スタジアム | エディオンスタジアム広島 | 主審 | 山本 雄大 |
入場者数 | 3,084人 | 副審 | 三原 純、田中 利幸 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 26.8℃ / 80% | 第4の審判員 | 池内 明彦 |
メンバー
- 監督
- 城福 浩
- 監督
- ロティーナ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
サンフレッチェ広島:城福浩監督セレッソ大阪:ロティーナ監督
<選手コメント>
サンフレッチェ広島:ドウグラス・ヴィエイラ、青山敏弘セレッソ大阪:坂元達裕、藤田直之
前節に今季初黒星を喫したセレッソ大阪が中5日で迎える明治安田生命J1リーグ第5節、敵地エディオンスタジアム広島でのサンフレッチェ広島戦は1-2でセレッソ大阪の勝利。今季初めて大阪府以外で行った公式戦で見事な勝利を挙げた。
■メンバー
先ずはホーム、サンフレッチェ広島の先発メンバーだが、前節から中5日のリーグ戦ということで定番のメンバーで来るかと思われたが、元セレッソの永井龍が広島加入後初先発。メンバー表上ではMF登録になっているが、実際の試合が始まると前線でレアンドロペレイラと並ぶ2トップ。それに伴い中盤は、右IHに川辺、左IHに森島、アンカーには青山を起用。ということで布陣は3-1-4-2となっていた。※最初の方の図で森島の背番号を間違えてしまっていますが、森島は10番です。
一方のセレッソ大阪の先発メンバー。中5日ということでローテーションは木本→瀬古だけ。左SHは清武が2試合連続となり柿谷はベンチスタート。そしてFWには都倉が起用された。
また前節は先発だったブルーノ・メンデスがベンチ外となり、鈴木孝司が今季初めてのベンチ入りとなっている。
■布陣を変えた広島
この試合で布陣をこれまでの3-4-2-1から3-1-4-2に変えてきた広島。城福監督は「ボール保持を高めたい」という考えがあるそうだ。この3-1-4-2は前節の終盤にレアンドロ・ペレイラと東に代えて永井と野津田を投入した後にも使っていた布陣。最終的に結果は0-0のまま試合終了となるのだが、この終盤の時間帯は広島がボールを持って鳥栖を押し込む形を作っていた為、それがこの布陣変更のキッカケという可能性もありそうだ。
そしてもう1つ考えられるのが守備面。プレビューでも書いたが、広島は基本的に高い位置からのプレッシングで素早くボールを奪い返すことを目指している。ボール保持を高めるにはボールを早く奪い返さなければいけないのでよく理解できるやり方だ。
ただし、こちらもプレビューで書いたが、2月1日にキャンプ地宮崎で練習試合をやった時に、広島が前線3人とボールサイドのWBでプレスをかけCHがCHを捕まえにきたところをセレッソがうまく裏返し一気に中盤で浮いている清武にボールをつけるという形を何度も見せていた。(そのたびに城福監督は「何でそうなるんだよ!」と怒っていた)
この経験から中盤の枚数を増やしたい(3-4-2-1のCH2人から3-1-4-2のアンカー+IH2人の3人になる)という狙いもあったか。
■奪いたい場所でボールを奪えない広島
案の定広島は立ち上がりから2トップを2CBにぶつけて、ボールサイドのWBが出てきてSBにアプローチをかけてくる形を取るが、結論からいうとおそらく10分、15分ぐらいの時点で広島の選手は「これ取れないな」と思っていたのではないだろうか。プレッシングをロングボールでかわす |
しかしこのボールを結果的に奥埜が納めたので広島は回収できなかったのだが、それ以上に重要なのが坂元のポジショニング。もしここで奥埜が納められずボールがこぼれたとしてもセカンドボール争い最も優位な位置にいたのは坂元だった。
サイドの奥をつく都倉 |
となるとセレッソは2トップの1人を野上がいたサイドに流れさせる。ここについてくるのはCBの中央に入る荒木。ここでセレッソがボールをキープすると何と広島の3CBのうち2人がもうゴール前からいない。
3バックの横でフリーまでも |
内側に入ったSHをCBで潰すというのは名古屋戦を見ての対応なのだろうが、広島は全体的に人への意識が強い分セレッソが人を動かし、スペースを使ってくるのでかなり苦しい状態になっていた。
