スタジアム | パナソニック スタジアム 吹田 | 主審 | 佐藤 隆治 |
入場者数 | 副審 | 野村 修、松井 健太郎 | |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴のち曇 / 25.9℃ / 46% | 第4の審判員 | 岡 宏道 |
メンバー
- 監督
- 宮本 恒靖
- 監督
- ロティーナ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、無観客での試合開催(リモートマッチ)
<監督コメント>
ガンバ大阪:宮本恒靖監督セレッソ大阪:ロティーナ監督
<選手コメント>
ガンバ大阪:宇佐美貴史、遠藤保仁セレッソ大阪:丸橋祐介、奥埜博亮
133日ぶりに再開された明治安田生命J1リーグ。リモートマッチ(無観客試合)で行われた敵地パナソニックスタジアム吹田での大阪ダービーは1-2でセレッソ大阪が勝利。2003年以来17年ぶりとなるリーグ戦アウェイでのガンバ大阪戦勝利はスコア以上の快勝だった。
■メンバー
ガンバ大阪はプレビューでの予想通り布陣は3-1-4-2を選択。ただし先発メンバーは2人異なっており、右CBには菅沼、インサイドハーフには矢島を起用。高尾、井手口はベンチスタートとなり、さらに関西学院大学から加入したルーキー山本悠樹、小野裕二、パトリック、渡邉千真がベンチに入っている。そしてアンカーで先発出場となった遠藤はこれでJリーグ記録となる632試合目の出場。リーグ戦が1年34試合なので仮に全試合出場したとしても19年近くかかるとんでもない記録。フィールドプレーヤーであり、さらに長年日本代表の主力でもあり続けたわけで、その中で達成したこの大記録はまさに偉大としか言いようがない。一方のセレッソ大阪だが、布陣はいつもの4-4-2。ただ FWにはブルーノ・メンデスではなく都倉を起用。
ベンチには茂木、瀬古、片山、ルーカス・ミネイロ、ブルーノ・メンデス、豊川、柿谷が入っている。
両チーム共通で特徴的なのが、共にベンチにFW登録の選手が3人もいること。今回の再開初戦となる第2節では全18チーム中なんと10チームがFW登録の選手を3人ベンチに入れていた。今年の過密日程を考え採用された交代枠5人の影響だろう。
またセレッソの先発FWに都倉が起用されたのだが、これはプレビューでも触れた開幕戦でのガンバ大阪の戦い方であるハイプレスを警戒してのことだろう。もちろんビルドアップで剥がして行くことを狙うが、前線に都倉がいると困った時に蹴ることができるからだ。実際にこの試合ではいつもよりもゴールキックでロングキック(ターゲットはもちろん都倉)を多用していたので、この試合に向けてロングキックのトレーニングもしていたと思われる。
■プレッシングを仕掛けなかったガンバ
ガンバの先発2トップがアデミウソンと宇佐美だったことからある程度は予想できたが、ガンバはマリノス戦の様なプレッシングには行かず、ミドルゾーンで5-3-2のブロックを作る形で守備をすることを選択していた。この選択となった要因には、ここから過密日程が始まるということもあるだろう。また試合後のコメントで宮本監督が「先に失点しない我慢強い戦いをして、前半はある程度0-0で推移しながら…」と語っているので、昨季のセレッソホームの時のダービーで宇佐美と渡邉千真の2トップにしてプレッシングを仕掛けたが裏返されたこともあったのではないかと思う。またボールを奪った後はポゼッションをしながらというよりも「素早く縦につけて」という形が多かった。今度は宇佐美のコメントになるが「相手も素早く戻ってブロックを作ってくるチームだし、そういう陣形が出来上がる前に取って速く攻められたらよかったが…」と語っているのでこれはチームとしての狙いだったのだろう。そして宇佐美ともう1人のFWにアデミウソンを起用したのも奪ったら素早くスペースに出てボールを引き出して欲しいという意図があったのではないだろうか。そして倉田や矢島にはそこに素早くサポートに入って欲しい。大まかに言えばこういった狙いはあったんだと思う。
ただ、この「プレスに行かずミドルゾーンでブロックを作る先に失点しない我慢強い戦い」と「FWに速くボールをつけてインサイドハーフが素早くサポートに入る」という2つを両立させるのは結構難しい。特にセレッソは意図的に試合のペースを落とすのでなおさらである。
遠藤が試合前日の取材で「淡々とゲームが進む可能性があるので、試合の入り方や先制点が重要になる」(これはもしかすると「リモートマッチ(無観客試合)だから」という主旨だったのかもしれないが)と語っていたが、実際に試合はその様な「淡々と」進んでいく展開に。そしてこれはセレッソがやりたい展開でもあった。
■セレッソは意図して凪状態を作る
「淡々と」というのはいわば無風、凪状態。再開前の記事では「じっくり・ゆっくり」と書いたが、セレッソは意図的にペースを落としてこの凪状態を作ろうとする。凪状態を作ることによって圧倒的に失点のリスクを減らすことができる。そして対戦相手も前半であればリスクをあまり掛けたがらないので、このペースに引き込みやすい。だからこそ昨季のセレッソは年間前半失点4という異次元の数字を記録することができたのである。
