
入場者数15,530人副審五十嵐 泰之、勝又 弘樹
天候 / 気温 / 湿度雨 / 23.7℃ / 83%第4の審判員佐藤 誠和
スターティングメンバー
ベガルタ仙台仙台
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • 渡邉 晋
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
ベガルタ仙台仙台
C大阪セレッソ大阪
今回対戦今季平均
データ項目ベガルタ仙台セレッソ大阪ベガルタ仙台セレッソ大阪
FK1771612
CK3355
PK0000
シュート13101011
警告/退場1/01/01/01/0

<監督・選手コメント>

ベガルタ仙台 渡邉晋監督
セレッソ大阪 尹晶煥監督

ベガルタ仙台 石原選手、西村選手、クリスラン選手
セレッソ大阪 柿谷選手、山村選手、山下選手、キム・ジンヒョン選手

天皇杯2回戦から中3日で迎える明治安田生命J1リーグ第16節。セレッソ大阪は敵地ユアテックスタジアム仙台でベガルタ仙台と対戦し、2-4でアウェイに乗り込んだセレッソが勝利。
2003年から勝利できていなかったユアテックスタジアム仙台で勝利した。

■メンバー

セレッソのメンバーは、前節負傷で欠場となった清武が先発復帰。ミッドウィークの天皇杯に続く先発は右SHに入る。また前節累積警告で出場停止となっていたソウザも復帰し現在のベストメンバーと言える布陣に戻っている。天皇杯に続いて先発となるのは、ヨニッチ、ソウザ、山口、清武の4名となる。
しかし一方でベンチメンバーは厳しい状況。特にボランチとCBに怪我人が続出しているため、3年目の西本、2種登録の瀬古くんがベンチ入り。どちらもU-23では出場を続けているが、この試合に出場すればトップチームデビュー。また控えGKには丹野ではなく圍が入る。

一方のベガルタ仙台は天皇杯で筑波大学にまさかの敗戦を喫しどうしても勝ち点3がほしいこの試合。前節累積警告で出場停止だったクリスランは復帰したが、先発ではなくベンチスタート。3-4-2-1の前線には石原が1トップで2シャドゥに西村と奥埜が入り、右WBには川崎フロンターレから期限付き移籍中の中野がリーグ戦では移籍後初先発。天皇杯に続き先発となっているのは、大岩、奥埜、中野の3人となっている。

■ミスマッチ

この試合で最初のシュートを放ったのが仙台のボランチ三田。その後9分には清武が可能性のあるミドルシュートを放つものの、直後に奥埜にフリーでシュートを打たれ、12分には永戸のロングスローから西村にシュートを放たれるなど、立ち上がりから仙台の攻撃に対してセレッソの守備が後手に回る場面が続く。
そうなっていたのは仙台のシステムによって生まれるミスマッチに対してセレッソの守備が対応出来ていなかったからだった。
マッチアップ
3-4-2-1の仙台と4-4-2のセレッソ。マッチアップはこの様になる。
ノーマルな立ち位置では、セレッソの前線2枚に対して仙台の最終ラインは3枚。仙台の前線3人に対してセレッソの最終ラインが4枚。そしてボランチは両チームとも噛み合っている状態。しかしセレッソのSHと仙台のWBは噛み合っていない状態となっている。
この立ち位置をスタート地点として、セレッソが選択したのは仙台が後ろから繋ぐビルドアップに対して前から捕まえに行く事。前から捕まえる事で立ち位置のズレを消してしまおうという狙いだったのだろう。
ミスマッチが顕著に
しかし前線から捕まえに行く事で結果的にはミスマッチがより顕著に現れる事となる。相手の3バックに対して枚数をあわせて柿谷が前線に出ていくと右WBの中野が空く。ここに丸橋が出ていくと奥埜はその丸橋の裏を狙う。またボランチはマッチアップが噛み合っているので2枚が前に出る。しかし最終ラインでは丸橋の裏に奥埜が出て行くので山下は上げられない。ということはセレッソのボランチと最終ラインの間にスペースができ、ここに石原が下がってきてボールを受ける。この石原にももしヨニッチが出ていってしまうと最終ラインにギャップを作ってしまい松田の内側を西村に走られてしまうので出ていけない。松田が西村に対応するためポジションを絞るとその外側に永戸が上がってくる。
こうやってどこかで歪みを作ってしまうので仙台は簡単のボールを運び、フィニッシュの場面を作っていった。

