スタジアム | 日産スタジアム | 主審 | 中村 太 |
入場者数 | 7,980人 | 副審 | 西橋 勲、堀越 雅弘 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 11.7℃ / 48% | 第4の審判員 | 田中 玲匡 |
VAR | 木村 博之 | ||
AVAR | 清水 勇人 |
メンバー
横浜FM
C大阪
- 監督
- アンジェ ポステコグルー
- コーチ
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
ミッドウィークの火曜日開催となった明治安田生命J1リーグ第8節。直前に新型コロナウイルスの陽性者が判明したことでキックオフ2時間半前に最終的な試合開催が決定するという中でセレッソ大阪が敵地日産スタジアムに乗り込んだ横浜F・マリノスとの一戦は1-0で敗戦。
横浜FMに2011年8月24日以来3513日ぶりの敗戦となった。
■メンバー
横浜F・マリノスのスターティングメンバーは前節から4人入れ替え。外れたのは右SB岩田智輝、左SB小池龍太、CH渡辺皓太、トップ下オナイウ阿道で、松原健、高野遼、喜田拓也、天野純がそれぞれ起用された。
このあたりは中2日での試合ということもあり予想通り。外れた4人のうち岩田、渡辺、オナイウ阿道の3人はベンチスタートとなる。
一方のセレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から3人入れ替え。
こちらは前日に新型コロナウイルスの陽性判定を受けた選手が出たということでその影響を受けた形。外れたのは丸橋祐介、瀬古歩夢、大久保嘉人の3人で、この3人に加え控えGKの松井謙也がベンチ外。先発に加わったのが進藤亮佑、新井直人、松田力。新たにベンチに入ったのが、鳥海晃司、小池裕太、中島元彦と控えGKとしてU-18所属の16歳春名竜聖選手となった。
4人が外れる格好となったのは試合前日の報道にあった通り、遠征に出発する前日の段階では保健所による濃厚接触者の判定ができておらず、Jリーグ独自の基準による濃厚接触疑い者となった3人が遠征メンバーから外れたためだと考えられる。(試合当日に陽性判定を受けた選手の濃厚接触者は0と発表された。)
またさらに試合当日の検査で、遠征に参加した選手は全員陰性との結果が出たが、チームスタッフ1名がさらに陽性判定を受けたため、その濃厚接触疑い者となるチームスタッフ2名がベンチから外れることに。そしてこの濃厚接触疑い者2名のうちの1名がクルピ監督ということで、クルピ監督はベンチ入りせず、小菊昭雄コーチがこの試合では代行で指揮をとることととなった。(試合終了後にクルピ監督は保健所の判定による濃厚接触者には該当しないと発表された。)
ということで直前まで誰が出場できて誰がベンチに入れるのかが流動的で、実際に試合ができるのかどうかもなかなか決まらないという難しい状態だったが、スタッフ・チーム関係者・Jリーグ関係者、医療関係者、保健所関係者の皆様のご尽力によりなんとか無事キックオフを迎えることができた。
■布陣を確認
今回の対戦はこれまで全試合で先発を続けてきた3人がメンバー外となったので、改めてセレッソの布陣を確認しておこう。
クルピ監督は当日になってのベンチ外だったので、メンバーとしては前日の段階でクルピ監督の下で決まっていたと思われる。
進藤は前回出場した東京戦では瀬古に代わって左CBでの出場となり、またトレーニングマッチでもダンクレーが右CB、進藤が左CBという立ち位置でプレーしているようだったが、今回は進藤が右CB、西尾が左CBとなった。
今のチーム編成では左CBができる選手は瀬古しかおらず、もし瀬古に何かあった場合はどうするのか?ということは開幕前から言われていたことで、おそらくそれを踏まえて進藤はこれまで左CBで起用されてきたのだろう。
しかしそもそも進藤は札幌では3バックの右をやってきた選手。なので東京戦では短い時間ながらかなり戸惑っている様子が伺えていた。