ただし無風の凪状態なので失点のリスクも減るが当然得点のチャンスも減る。ゴチャゴチャ、ガチャガチャしてる混乱状態の方がミスも起こりやすいのでピンチもチャンスも生まれやすい。
なのになぜセレッソは意図的に凪状態を作り出すのかというと、そこからチャンスを作る、試合を動かす方法を準備しているから。もちろんそのチャンスの糸はそんなに太いものではないので昨季は得点数が伸びなかったのだが、あるとないでは大きく違う。そして今季はその糸を太くしようとしている。
チャンスとまでは言えないもののこの試合最初のシュートはアデミウソンであったり、宇佐美のミドルシュートが木本の背中に当たりポストに当たる(木本の背中にあたらなければキム・ジンヒョンが十分対応できていた)という場面も序盤にはあったが、試合が進むにつれセレッソが凪状態を維持しながらチャンスまで作り出す場面が見られる様になる。
そのキーマンとなっていたのは清武。ガンバは清武を捕まえられていなかった。なので淡々と進む凪状態でもセレッソがチャンスを作れる様になっていた。逆に言えばガンバは凪状態の中で清武を捕まえられていなかった。
■清武をフリーにするための…
ガンバの守備陣形 |
そしてこれに対してセレッソは坂元を右サイドに張らせた。中継の解説では「右に開きすぎではないか」との話しもあったが、ここまで徹底していたのだから意図的だったのだろう。
セレッソのビルドアップ |
するとガンバはブロックの中に入ってくる松田に対してどう対応しようかという問題が出てくる。
1つはWBの藤春が最終ラインから前に出てきてアプローチをかける方法。これだと藤春の動きに合わせて最終ラインもボールサイドにスライドして4-4-2の様な形になれる。藤春がちょうど左SH、矢島と遠藤がCHになって右IHの倉田が右SHになるという形だ。
そしておそらく、セレッソはビルドアップの時に松田の立ち位置を変えて調整することが多いのでガンバはこの形をしようとしていたんじゃないかと思う。なので開幕戦では右のIHだった矢島が左のIH。左SHだった倉田を右IHに起用したのだろう。
しかしセレッソは坂元を右に張らせた。ということは坂元を藤春の前にいる状態にした。となると藤春は前に出て行くことができない。4ヶ月前の大分戦でも後半にやった「ピン留め」である。
松田にアプローチをかける矢島 |
ただ、この状態でも清武の位置はボールから距離がある。なので右IHの倉田は清武のポジションを確認しながら内側へと絞っていた。ボールが出てきたら対応できる準備はしている様子は伺えた。
デサバトが前に |
普段なら時々前に出る動きを見せるもののそれほど頻度は高くない。しかしこの試合では、ソウザほど自由に動いてボールを持って何かをしようというわけではないし、ボックス内にまで入って行こうというわけではないが、デサバトが前に出る動きを見せる。
これにより遠藤と倉田はより引っ張られることになり清武が内側で自由を得ることになる。
■21人目が決める
清武をフリーにできるようになったセレッソは飲水タイム前後からボールを保持する時間を増やしていく。とはいえセレッソのボール保持は急がないしじっくり攻めるのですぐに決定機を作るという訳ではない。
しかしその反面簡単にボールを失うわけでもなく、簡単にカウンターを受けるという状況にもならないのでジワジワとチャンスを伺うといった感じ。
そして32分にはカウンターから一気にボールを運び、清武の個人技でバイタルエリアで前向きにボールを持つとスルーパスで奥埜がボックス内に侵入、藤春に倒されるがノーファウルの判定。
微妙な判定だが、藤春の左手は奥埜の肩にかかっていたので、もしVARがあればPKを獲得したしていたかもしれない。
一方のガンバは、試合が落ち着いてしまったので宇佐美が下がってきてボールを受けることで何とか攻撃の形を作ろうとする場面が増える。しかし宇佐美が下がると前に人が足りなくなるのでチャンスらしいチャンスは作れず攻撃は単発に。
試合としては「淡々と進む」なのでこのまま0-0で前半終了するかとも思われたが、前半のアディショナルタイムにセレッソが試合を動かすことに成功する。
スタートは東口のゴールキックを丸橋がヘディングで跳ね返したところから。このボールをデサバトが拾い、ヨニッチ、松田、坂元と右サイドに展開。さらに藤田、清武、デサバト、丸橋で左サイドへ。そして清武、奥埜、清武からサイドチェンジで再び右サイドの松田へ。藤田、松田、ここで一旦ガンバの選手に当たるが、もう1度藤田が拾って都倉へのクサビが入りリターンを藤田。そして中央左寄りでフリーになっている清武に渡るのだがこの時点でもはやガンバの3センターは壊滅状態。
この清武のスルーパスに抜け出した丸橋の折り返しをマイナスの位置で待った奥埜が流し込んでゴール。セレッソが先制する。
丸橋のヘディングから数えてのべ19人を経由し丸橋が3度目にボールを受けた折り返しを21人目の奥埜が決めた形である。
セレッソの先制点 |