■2点を先制するセレッソ

仙台ペースで始まった試合だったが、先制したのはセレッソ。16分に柿谷の左足から生まれる。
仙台の攻撃を跳ね返したところからのカウンターで、清武が中盤でボールを受けて前を向くと、仙台の3バックの外から裏を狙う柿谷にロングパス。それを柿谷が左足で豪快に蹴り込み0-1とセレッソが先制する。
この場面は、仙台の一瞬の隙をセレッソがついたような形だが、仙台の構造的な問題でもある。
仙台はボール保持の時にボランチの選手が前線のサポートにかなり動く。それが攻撃の厚みを作っていたりするする側面もあるのかもしれないが、ボールを奪われた時にファーストディフェンダーがおらずカウンターを受ける場面が見られる。
立ち上がりにも清武がカウンターでボールを運びかけたところで三田がいないという場面もあり、そこでは石原がプレスバックしてボールを奪い返したものの、トップの選手が常にそれをすることは不可能。なので、この失点シーンでも清武にボールが入る前に三田は清武を後ろから追いかける形になっており、清武はそれをいなして前向きに余裕を持ってパスを出す事ができる時間を作っていた。

先制から4分後の20分に生まれたセレッソの追加点は仙台のビルドアップのミス。
柿谷の突破をカバーし得たGKから丁寧に繋ぐ仙台に対して、高い位置から守備をするセレッソ。ボランチに付けたパスをソウザがアタックしセレッソがボールを奪うと、丸橋から杉本に渡り、杉本からゴール前で全くフリーになっていた山村にパス。山村が落ち着いて流し込んだ。
山村のシュートの場面で仙台の左サイドで増嶋が残っていたのだが、これは仙台がビルドアップで3バックを大きく開かせるポジションを取るから。プレッシングを受けた時にキーパーを経由して逆サイドにボールを逃がす事ができるようにこのポジションをとっているのだが、それがゴール前で山村をフリーにすることに繋がった。
とはいえこの失点は増嶋に責任があるなんて事はまるでなく、単純にビルドアップのミス。判断ミスだった。

■ミスマッチでボールを運ぶ仙台と、カウンターのセレッソ

DFとMFの間にスペースができる
2点を先制したセレッソは守備のスタート地点を下げる。そして前がかりになる仙台。
しかし仙台のミスマッチに対して、守備のスタート地点を決める事ができずに、どうしても4-4-2の2列目と3列目の間にスペースを作ってしまう。なんとか最後でカバーしていたものの仙台がセレッソゴールに迫る場面を作り続けていた。
とはいえ、一方的な仙台ペースだったかといえばそんなことは無く、仙台も前がかりになった分より1点目と同じ状況、ボールを奪われた時にファーストディフェンダーが足りないのでセレッソはカウンターを何度も繰り出していた。
ボランチの前にスペースができる
しかし、リードしている事もあってセレッソのボランチは徐々にその背後のスペースを嫌がりポジションを低くしていくと、今度は4-4-2の1列目と2列目の間にスペースができることとなり、ここを起点に使われたのが仙台の1点目。
降りてきた奥埜がボランチの前でゴールを受けると、中野にスルーパス。その折り返しを石原が決めて36分に仙台が2-1と1点差に迫ることとなる。
このスペースを空けてしまう流れもミスマッチでよくあるパターン。仙台の中野と永戸は1対1で勝負できる選手なのでSBが引っ張られる。となると中央では2CBと1トップ2シャドウで2対3と数的不利に。なのでボランチが下がるしかなく、そうなるとボランチの前が空く。ミシャシステムが猛威を奮っていた時にサンフレッチェ広島が青山からのスルーパスでガンガン崩していたのと同じ原理だ。
42分〜
そしてこの直後にセレッソ大阪にトラブルが発生。永戸に倒された清武が左のモモ裏を抑えて立ち上がれなくなり、42分に水沼と交代することとなる。
ちなみにこの場面も仙台の弱点というか、セレッソがカウンターを仕掛けたところで起こった場面。清武がカウンターでボールを運ぶ時に、三田は完全に清武において行かれている。そこを永戸が遅れてカバーしたが外されてしまい、競り合った中で手をかけて倒してしまったという流れだった。永戸は清武が倒れたのは自分が押したからではないとアピールしていたが、その前の競り合いで手を使っている事がファールの対象。そしてワールドカップのときにも話題になったが手で相手を引っ張る動きは故意でないと起こり得ないので、イエローカードの対象となる。