ということで今回は西尾が左に回り、進藤は右。このあたりは急遽指揮を取ることになった小菊コーチは選手の兄貴分的な存在でもあるので、もしかすると直前に入れ替えたのかもしれない。もちろん西尾も右CBの選手なので不安はあるが、開幕からフルタイム出場を続けているのでこのチームのやり方には慣れている。
左SBに入った新井直人。右利きの選手なので本職は右サイドなのだが器用なので左SBもできる。身体が強いので対人も強く、またスピードもある。そしてパスも出せるということで、この試合に向けては適任ということだったのだろう。
最後に松田力。プレシーズンでは右SHで起用されてきたが、開幕後は全てFWでの出場、そしてここまで途中出場した4試合中3試合が大久保嘉人との交代だったことを考えると大久保のバックアッパー的な立ち位置なのだろう。大久保が交代するときは布陣を4-2-3-1に代えて清武をトップ下に移動させるというパターンもあるのでプレータイムは長くないが、ここまで4試合に途中出場しているようにチーム内ではある程度のポジションにはいる。
■敵陣で試合をしたい横浜FM
前半のボール保持率は横浜FM64%、セレッソ36%。パス数は横浜FMが349本、セレッソが137本。
圧倒的に横浜FMがボールを持つ展開となったが、これはセレッソが主力を3人欠いていたからというよりも両チームのスタイルを考えると予想できた展開だろう。
そして立ち上がりは両チームが相手ゴール前に迫る展開となったが、ここにも両チームのスタイルの違いが顕著に表れていた。
横浜FMは出来るだけ敵陣でプレーする時間を増やそうとするチーム。
なので、ボールを奪えば敵陣に素早く運び、そこで相手を押し込もうとする。
敵陣に入れば狙うのは左右のハーフスペース。両WGが大外のレーンで幅をとれば、その内側にトップ下の天野やCHの喜田や扇原が入ってくる。
SBが前に出て大外レーンに来れば両WGは内側に入りハーフスペースを狙う。
このあたりのレーンの感覚は徹底され、動き・人のバリエーションはかなり豊富で、とにかくここを陥れようというのがチームのコンセプト。
ここからの折り返しにCF、逆サイドのWG、トップ下の選手などが飛び込むというのが攻撃の形。
両チーム合わせて最初のチャンスとなった5分の横浜FMの前田のシュートは、内側にまでは入ってこなかったが左サイドでエウベルが仕掛けた折り返しという形だった。
■カウンター型のセレッソ
しかしその5分の横浜FMのチャンスの後は、8分、10分と立て続けにセレッソがチャンスを迎える。
8分のチャンスは長いボールを蹴った後、清武が切り替えでボールを奪い返したところから。そして10分のチャンスは西尾から松田陸への長いボールから。8分のチャンスは松田力のクロスに豊川が頭で合わせるもシュートはクロスバーの上、そして10分のチャンスは松田陸からのクロスを松田力がニアで合わせたこぼれ球を豊川が詰めてゴールネットを揺らしたが、松田力がオフサイドとなりノーゴール。しかしどちらも長いボールを使ってのビッグチャンスを作っている。
そして直後の11分には横浜FMのビルドアップに対して高い位置からプレッシングを仕掛け、奪ったボールを豊川に。そして豊川がスルーパスで最終ラインの背後に飛び出す松田力に出すという形でチャンスを作る。
この後もこの試合では横浜FMのビルドアップに対して高い位置から守備に行く場面が何度か見られた。
これらの形からもわかるようにセレッソの戦い方はカウンター型。
ここまで9試合を戦ってきた中で、選手が持つ去年までの遺産を残しながら縦に速く攻撃したいという新たなエッセンスを加えていった結果、徐々にチームはカウンター型のスタイルになってきていたが、この試合では横浜FMの戦い方と相まみえることでよりその傾向がはっきりと見られた。
■カウンター型を機能させるためには
ここから外循環でボールを保持されるのはある程度許容。サイドでボールを運ばれたとしても、クロスに対しては「CBの前をCHが必ず消す、CHの1人がボールサイドに引っ張られた時は逆サイドのSHがそこに戻る」という昨季までの守備の形で対応できるという計算がある。
