2021年4月16日金曜日

4/14 明治安田生命J1リーグ第18節 VS. 徳島ヴォルティス @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審福島 孝一郎
入場者数2,711人副審中野 卓、赤阪 修
天候 / 気温 / 湿度曇 / 12.3℃ / 53%第4の審判員先立 圭吾
VAR笠原 寛貴
AVAR越智 新次

セレッソ大阪C大阪

 

徳島ヴォルティス徳島

 
  • 監督
  • レヴィー クルピ
 
  • ヘッドコーチ
  • 甲本 偉嗣

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き

(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催

<監督コメント>


<選手コメント>


ACLの日程変更により前倒しで開催された明治安田生命J1リーグ第18節。セレッソ大阪が徳島ヴォルティスを本拠地ヤンマースタジアム長居に迎えた一戦は1-2で敗戦。ホーム初の黒星となり、これで3試合勝利なしとなった。

■メンバー

セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節と同じ11人。またベンチにも前節と同じ7人が入ったため、前節ゴールを決めた中島元彦、加藤陸次樹はベンチスタートとなる。
変化があったのは指揮官で、新型コロナウイルス感染症の濃厚接触疑い者として前節までベンチから外れていたクルピ監督がこの試合から無事にベンチに復帰となった。

一方の徳島ヴォルティスのスターティングメンバーは前節から3人入れ替え。鈴木徳真、渡井理己、垣田裕暉が外れ、岩尾憲、浜下瑛、河田篤秀を起用。鈴木、渡井、垣田の3人はベンチスタートとなる。
徳島は前節から中2日でこの試合を迎えており、さらに次の試合も中2日での開催。この連戦はそんな日程を考慮して選手を入れ替えながらという形になっている。

■試合の流れが明確になった15分

試合立ち上がりの15分間は最初にセレッソがビッグチャンスを作るが決められず、そして逆に高い位置でボールを奪い返した徳島がショートカウンターでそのままゴールを奪い先制するという流れだった。
試合を15分区切りで考えると、立ち上がりの15分間はこの試合で唯一セレッソが徳島よりもボール支配率で上回ったのだが、この15分間でこの試合がどのように進んでいくかがほぼ決まった時間帯だったと思う。
もちろんそれはスコアが動いたという部分もあるのだろうが、それはどちらかといえばオマケ的なもので、両チームがやろうとしていることと、実際に対峙してみて両チームが出来ることがハッキリしたからである。

まずセレッソが作ったビッグチャンスは、開始わずか3分。キム・ジンヒョンから清武への列を飛ばしたパスから清武がワンタッチで西尾に落として、西尾からCBの間に入った藤田直之に出す。このボールを藤田直之がワンタッチで前線の豊川に。豊川に対して徳島は鈴木が対応するも潰しきれず、こぼれ球を大久保が拾って再び豊川を背後に走らせるスルーパス。
これで豊川と鈴木が完全に入れ替わり抜け出した形でシュートを放つも惜しくもシュートはポストに跳ね返された。

この試合の流れを変えることができた可能性があったとすればここだっただろう。川崎F戦のように試合の流れが決まる前に先制パンチが決まっていれば強引に展開を変えることができたかもしれない。とはいえサッカーは1試合に両チーム合わせて3ゴールぐらいしか決まらない競技なのでそう毎回は決まらない。だからこそどちらが得点を奪うかで試合の流れが動いたりするし、だからこそ理詰めで試合を進めようとする考え方もある。

このセレッソのビッグチャンスが生まれる直前に、セレッソのビルドアップに対して徳島はプレッシングを仕掛けボールを奪い返しかける場面を作っている。
キム・ジンヒョンから進藤と繋いだところで進藤に対して宮代がアプローチをかけ、進藤は奥埜にパスを出すとそこには岩尾が出てくる。そして奥埜がワンタッチで西川に出したところで西川に対してジエゴが激しくアプローチをかけそこでボールを奪う。
ここから徳島が仕掛けようとしたボールを藤田直之が引っ掛けで再びセレッソがボールを奪い返したので徳島のショートカウンターにはならなかったが、実は危なかった場面でもある。

プレッシングにはいくつか種類があって、例えば横浜FMはボールにダイレクトにアタックをしてそこで1つのアプローチで直接ボールを奪いにくる。一方徳島のプレッシングは1つのアプローチで直接ボールを奪い返そうというよりも相手の選択肢を削っていこうとする形。選択肢を削っていって狙っている場所にボールを出させてそこでボールを奪いかえそうという形である。昨季までのセレッソも時々プレッシングを仕掛けていたが、ニュアンスはそれに近い。