セレッソのボール保持 |
広島は清武を最重要人物と捉えていたのか、野上と川辺で受け渡しながら出来る限り捕まえようとしていたが、そうなると藤田が空く。
先制点となった坂元のクロスが佐々木に当たっての20分のオウンゴールは、藤田から松田、松田から坂元とボールが渡る中で誰もアプローチをかけられず、坂元に十分時間がある中で清水との1対1の局面だったのでオウンゴールとはいえ必然とも言えるだろう。
左利きながら右足も使える坂元とあれだけ時間もスペースもある状況で1対1になればちょっと止められない。
先に先制点の話しを書いてしまったが、「広島はボールを奪い返したいところでボールを奪えない」という状況に陥っていたことでこの先制点前から試合のペースはセレッソが握るようになっていた。セレッソのペースといえばもちろん試合のテンポを落としたゆっくりとした試合展開のことで、ハイプレス、ショートカウンターが武器で早いテンポで試合を進めたい広島の長所が出にくい展開である。
■運びたい形でボールを運べない広島
ここまでセレッソのボール保持のことばかりを書いてきたが、この試合では非保持の部分でも広島を苦しめていた。セレッソのボール非保持 |
広島は過去にミシャ式を経験しているからか、例えばCHが1人下がって4バック化し、3バックの両サイドをSBのポジションに置くなどビルドアップのバリエーションは比較的多い。そしてそのいずれのパターンのビルドアップでも共通しているのが人数調整。どこで数的有利を作るかというのがメインになっている。
しかし、セレッソの4-4-2は人数調整にはあまり興味がない。というよりも人を基準にしていない。なので3-1-4-2の布陣の広島に対しても中央を閉めた4–4-2のブロックを作るので、広島が最もボールを入れたい中盤の3枚のところにはボールを入れさせない。
ならばと広島は3バックの両サイドが開くことで角度をつけようとしてきたが、そうなるとセレッソのSHが内側からアプローチをかける。そうなるとと3バックの両サイドは外のWBに出すしかなくなる。そこでWBにボールが入ると出て行ったSHが戻ってセレッソの4-4-2がボールサイドに圧縮。セレッソはここでボールを奪ってしまうことに成功していた。
なかなかビルドアップがうまくいかない広島は、青山や森島が降りてきて何とかしようとしていたが、こうなると単純にどんどん相手がブロックの外に出て行ってくれるのでセレッソは大助かり。
もちろん前線にいるレアンドロ・ペレイラは強いし、永井や川辺はよく走るし、ハイネルも個人でガツンと行ってしまうのでボールを運ばれることもあるのだが、広島の選手からすると守備と同様に運びたい形でボールを運べていないので、選手としてはストレスの溜まる展開だったと思う。
■追加点
後半開始〜 |
藤井選手は立命館大学在学中で来季からの広島加入が決まっている特別強化指定選手。特別強化指定選手ながらここまでのリーグ戦4試合全てにベンチ入りしており、再開後の4試合全てで途中出場しているという城福監督からの信頼も厚い期待の若手である。
広島はこの交代で布陣をいつもの3-4-2-1に戻すかと思われたが、3-1-4-2のまま変更はなかった。
後半開始早々に入ったばかりの藤井選手が縦に仕掛けるも松田が万全の対応をするという場面があった。多くのセレッソサポーターにとっては藤井選手は初見だったと思うが、特徴としては「抜群のスピードを持っていてキレで縦に抜けるサイドアタッカー」。ここまでの試合では相手からすると途中で出てくには厄介なタイプで、ゴールやアシストといった数字こそ残していないが、インパクトのあるプレーは見せていた選手である。
で、もちろんセレッソはここまでの試合でスカウティングもきちんとしていたとは思うが、松田がすんなり対応できたのも、僕自身も彼のプレースタイルを知っているのも、実は2月に宮崎でやった練習試合で藤井選手が出ていたからである。その時もハーフタイムで柏に代わって投入され、松田とマッチアップしていた。
この練習試合での広島はチームとしてあまり機能していなかったのだが、藤井選手のスピードとキレはかなりインパクトがあったので個人的にも覚えていたし、きっと松田もプレーのイメージはあったんじゃないかと思う。
