スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 西村 雄一 |
入場者数 | 4,672人 | 副審 | 越智 新次、塚越 由貴 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇一時雨時々晴 / 12.1℃ / 64% | 第4の審判員 | 渡辺 康太 |
VAR | 福島 孝一郎 | ||
AVAR | 岡野 宇広 |
メンバー
C大阪
浦和
- 監督
- レヴィー クルピ
- 監督
- リカルド ロドリゲス
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
4月最後の試合となる明治安田生命J1リーグ第10節、セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居に浦和レッズを迎えての一戦は、浦和に終始ペースを握られるも丸橋の値千金のゴールで1-0で勝利。4試合ぶりの勝利をあげた。
■メンバー
セレッソ大阪のスターティングメンバーは、今節もやはり前節と全く同じ11人。前節は厳しいゲームだったので選手を入れ替えるか?という声もあったが、前日会見でクルピ監督自身がメンバーを固定する旨の発言をしており中3日での試合となるがその通りの形となった。
ただしベンチメンバーは1人のみ入れ替え。松田力に代わって山田寛人がベンチ入り。これは前節ベンチにSHがおらずCHの松本泰志をSHで起用することになったからだろう。
一方の浦和レッズのスターティングメンバーは前節から1人入れ替え。浦和はミッドウィークに試合がなくこの試合は中6日。ただし前節開始早々に武田英寿が怪我で交代となったため、前節休ませた柴戸海と、前節アンカーでプレーした伊藤敦樹がともにスタメンで起用された。
それに伴いベンチメンバーも1人が新しく入ることに。第6節までは毎試合プレーしていた田中達也が4試合ぶりのベンチ入りとなった。
■浦和のビルドアップ
26分に迎えた最初の飲水タイムまでのボール支配率はセレッソ38%、浦和62%。立ち上がりから浦和が圧倒的にボールを保持するという展開になった。
また前半終了時点でのボール支配率もセレッソ37%、浦和63%、試合終了時点でのボール支配率もセレッソ37%、浦和63%だったので基本的にはこの流れはずっと変わらない。
浦和がボールを保持する時間が長かったのは必然で、浦和にはボールを保持する形があったからである。
そして何よりビルドアップが安定していた。第6節までが1勝2分3敗。第7節から前節までが3連勝。大きな違いとなっているのはここだろう。
ここからセレッソの2トップに対して最終ラインを3人にして数的有利を作ってくるのだが、3人目にはいくつかバリエーションがあって、1つは右SBの西が最終ラインに残る形。もう1つは左IHの伊藤が降りてくる形。伊藤は低い位置にいることが多かったので柴戸との2CHに見えないこともなかったが、基本としては柴戸が1アンカーという考え方だったのではないかと思う。
というのも特に最初の飲水タイムまでは柴戸が最終ライン落ちることがほとんどなかったから。これはセレッソの2トップに対して最終ラインに落ちずに2トップの間に立つ事で2トップを中央に絞らせることができる。となると2トップの脇が広くなりそこからボールを運びやすくなる。なのであえてそういう形をとっていたのだと思う。
ここに対してセレッソはほとんど制限をかけることができなかった。
例えば右サイドでは右の大外と内側で関根と小泉が頻繁にポジションを入れ替え、さらにそこに西も絡んでくると、小泉はCHに下がってくる。一方左サイドでは山中と明本が大外と内側でポジションを入れ替えることもあれば、明本と武藤でもポジションを入れ替えていた。
浦和がここにきて機能しはじめたなと感じるのは、形を変えたりポジションを入れ替えたりするにもかかわらず、常に5レーンに人を置くことができていることである。シーズン序盤はビルドアップを助けるために選手は下がっていくが、その分前線が孤立してしまって結局ボールを運べないといった状態に陥ることが多かったが、常に各レーンにきちんと選手を配置できている状態をキープできているので、ボールを運んだ選手の選択肢も増えるし、何より守備側が安易にボールを奪いに行けないという状態を作ることができる。