ただし、この試合に限って言えば最終ラインのうち松田陸以外の3人は昨季プレーしていなかった選手なので、特に横浜FMのハーフスペースを狙ってくる攻撃には少し手を焼く場面もあったが、CH2枚を中心になんとか守り切ることができていた。この2人の存在は非常に大きかったと思う。
ただ、昨季と異なるのは、出来ればブロックは下げたくないという考えを持っているということ。
速く攻撃するためにはより前でボールを奪った方が有利だし、自陣の低い位置からボールを運ぶ手段も整備されていないので、そうなるのも必然だと言える。
なので相手のボールホルダーがフリーで前向きの状態でなければ、前線からボールを奪いに行くこともある。それが11分の場面のような前線からのプレッシング。そして4-4-2でセットしてもSHのアプローチをきっかけに迎撃型でボールを奪いにいきたい。それが21分に清武が超ロングシュートを狙った時のようなボール奪取である。
しかし、ブロックの位置が高いのであれば横浜FMは背後を狙うこともできる。
横浜FMは、押し込めばWGが幅をとるが、中盤でSBが幅を取りビルドアップの出口となって背後を狙う時はWGは内側に入ってゴールに向かって直線的に入ってくる。
そこをカバーしていたのが進藤と西尾のCBコンビ。進藤は対人の強さもスピードもあるので慣れている右サイドに入ったこの試合では札幌時代のようなプレーを見せることができていた。また西尾に関しても試合の序盤は右足でタックルにいきたい分、身体の向きが後ろ向きになってしまい危なっかしい場面もあったが、徐々に慣れてきたのか時間の経過とともに問題なく対応できるようになっていた。
しかし、セレッソが前で取ろう、そして速く攻めようとすれば必然的に試合のテンポは上がる。そして早いテンポは横浜FMのリズム。
その結果少しずつ押し込まれる時間が長くなっていった。
ボールの逃がしどころになっていたのが奪った瞬間に前に出ていく松田陸と新井の両SB。横浜FMは3トップ+トップ下の4人で前からプレッシングをかけ、SBは相手のカウンターケアのために中央よりもポジションを取るのでミドルゾーンの大外はフリーになれることが多い。ここにボールを届けることが出来れば、松田陸も新井もしっかりボールをキープできるし、さらにそこからパスも繋ぐことができるので、特に前半の途中までは上手くボールの逃がしどころとして機能していた。
とはいえ、これを長い時間続けるにはSBに負担がかかりすぎる。押し込まれる時間が続けば続くほど厳しくなる。
前半の終盤ぐらいから奪ったボールを再び奪い返されてSBの背後を狙われる場面が増え、さらにボール保持でもWGでSBを引きつけ、SBの背後にCHやトップ下の選手を走らせることで押し込まれる時間が増え始めると、ボールを運ぶことができなくなっていく。
ハーフタイムを挟んで後半の頭からは再びセレッソは前から守備をしようという意思を見せるが、やはり横浜FMにSBの背後を使われ押し込まれることに。
その結果、ボールを運ぶには2トップがボールを収めるか、清武や奥埜が個人技でボールを運ぶかのどちらかのみ。しかしセレッソの2トップと対峙する横浜FMの2CBチアゴ・マルチンスと畠中はこういった対応には抜群の強さを発揮し、清武や奥埜もSHやCHなのでそうそうリスクは犯せない。
■カウンター型で戦うことに対しての課題
55分にセレッソは松田力に代えて中島元彦を投入するも状況は変わらず。60分に思い切って前線からプレスをかけ、長いボールを蹴らせて回収したところからFKを獲得するまではセレッソがほぼボールを運べないままだった。そしてその捨て身のプレッシングも毎回はできない。となるとやはり、それ以降もしばらくはボールを運べないという展開が続いた。
直後の67分には横浜FMが天野に代えてオナイウ阿道を投入。そして後半の飲水タイムを挟んで71分にセレッソが西川と豊川に代えて山田寛人と加藤陸次樹を投入。