ということで布陣を変えないで選手を入れ替えた広島。
どうしてくるのかと思っていたら、50分にセレッソが追加点を奪う。
形としては先ほども書いたセレッソのプレッシングから。都倉が追って荒木から佐々木にボールが入ったところで坂元が出て行く。そこで林に戻したボールに対して奥埜も行ったので荒木のところでボールを奪いかけるが残念ながら取りきれず。
しかしここから森島に渡り森島が川辺に出したボールが浮き球になったことで川辺には落ち着いてボールをコントロールする時間がなくなる。そこを藤田がアタックしてボールを奪い返し、清武、そして外側を回った藤田がボールを受けゴールに流し込んだ。
ここまで狙い通りのゆったりとしたテンポに持ち込み、その中で2得点。セレッソとしては万全の試合運びになっていた。
■取りに行ったことで生まれたミス
追加点後の再開となるキックオフでセレッソは再び高い位置からプレッシングを仕掛けるが、荒木から内側の森島にパスを通されたことでデサバトが入れ替わられ、最後はヨニッチがドウグラス・ヴィエイラを倒しPK。これを決められ1-2と1点差に詰め寄られる。取りに行ったことでこの試合初めてと言っていいぐらい内側にパスを通され、さらにヨニッチの対応のミスも重なった。
せっかくリードを広げたところだったので非常にもったいない失点。
おそらく0-0なら、0−1でも行かない状況だったとは思うが、0-2になったので畳み掛けると言った主旨でボールを取りに行ったのだろう。
実際のところ最初にうまく行かず失点にまで繋がったのは「たまたま」で「アンラッキー」な要素もあるが、ボールを取りに行くことのリスクが出たとも言える。
■広島の力押し
55分~ |
「川辺は本調子ではなかった」のかもしれないが、清武を捕まえて攻撃では出て行くというとんでもない仕事量を任されていたのが少しかわいそうだった。
ここからセレッソはいつも通りペースを落とせば、ボールを保持すればいいのだが、少しオープンな展開に付き合ってしまう。
デサバトが清武とのパス交換で中央を割ろうとしてボールを奪われてカウンターを受けてしまったシーンはその象徴だ。
1点返されたとはいえ1-2でリードしてるんだから別に焦って点を取りに行く必要はない。
清武は見えてしまったからデサバトにリターンを出したんだろうし、その気持ちは十分わかるが、セレッソのゲームプランからいえば全くそうする必要はなかった。
セレッソはここまで結果を残していると言えるが、試合の中でどうしてもこういう時間帯を作ってしまう。
このあたりは改善すべき問題だろう。
75分〜 |
普通にセレッソがボールを保持して攻撃し、その後広島がビルドアップから攻撃を始めたとしても、そもそも崩すような仕組みは無いのでセレッソにとってそこまで怖い場面が作られる訳では無い。
ただ、広島は1点を返し勢いに乗っていること、少し展開がオープンになってしまっていること、前線の2トップの個の力が強いこと、により広島は力技でゴール前までボールを持ってくることが出来る。
そこにミスが絡むと83分のレアンドロ・ぺレイラが抜け出した場面のようにピンチを迎える。
しかしここではキム・ジンヒョンがセーブ。何とか守りきった。
82分〜 |
一方の広島は青山に代わって東を投入。ハイネルがセンターに回り、東は右IHに入る。これで5人の交代枠を使い切った。
その後も広島は「強く押す」形でセレッソゴール前に迫るような場面を作るが、
90+3分〜 |
1-2でセレッソ大阪の勝利に終わった。
■その他
1点差に追い上げられてからは広島のパワーに押し込まれる場面もあり、同点に追いつかれる可能性が無かった訳ではない。そして試合の進め方には課題も出た。しかし、試合全体で見ればチームのコンセプトに沿った戦い方で偶然ではなく必然的に勝利した、今後に積み上げられる試合だったと思う。ここまでも派手な試合は少なく結果も僅差の試合が多いが、ピッチでの内容は確実に相手を上回るものを見せることができている。
短期決戦なら勢いでカバーできるので偶然でもなんでも勝てばいいが、リーグ戦はこうして1歩1歩前に進みながら今後の勝ち点にも繋がるような勝利が必要となる。それが出来た試合だったのではないだろうか。
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