■後半4-4-2のままスタート

リードしているものの仙台にミスマッチを活かされているセレッソ。システム変更の可能性もあるかなと思われたが、後半立ち上がりもそのまま4-4-2でスタートする。

後半最初のゴールを奪ったのはセレッソ。セレッソは後半に入ると守備に関しては未だ危なっかしいままだったが、繰り返しできるカウンター気味にボールを運んだところからボールを保持する形も作っていたところで何度もCKを奪う様になる。その4本目はゾーンで守る仙台に対して2度目のショートコーナーを選択。一旦仙台が跳ね返すものの、それを拾ったセレッソが左サイド深くに丸橋を侵入させ、丸橋の折り返しをファーサイドで待つ山下が頭で叩き込み、58分にセレッソが1-3とリードを広げた。
セットプレーをゾーンで守ると、2つめ、3つめの状況が難しい。
これは通常のゾーンディフェンスと同じで、ゾーンディフェンスはボールの場所が基準となり守備陣形が整えられることとなるが、セットプレーでは人数も多いしポジショニングも複雑なので守備陣形を作り直す事が難しい。なので攻撃側はショートコーナーを使ったりする。
そしてこの場面ではさらにもう1度セレッソにボールを入れられてしまっているので、守備陣形は乱れており、またマンツーマンのように相手のポジションも把握出来ていない。
なので大外で山下が完全にフリーとなっていた。
59分〜
得点後のキックオフのタイミングとなる59分、仙台は奥埜に代えてクリスランを投入。クリスランが1トップで、石原がシャドゥに落ちる。
一方のセレッソもこのタイミングで山村を最終ラインに落とす5-4-1に変更。マッチアップをあわせる形にしてくる。
3バックの両サイドが起点に
マッチアップをあわせる事でミスマッチが解消され、はっきり止める形にしたかったのだが、セレッソが1トップになった事で3バックの両サイドがボールを運んで起点になろうとする仙台。
そしてこの直後に、三田と増嶋でボールを運んだところから、三田からクリスランへパス、それをワンタッチで背後のスペースに流し込んだところに西村が飛び出し冷静に流し込んでゴール。
61分に仙台が2-3と再び1点差に迫るゴールを決める。
マッチアップを合わせていたものの出入りする選手に引っ張られCBが開きすぎていた形。これも広島や浦和がよくやる5トップハメの典型的な形だった。

ただ時間の経過とともにセレッソの5バックが落ち着いてくるとしっかりとスペースを埋める。その結果徐々に仙台はこれまで持っていたミスマッチの効果を得られなくなり、ボールを持って押し込むものの、セレッソディフェンスを崩すような場面は見られなくなる。
そしてもう1つ。後ろのマッチアップを合わせた事で、セレッソのボランチはボールを奪った時に前に出ていけるようになる。それが実ったのが68分。ソウザが前向きにボールを奪ってカウンター。ソウザのシュートはシュミット・ダニエルがセーブするも、そのこぼれ球を後ろから上がってきた山口が豪快に蹴り込みゴール。2-4とリードを広げた。