するとその直後の73分に中島のクロスに新井がボレーで狙おうかという形を作り、76分には清武から前線に走る加藤への一気のパス。金沢時代の加藤のゴール集を見れば、このような形で裏に抜け出してというパターンがめちゃくちゃ多いのだが、そこはチアゴ・マルチンス。抜け出させてはもらえず、持ち直してのシュートは枠を外れた。
ただ、清武が1人でためを作りさらに正確なパスを出してくれるので、ようやくセレッソが敵陣にまでボールを運ぶ時間が出てくるようになった。
横浜FMとしてはセレッソに運ばれる形は作られるようにはなったが、その分試合はオープンになっている。なので前で仕事ができる選手をということなのだろう。
すると87分、エウベルがドリブルで運び前田の折り返しに水沼が飛び込む形で得たCKから。水沼のCKをチアゴ・マルチンスがとんでもない高さのヘディングシュートを放つも加藤がブロック。こぼれ球を再びチアゴ・マルチンスが狙うも松田陸がブロック。しかしそのこぼれ球をオナイウ阿道が押し込んでゴール。ついに横浜FMに先制を許した。
この試合を通じて40本ものクロスを入れられたように何度もアタッキングサードに侵入され、ペナルティエリアの中にも何本もボールを入れられながらも跳ね返し続けてきたが、ここでついにゴールを破られてしまった。
しかし得点は奪えずそのまま試合終了。
セレッソ大阪は横浜F・マリノスに2011年8月24日以来3513日ぶりの敗戦となった。
■その他
怪我人に加え、新型コロナウィルス感染症の影響で多くのメンバーが入れ替わる中での難しい試合だったが、代わって入った進藤、新井、松田力をはじめ多くの選手が粘り強く戦うことでプラン通りに試合を進めることができた。
進藤は右CBでは十分できることを証明した。
新井はどうしても右利きのボールの持ち方をしてしまうので、左SBとしてはボールを持てたときにどうなるかという部分はまだあるが、守備面や、自陣近くでのプレーではボールを持てるし、パスも出せる。全く問題なくプレーしていたといえるだろう。
松田力も前線からの守備と身体能力の高さ、そして空中のボールに対する強さを見せた。
また、途中交代で入った中島、加藤、山田の3人も良かった。
これだけ難しい状況での試合だったにもかかわらず、最初のチャンスを決めていればという「if」の話しにはなるが、勝ち点3を取れる可能性もある試合だった。
3513日ぶりの敗戦というのは残念ではあるが、収穫も多い試合だった。
ただ、チーム全体の設計、そしてゲームプランとしてはどうなのか?という部分は感じられた。
87分まで横浜FMの強烈な攻撃を0で抑えることができていたので、勝ち点1は持って帰ることができそうだったようにも見えるが、一方であれだけ押し込まれ続けると失点してしまうのは時間の問題だった。
試合を通じて特に厳しさを感じたのは、「チャンスを作ることができる状況」と「チャンスを作られやすい状況」が同じライン上にある設計になっているが、それをカバーする手段がよくわからない。
敵陣にボールを運ぶには試合をオープンにする必要があって、オープンにしてしまうと相手にもチャンスを与えてしまう。
4-4-2でブロックを作って守ることは昨季までの蓄積が選手に残っており、またそれは新しい選手が入ったこの試合でも見せることができた。
しかし、昨季のまとめでも書いたが、4-4-2でブロックを作って守るという選択ができたのはそこからボールを運ぶ形があったから。この4-4-2のブロックとボールを運ぶ形はセットでないといけない。セットだからこそ成立していたのだ。
しかし今のチームはボールを運ぶ形がかなり限定的。となるとこのセットは成立せず、ボールを前で取る方法というのも考えなければならなくなる。しかしそれをやれば相手にチャンスも与えてしまう。そしてそれをチームとしてカバーする手段は見えない。現在のチームはそんな設計になっている。
選手に対する手応えは感じた反面、今季の大きなテーマとなるだろう課題もハッキリした試合だった。
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