アタッキングサードまではかなりスムーズにボールを運べるようになっていた。
アタッキングサードで浦和が狙っていたのはサイドからのマイナスの折り返し。
これは、浦和が武藤を1トップで起用しているので、普通のクロスでは西尾、進藤のCBと勝負するのは難しいという判断があったのではないかと思う。ただ、セレッソは節が進むごとにかなり薄まってきたとはいえクロス対応でマイナスのスペースをCHが埋めるというロティーナ時代の鉄則はまだ残っている。
浦和としてはCBをサイドに引き出すことで、CHが最終ラインのカバーに下がらざるを得ない状態にすれば最終的にマイナスのスペースは空くという計算があったのだろうし、実際に危ない場面もあったがセレッソはなんとか失点せずにカバーできていた。
■セレッソが押し込まれたのは
ここまでは「浦和が何をやってきたか」をメインに書いてきたが、ここでは「その結果セレッソがどうなったか」について触れていく。
まずはボール非保持先ついて。先に書いた通り浦和のビルドアップ時にベースとなっているのが2-3-5。そしてビルドアップの出口になっているのがセレッソの2トップ脇。
セレッソとしては、ここに制限をかけるのは左右のSHということになる。
しかし、浦和の右サイド/セレッソの左サイドではビルドアップの出口になるのが西と小泉。浦和の左サイドでは槙野と伊藤。ここの選手が入れ替わってくる。そしてさらに自分の斜め後ろの大外レーンには常に人がいる。さらに内側レーンと大外レーンでも、関根や小泉、山中や明本と人が入れ替わる。
その結果SHは前に出られなくなり、ボールサイドのCHが出ざるを得ない状況も散見された。水曜日にも見た光景である。
そしてボール保持について。基本的に後ろで守るしかない状態なので、ボールを奪う位置は低い。
となるとそこからビルドアップでボールを運んでいくという形になるのだが、試合序盤は左サイドから内側に入る清武や、前に出ていく奥埜が出口になって浦和のプレスをかいくぐりボールを運ぶ場面はあった。
しかし19分に奥埜が出口になったビルドアップでボールを運んだところでボールを奪い返されそこからカウンターを浴びたことで、以降は奥埜で逃すという形を使いにくくなった。
そしてもう1つの清武が出口になる形については、これは以前からの問題点で清武を下げてビルドアップの出口にするとどうしても前線の人数が少なくなり2トップが孤立してしまうのだ。
浦和のビルドアップのところでも触れたが、浦和もシーズン序盤はビルドアップで中盤から下がってくる選手が多く前線が孤立傾向にあった。最近の試合ではボールを運ぶことができる様になったのは、下がってくる動きに周りの選手が5レーンのポジションに入ることが連動するようになったからである。
セレッソも相手がリトリートしてくれれば清武が下がってきても丸橋が上がり、松田陸も出ていくことができるのでポジションを取れるのだが、プレッシングに来られると丸橋も松田陸も間に合わない。となると清武と孤立している大久保や豊川という個人のラインで突破するしかなくなり、そう簡単にはうまくいかない。
相手のビルドアップに制限をかけられず、こちらのビルドアップではボールを運べず。
押し込まれるのは必然である。
とはいえ前半は0-0で折り返し。
終了間際には小泉が元祖必殺技からの左足でミドルは少しヒヤッとする場面だったが、キム・ジンヒョンがセーブした。
■オープンになって得をするのは
実に対照的な交代である。
クルピ監督は「前への勢いをつけたかった」「守備の強度が足りなかった」ことを交代の理由にあげている。
4日前と同じ理由で同じポジションの選手を交代させた。
リカルド・ロドリゲス監督は「中盤の選手を外して、前線の選手を入れてゴール前での違いを作れる状況を狙って」と語っている。
興梠のコンディションはまだまだだが、アタッキングサードまでは問題なくボールを運べているのでフィニッシャーとしての興梠に期待したのだろう。前半はマイナスのボールが多かったクロスだが、後半は興梠が入ったことでDFラインとGKの間や最終ラインに向かってのクロスも増えていた。
ただ、そうなれば2トップ脇を対応するのは右CHの奥埜になる。
なので後半の立ち上がりに槙野から右サイドの大外にいる関根にサイドチェンジという形は増えた。
これはペトロヴィッチ監督の時にも散々やった形。槙野がサイドチェンジを蹴るタイミングで右のインサイドレーンにいる武藤が中に斜めに走って大外の関根に時間と空間を与えるという動きは実にスムーズだった。