■3バックを攻撃的にする仙台

70分〜
ここで仙台は増嶋に代えて蜂須賀を投入。蜂須賀は3バックの右に入り、中央には大岩、左に平岡という並びにする。
これはセレッソが5-4-1にした事でミスマッチの恩恵を受けられなくなっていたが、1トップになった分、3バックのサイドは起点になれる事ができるようになったので、そこにWBもできる蜂須賀を投入し、中野のサポートに、そして中野の後ろから蜂須賀がクロスも入れられるという事なのだろう。ちょうど昨シーズンセレッソが3バックの右に田中を起用したのと同じ考え方だ。
ブロックを落として守るセレッソに対して、ブロックの外からパンチを繰り出す形を選択したという事だろう。
88分〜
セレッソは76分、足をつった丸橋に代えて田中を投入すると、仙台は81分に西村に代えて梁勇基を投入。セレッソは88分にソウザに代えてトップチームデビューとなる西本を投入する。
浦和や広島もそうだが、こういうミスマッチでハメ技勝負を狙う戦い方は、マッチアップを合わされ相手にきっちり守られた状況で、ビハインドを負っていると選手の入れ替え以外に手段がない。それゆえにキッカーとして優秀な梁勇基を投入するという狙いだったのだろうが。
なのでここからは、仙台がボールを持ってブロックの外から殴り続けるもののセレッソは跳ね返し続けそのまま試合終了。2-4でセレッソの勝利に終わった。

■その他

スコア的には2-4でセレッソの快勝となったこの試合。ミシャシステムの亜種の様な形を使う仙台に対して4-4-2の守備ではかなり後手を踏んでいた。
これは以前にも書いた事があるが、尹晶煥監督は鳥栖時代は広島にほとんど勝てなかった様に結構この手の相手は苦手にしている。なのでそのミスマッチを消したいと前から行くことを選択したんだと思うが、尹晶煥のチームは今シーズンのセレッソも、また鳥栖時代も高い位置から守備をするやり方はあまりとっていない。鳥栖時代の尹晶煥のチームはハードワークがキーワードの様にいわれていたが、1列目のタックルラインのシーズン平均はハーフウェイライン付近で、当時のセレッソを含めたほとんどのチームよりも低い。
そしておそらく今シーズンのセレッソもそれぐらいだろう。
なので前から捕まえに行くものの、例えば第14節に浦和に対して前からガンガンいって勝ちきった柏ほど整備されているわけではない。なので守るエリアが広がってしまった分ミスマッチを面白い様に使われた。
個人的には4-4-2で自陣でブロックを作って中を締める。人数の合わない外を使われたらボールが出てからブロック全体が全力でスライドするという形で戦ったほうが良いかな?とも思っていたが、そういう形はとらなかった。まあ尹晶煥はそれよりも前から消しに行ったほうが守備が機能すると判断したのだろう。

あとセレッソに関してはもう1点。柿谷がようやく裏抜けでゴールを決めたのだが、このチームには裏抜けが足りない。前線には杉本と山村がおり、この2人はほとんどのチームのボランチよりも大きくて強く、1対1ならここで確実に起点を作ってしまう事ができる。なのでなんとか出来ている部分もあるが、先日の清水戦の様にコンパクトにして囲まれるとそうはいかない。
山村が時々裏に飛び出しているが、それをやってるのはボールが出るときだけしかない。
このコンパクトな相手の布陣を動かすのが裏抜けで、ボールが出るか出ないかにかかわらず裏抜けの選択肢があることで、相手のボランチ回りを使えるようになる。
とはいえ試合後のコメントでは尹晶煥監督も裏抜けが足りない事は認識しているようで、ここをどうするのかには注目したいところだ。

最後に仙台。この戦い方でボールを持った戦い方はできるだろう。しかし途中にも何度も書いたが現段階ではボールを失った時の設計が未整備だった。このままだとこれから何度もこういうカウンターを受けまくる試合が出て来るんじゃないかと思う。




1 件のコメント :

  1. コメントありがとうございます。
    サイドでもゴールに直接つながらないかもしれませんが裏抜けすることに意味はありますのでそれほど問題は無いのですが、今のやり方だとSHは下がるし、守備のタスクも多いので回数をこなすことができないという問題はありますね。

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