なのでこの後も同じように2トップがCBにアプローチをかけ選択肢を削ろうとするも、ここでセレッソが例えば進藤から直接だったり松田陸を使って奥埜の向こうにいる藤田直之にボールを届けることができればスッと下がる。制限できていなかった藤田直之まで無理に捕まえに行かずに、もう1度選択肢を削るところからやり直すという形をとる。

そしてこの形で気がついた方もおられるだろうが、GKから始まった形ではなく、西川にボールが入ったのは松田からだったが、選択肢の削り方、そしてボールの奪いどころとしては15分に宮代が決めた徳島の先制点の場面と同じ形。
なので徳島としてはまさに狙い通りのボール奪取からのショートカウンターだったといえる。

奪ってからフィニッシュまでもスムーズ。ジエゴがボールを奪った瞬間に右SHの浜下は右のインサイドレーンに入ってきて、河田が中央レーン、そして宮代が左のインサイドレーンと立ち位置が整理されている。
なので河田は迷うことなく浜下へのパスを出すことができるし、それを見た宮代も河田が下がって作ったDFラインのギャップに入っていくことができる。
キム・ジンヒョンはノーチャンスのゴールだった。

■西川が困ったビルドアップのバリエーション

先制点の場面もそうだが徳島のボール保持はピッチを5つのレーンに分けていることが非常にわかりやすい。
そしてそれをベースにしたビルドアップにもバリエーションがある。

最初に見せたのは右SBの岸本は前に出て左SBのジエゴは最終ラインに残る片上げ3バック。右の大外レーンには右SBの岸本、右のインサイドレーンには右SHの浜下、中央レーンにはCFの河田、左のインサイドレーンにはトップ下の宮代、左の大外レーンには左SHの藤原が立ち3-2-5の様な形でビルドアップを行う。
これに対してセレッソは最終ラインから2トップ脇に入ってくる選手に対してSHが前に出て塞ごうとする。前からボールを取りに行きたいという意思を感じさせた。

すると今度はCHの1人が最終ラインに下がって3バックの左にいたジエゴが前に出て左の大外レーンに移動。それに伴い左の大外にいた藤原は内側のインサイドレーンにに。そして左のインサイドレーンにいた宮代がフリーマンになって下がってくる。最終ラインに落ちる選手(藤田譲瑠チマなのか岩尾なのか)、場所(中央なのか右か左か)にもバリエーションがある。
この宮代のいた場所は普段は渡井が入っていることが多く、宮代は渡井ほど下がってきてボールを受ける回数は少ないが浮いているのでビルドアップの出口になる。そして宮代もボールを受けてターンするのが非常にうまい。

そしてこれで困ったのが右SHの西川。前にアプローチをかけたいのだが人が変わる。そして松田陸のところも藤原が内側に入っていく分簡単にジエゴに出て行くことはできず、右CHの奥埜も近くで宮代が浮いている。なので西川のところで誰をどこで見るのかが曖昧になる。
その結果前半から後追いで対応せざるを得ない場面が増え、その結果ファールも増えるという結果になっていた。

またもう1つ徳島のレーンの使い方を感じさせるのがロングボール。
徳島は自陣からボールを繋ぐことを優先しているが、ロングボールも普通に使う。
その時にターゲットとなるのがCFの河田。セレッソはそれに対応するのが進藤と西尾なので空中戦には強いのだが、徳島は各選手の立ち位置と入ってくる場所がレーンで決まっているので、ロングボールを使ったとしてもセカンドボールに対する設計がきっちりできているのだ。
セカンドボールを狙う人を配置するのはもちろん、入ってくる場所も想定した上でロングボールを使うというのも昨季までのセレッソと共通している部分だろう。

■力技

こうして時間の経過とともに徳島に試合をコントロールされるようになったので15分以降はボール支配率でも下回ることに。
清武を浮かせてそこにボールを届けることができればセレッソもチャンスを作れそうなのだが、最初のビッグチャンス以降は徳島も右SHの浜下のポジションを少し絞らせて岸本が出ていかなくても良い様な状況を増やしたりすることで調整していた。
また清武の浮く形も徳島の宮代(渡井)が浮く形の様に他の選手でバランスを取っているわけではないので毎回作ることもできない。
なのでセレッソが何かチャンスを作れるとすれば力技で個人が局面を打開することができたとき。
豊川がいくつか可能性のあるプレーを見せていたが、とはいえ徳島も最後はやらせない。