しかし試合はそれ以上に大きな変化があった。試合がオープンになっていったのである。
もちろんそうなった要因はセレッソが後半の立ち上がりに前への勢いを持って試合に入ったからでもある。
ただ、これは前半の立ち上がりも同じことをやっていた。しかし前半は試合に秩序を持ち込もうとする浦和に狙い通りに秩序を作られコントロールされてしまっていた。
しかし後半はオープンに。浦和がある意味オープンに乗ってくれたのだ。
オープンになったところで当然ながら優位に立つのは仕組みがしっかりとできている浦和であることは変わりない。
49分に小泉のスルーパスから明本が抜け出し、サイドチェンジから関根が仕掛けるなど次々と浦和はチャンスを作っている。
むしろ短時間でゴールに迫る回数が増えているので、前半以上にチャンスは増えたと言ってもいい。
しかし、オープンになったことでセレッソもボールを運ぶ場面が生まれ始めた。
前半は押し込まれるのでボールを奪い返す位置が低くなり、ボールを奪い返してもビルドアップに対して浦和のプレッシングを受けるという流れだったのだが、後半は浦和が速く攻めてくるのでボールを奪い返した時にプレッシングを受けない場面が増える。その結果セレッソがボールを運ぶ場面が生まれ始めたのである。
2年間ロティーナのサッカーを見てきた経験から、浦和がこうなってしまう気持ちはよくわかる。
前半は完全に試合をコントロールしながらもゴールだけを決められなかった。あとはゴールだけ。となるとどうしてもチャレンジしてしまうのだろう。
ロティーナの特に1年目はセレッソもオープンに乗ってしまう試合を何度もしている。
浦和戦ということであれば、2019年のアウェイ埼玉スタジアムでの試合もそうだろう。阿部の退場もあり最終的には田中亜土夢のゴールでセレッソが勝利したが、前半は試合をコントロールしながらも0-0。後半立ち上がりに松田陸のゴールでセレッソが先制するも、そこから試合をオープンにしようとする浦和の誘いに乗ってしまい興梠のゴールで同点に追いつかれてしまったという展開である。
■VAR介入
オープンになっていく展開の中で2度のVAR介入、オンフィールドレビューが行われた。
1つ目は52分の武藤がペナルティエリア内に侵入した際に丸橋の手にボールが当たったのだが、これがPKかどうか。
ボールは間違いなく丸橋の手に当たっているのだが、西村主審は問題なしと判断した。
これは丸橋が武藤に対してスライディングでボールに触り、そのボールが手に当たったという判断なのだろう。
競技規則にもハンドの反則とならないものとして「競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる。」と明記している。
ただし、今回のケースには直接関係ないが、もしこれが武藤の手に当たってゴールが決まっていればハンド。
「偶発的であっても、ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に ・ 相手競技者のゴールに得点する。・ 得点の機会を作り出す。」場合はハンドとなるとの記載もある。
今のルールとしては通常ではハンドの反則に該当しないものでも、手に当たってゴールが決まることは認めないという方向性になっている。
次が59分の松田陸のシュートブロックに入った小泉の手にボールが当たったものがハンドでFKかどうか。
最初は西村主審はハンドの判断を下しペナルティエリアすぐ外でのセレッソのFKとジャッジしたが、結果的にはボールが手に当たったのがペナルティエリア内だがハンドではなく西村主審による浦和ボールのドロップボールで再開された。
これはいくつもの事象が絡んでいるので非常に複雑なケースである。
まず、このシーンにVARが介入したのは小泉の手にボールが当たったのはペナルティエリア内だったのでPKの可能性があったからである。
もしこれがペナルティエリアの外での事象であればVARは介入しないのでそのままセレッソのFKで再開されていただろう。
だが、手に当たったのはペナルティエリア内だったのでPKの可能性があるということでVARが介入する。しかしオンフィールドレビューの結果、小泉の手は不自然に広げているわけでもなかったことが確認された。なのでハンド自体がなかったことになった。
そして松田のシュートは小泉に当たって外に出ていたのでCKかと思われた、セレッソの選手もCKを主張したが、再開は浦和ボールでのドロップボールになった。