しかし34分にセレッソが唐突にその力を発揮する。
藤田直之のロングスローに進藤が飛び込みゴール。まさに流れも何もない力技でのゴールだったが、セレッソが前半になんとか同点に追いつくことに成功。前半は1-1で折り返すこととなる。

■両SHを代えるしなかったセレッソ


後半開始からセレッソは2枚替え。大久保と西川に代えて、加藤陸次樹、中島元彦を投入する。
大久保は13分に下がってきたところでボールを奪われ河田にシュートを許した場面があり、西川は失点につながったボールロストなどもあったのでということなのだろう。加藤はこれまで豊川と交代することがほとんどだったのだが、今回は大久保と交代。それだけセレッソは前で仕事ができていないと感じていたのだろう。
ただ、先にも書いたが例えば西川のところは西川の問題というよりもグループとしての問題。なので選手を入れ替えたことろで試合展開は変わらない。

しかし、ハーフタイムにもっとアグレッシブに前にという指示が出たのだろう。前線にボールをつけるタイミングが早くなっていた。なので試合のテンポは少し上がった。

61分に徳島は藤原に代えて杉森考起を投入。そしてセレッソも66分に清武に代えて松本泰志を投入。松本はこれが加入後初出場となる。
清武を下げたのは西川を下げたことと同じ理由だろう。右サイドほど顕著ではなかったが左サイドでも後ろから出てくる岸本と内側に入る浜下、そして藤田譲瑠チマのところで苦労していた。
この試合ではベンチに左SH(高木俊幸や山田寛人)が入っていなかったので本来はCHとはいえ選択肢は松本となるのだろうが、岸本が出てくるのを止めたいという意図もあったのかもしれない。
両SHを疲労などではなく戦術的な理由で66分までに交代させなければならなかったというところにセレッソにとってこの試合がいかに難しかったががわかる。スコアはまだ1-1なので結果がどうなるかは別の話しだが、この試合に向けて準備していたゲームプランという部分ではこの時点で勝負ありである。
ただ、右サイド同様に人の問題ではないのでこれで試合の流れは変わらない。

■秩序と混乱

とはいえこの清武の交代前後からセレッソが徳島ゴールに迫る場面も見られていた。
65分には中島のFKから加藤がシュートするも上福元がセーブ。72分には松田陸のクロスから豊川がシュート。73分には松田陸がミドルシュート。79分にはもう一度FKから松本がシュートするもポストに跳ね返された。

これはセレッソが前に早くボールを出すようになったことで試合のテンポを上げ秩序を乱したからである。要はビリヤードの9ボールで思いっきり強く突く的なニュアンスだ。
ただしこうなれば当然徳島にもチャンスは出てくる。76分の杉森のシュートがポストを叩いた場面はその典型だろう。

しかし徳島としてはこのリズムに乗るのは得策ではない。ここまで秩序の中では完全に上回っているのである。
なのでそれほど勢いに乗って攻め込んでやろうという場面はなかった。

75分に徳島が藤田譲瑠チマと浜下に代えて鈴木徳真と渡井理己を投入し、宮代が右SHへ移動。さらに82分には河田に代えて垣田裕暉を投入。
セレッソも同じ82分に豊川に代えて松田力を投入する。

セレッソとしては混乱を作りたい、徳島としては秩序を維持する方が得策。
そんな展開の中で決勝点が生まれる。
90分、岸本のクロスを西尾がクリアミスをしてしまいオウンゴールとなった。

この場面だけ見ればシンプルに西尾のミスである。跳ね返すのが目的なのでわざわざ左足を振る必要はなかった。
しかしそういう状況に追い込まれたのはセレッソが混乱を作ろうとしていたからでもある。
後半試合のテンポを上げたことで、最終ラインは晒され後半はよりギリギリの対応を続けていた。得点を奪うためにリスクをかけていた結果とも言えるが、最終ラインにとっては前半以上に難しい対応が続いていただろう。
そんな中で得意ではない左足でクリアしなければならない状況に陥ったということである。
なので最終的には西尾のミスなのだが、いつ決壊してもおかしくない状況が続いていた。

この失点が決勝点となり試合はそのまま終了。
1-2で徳島ヴォルティスに敗戦し、これでリーグ戦は3試合勝ち星から遠ざかる結果となった。

■その他

試合としては完敗。徳島のゲームプランを崩すことができないままの90分だった。
とはいえ、ここまでの試合でも清水戦、鳥栖戦は実は同じ流れになりかねない試合だった。
ただその2つの試合では良いタイミングでパンチを当てることができていたのでなんとか回避することに成功していたのだが、やはりそうそう上手くはいかない。これまでにも見え隠れしていた問題が顕著になったという試合である。

また興味深いのが、クルピ監督が試合終了後のフラッシュインタビューで「内容からいうとどちらも物足りない、引き分けでも妥当だったゲームだと思いますが…」という部分である。
もちろん試合終了直後のインタビューなので冷静ではない部分もあるだろう。特に決勝点は90分というタイミングである。
ただ、きっとクルピ監督にすればそこまで決定機を何本も作られていたわけではないので「引き分けでも妥当」といった発言になったんじゃないかと思われる。
しかし、徳島が決定機を何本も作る形になっていなかったのは、秩序の上では優位に立っていたので秩序を保つことができればどこかでゴールを奪えるという判断があったからだろう。
要は試合をコントロールしていた。昨季までのセレッソでも実戦していた考え方である。

どちらが良いとか悪いではなく、このあたりの考え方が全く違うんだなあと感じさせるコメントだった。



7 件のコメント :

  1. 尹セレッソ後期からこのブログを見始めた私からすると、ロティーナ監督の時は勝敗に係わらず勉強になる試合がほとんどでしたが、クルピ監督になってからは流れをおさらいする程度の内容しかないので、試合もその後も物足りなさが一杯ですw

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。
      痛いところを突いてきますね(笑)
      ロティーナのときは狙いも基準もあったので書きやすかったです。

      削除
  2. おつかれさまです。
    90分の中でゲームをコントロールしていた去年と違ってオープンな展開に持っていって強引に打ち合いという印象の強い今年のサッカーは正直見てるのがしんどいです。
    おっしゃるとおり、鳥栖や清水も明確なゲームコンセプトのもと90分を戦うチームで、明らかにいい試合が出来ていない、ラッキーパンチで勝ってはいるものの…といった印象でした。
    次の浦和もざっくり言うと徳島の上位互換というか、明確なコンセプトの上に能力の高い選手がいるチームなので苦戦は必須かなと。
    90分間やろうとして出来なかったこととその理由の分析、次の試合での修正までのPDCAサイクルが今年は薄いので単純に結果が伴わなければ次に繋がらない失敗でしか無い。
    "自分たちのやりたいことができなかった""切り替えて次"って言うJ2で苦戦していたときによく出てきていた刹那的で生産性の無いワードが思い浮かぶので、監督変えて明らかに退歩した印象があります。
    まあでも付き合うしか無いのでそこは仕方ないですし、個の力とゲームメイカーがいるので大きくは崩れずおそらく残留はできるでしょうし。フロントがどう考えるかはわかりませんが、攻撃的で点が入るから面白い、ではなく支配率30%以下に抑えられるような相性の悪い相手でもコンセプトの下で工夫して勝つから面白いということを再確認させていただいてフロントに去っていただく一年になりそうな予感です。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。
      正確にいえば、ロティーナのときだけ基準が違っていただけなので、元々はこういうコンセプトのチームなんですよね。
      以前ツイッターでも書きましたが、ロティーナの時の様に不確定要素を排除するということは、不確定要素で勝つということも排除してしまうので、チャレンジしていない様に見える。それが守備的に感じていたのでしょう。

      削除
  3. 未だに納得行きませんが今年はとりあえずこの個人頼みのサッカーで行くんでしょうから、チームにやっと合流したタガートや怪我などで離脱している選手が戻ってくるまではサポも我慢ですかね。それ以降も勝てないと色々危なくなってきますが・・・

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。
      現在のある種ギャンブル要素の高いサッカーは刺激的でもあるので、シーズン序盤にあまり不満の声を聞かれなかったように、結果が出ればそれなりに楽しむことはできますからね。

      削除
  4. クルピというとアバウトなイメージがあって、ロティーナを経験して目が肥えた身としては辛いのですが、
    一方で実はガンバもセレッソと同じ作り方のチームなのかな、って気づく部分があります。

    というのは、元ガンバ&日本代表の西野監督のチームの作り方って、クルピと似て選手の組み合わせから組み立てて、
    ガンバ時代も監督から戦術に選手をはめることは少なかったらしいのです。創造性に任せて強豪にした。
    だから、ガンバも数年前に相性が良いと考えてクルピを招聘したのかもしれません。

    ちなみに、遠藤はクルピを評価してて、あと2,3年は一緒にやりたかったとインタビューで言っていました。
    クルピにも良い面があるのかな?なんて思ったりもしてますが、不安も強いです。クルピが失敗すると、梶野&モリシも飛ばされて迷走は必死ですから。

    返信削除

新着記事

人気の投稿

セレッソ大阪公式Twitter

楽天

楽天トラベル