これはボールが外に出る前のプレーで西村主審がハンドとのジャッジを下しプレーを止めたから。外にボールが出てない状態でプレーを再開させる手段は主審によるドロップボール。そして最後に触ったのは浦和の小泉。なので浦和ボールのドロップボールとなった。現在のルールではこれ以外の再開方法はない。
しかしこれに対しては浦和の選手も流石にということで、西川や槙野の声で「(ボールを)返そう」という言葉がすぐにかけられていた。
■値千金のゴール
この2度目のVAR直後に豊川が強烈なロングシュートを放つも西川周作がセーブ。セレッソがCKを獲得する。
このCKを中島が蹴り、山田が中央でヘディングするも西尾の背中にあたり外に流れる。
このこぼれ球を丸橋が右足で蹴り込むと浦和DFにも当たりそのままゴール右隅に。流石の西川周作もタイミングも外されノーチャンス。
ここまでセレッソはチャンスらしいチャンスをほとんど作ることができていなかったが、丸橋の値千金のゴールで先制に成功した。
こうなれば浦和はオープン上等でもう殴りにいくしかない。
実際にセレッソも守備をきちんと修正できたわけではないので、68分に関根が武藤とのワンツーで抜け出したり、69分には武藤のクロスに興梠がヘディングで合わせ、75分には山中のクロス、79分には西のクロスに関根がヘディングで合わせる場面を作る。
これらのチャンスはことごとくハーフスペースを攻略したもので、正直なところどれもが決まってもおかしくないものだったが、浦和はどれも決められず。
そもそもこのチャンスの中で枠内シュートは一番最初の関根がワンツーで抜け出したものだけだった。
そしてオープンになればセレッソにもカウンターのチャンスが生まれる。
77分には大久保のクロスに中島がボレーで合わせ、82分には奥埜がミドルを放つ場面を作る。
と両チームが交代枠を使うも浦和は展開を変えられず。
84分にCKから岩波がシュートを狙うも藤田がブロック。
85分に奥埜のクロスを中島がヘディングで合わせるも枠を外し、90+6分には加藤が抜け出すも西川周作にセーブされ、1-0で試合終了。
最終盤には浦和は槙野を前線にあげるも、セレッソが丸橋の値千金のゴールを守り切り1-0で勝利。
4試合ぶりの勝利は、進藤にとっても嬉しい出場試合での移籍後初勝利となった。
■その他
前節に引き続き内容的には完敗。しかし結果は勝利。
以前今季のセレッソのサッカーは「毎回抽選サッカー」と表現したが、内容はともかく結果は「毎回抽選サッカー」だからこそ掴んだものだと言える。
とはいえ、こういう結果になることはそうそうない。
2試合続けて同じミスを繰り返すのは流石に勘弁してほしい。
そして浦和だが、前半は完全に試合をコントロールしていただけに、個人的には敗因はオープンな展開に乗ってしまったことだと思っている。もちろん色んな見方があるだろうが、個人的にはあのサッカーをするには、試合をオープンにする必要はなく、前半にあれだけ試合をコントロールしながらも得点を決められなかったとしても、それを90分間続けるべきだったと思う。
しかし、本文中にも書いた通りオープンに乗っかってしまうのはセレッソもかつて経験したことなのでよくわかる。
また試合後のリカルド・ロドリゲスの会見でエルゴラ浦和担当の沖永さんが、
「最後のところでつなぎすぎという見方もあると思うが」(Jリーグ公式では「ファイナルサードまでの作りは・・・」)との趣旨の質問をされているが、これも気持ちはよくわかる。
浦和が今やろうとしているサッカーはピッチに秩序を持ち込もうというもの。秩序を作ることで試合をコントロールしようとする。
しかしこれを言い換えれば混沌は避けようということ。そしてサッカーでは混沌こそがゴールが生まれやすい。
なので得点を奪えなかった試合、負けた試合ではどうしてもチャレンジしていないように見えてしまうのだ。
例えば、ゴールの可能性の低いシュートを「ボールを失うプレー」と捉えるか「シュートを打てば何かが起こるかも知れない」と捉えるか。
このあたりの捉え方や、境界線の話しなのだが、今の戦い方を続ければ自ずと一致するし見えてくるのではないかと思う。
今回も大変勉強になりました。
返信削除浦和の2-3-5のビルドアップに対して前半は対応に苦労していましたがセレッソは守備をどう修正すべきでしたか?
西川潤選手と清武選手がCBにプレスに行くと簡単にSBにパスを通されるのでかなりしんどそうでした。