■アグレッシブさ
後半開始〜 |
しかしガンバは倉田と矢島のポジションを左右入れ替えていた。やはり松田のところからずらされるのが嫌だったのだろう。
そしてガンバは当初のプランでは「先に失点しないで我慢強く」というものだったが先に失点してしまったので、後がない後半は早く前につけて早くサポートに入るというアグレッシブさを前面に押し出してきた。セレッソも正しいポジションでブロックを作っているので松田がカバーに間に合ったが、48分に倉田が個人技からチャンスを迎えている。
おそらく後半頭の宮本監督はこのアグレッシブさを取り戻せるかどうかを見ていたんじゃないかと思う。
54分〜 |
前半の中盤以降は宇佐美が下がってという形が増えていたので、それなら最初から宇佐美のポジションを低くして前に人を増やそうということだったのだろう。
井手口が落ちるミシャ式 |
前半の序盤から遠藤が落ちる形でミシャ式風を時折見せていたが、セレッソがボールを持つ時間が増えてからは少なくなっていた。
このミシャ式風のメリットは3CBの両サイドが開くことで両WBが高い位置を取れること。
セレッソの4-4-2の脇の高い位置までWBが出ていくことができるのである。
実際この交代からすぐに右サイドからのクロスを逆サイドの藤春が折り返すという両サイドが高い位置で絡む場面を作っている。
57分〜 |
片山が入ったのはそのまま右SHのポジション。片山は松田のバックアッパー1番手だが、岡山時代にシャドゥからWB、3バックの右と前から後ろまで色々とやっており、セレッソでも去年から水沼に代わってそのまま右SHに入るという使い方もされていた。
なので布陣としては4-4-2のままなのだが、これは最悪片山に右SBの外側に戻ってくるというタスクを任せられるからだろう。
片山は身体能力が高く身体も強いのでクロスやハイボールでも十分戦える。
そしてこの試合では57分での交代となった坂元だが、藤春の前にポジションを取る時間が長くなっていたためこれまでの試合の様にキレのあるドリブルを見せることはあまり無かった。坂元の動きを見ていると、松田が出てくると内側に入る・出てこないと藤春の前で張るというルールだった様子。松田がビルドアップの出口になってそこから清武をフリーにして勝負という形が多かったので坂元は黒子に徹したということなのだろう。目立つことは無かったが実際に清武からいくつもチャンスができていたので、チーム内での役割は十分こなせたといえる。
■追加点とPK
こうして前に前にと出てくるようになったガンバだが、セレッソも対応できているので決定機は作らせない。すると62分、丸橋が目の覚めるような強烈な一発をお見舞いし追加点を奪う。
攻撃の起点は右サイドでのスローインから。片山はロングスローではなく奥埜へいれ、右サイドで都倉と奥埜の2人が一緒にいる状態になる。
すると井手口が奥埜に猛烈にアプローチをかける。奥埜は都倉に出すが井手口はさらに追いかける。そして松田に戻した時に連動して倉田が行く。
セレッソの2点目 |
片山がぽっかり空いていたのでそこに浮き玉でスルーパス。慌ててキム・ヨングォンが対応するも折り返しは清武の元へ。ガンバディフェンスの人数は揃っているがDFラインの前には宇佐美が1人。片山の折り返しは宇佐美の視界の外、後ろからフリーで入ってくる清武へ。この時清武弘嗣はコントロールをミスしてしまいシュートは打てなくなるが、この時間を使ってさらに後ろから上がってきた丸橋に優しいパスを落とすと左足一閃。強烈なシュートがサイドネットに突き刺さった。
シュートの反応ではJリーグトップレベルの東口でも流石にこれはノーチャンス。素晴らしい一撃だった。
リードを2点に広げたセレッソ。
ガンバの攻撃はゴリゴリとゴール前にボールを入れてくるも崩すということにはなっていないため決定機までには至らないということもあり、これで試合は楽になったかと思われた。
しかし66分、木本のクリアボールを拾って放った小野瀬のシュートが木本の腕に当たったとしてPK。アデミウソンが決め68分に1-2となる。
木本のプレーはその前に倒れていたので支え手にも見えるが、シュートをブロックしようとして動いたことでPKの判定は妥当だった。この小野瀬のシュートに対してはキム・ジンヒョンがきっちり反応できていただけにもったいないPKだった。
■淡々と進める
75分〜 |
清武と柿谷はキャンプ時点では併用するプランも探られていたが、中断の影響で超過密日程となったことから怪我さえなければ左SHのポジションはシーズンを通して2人で回していこうというプランなのだろう。都倉は復帰後初先発ということでそろそろ疲れが見えていた。
ガンバは1点差になったことでさらに勢いを強めていた。
ただ、この試合を通じてガンバの攻撃には崩すとか動かすとかいうアクションはほとんどなく、シュートまで持って行ったとしてもブロックできたりキム・ジンヒョンが十分対応できるものばかりだった。前にはパトリックもいるので事故が起こる可能性もあるが、決定機自体は作らせていない。また柿谷を中心にボールを運ぶ場面も作ることができていた。
87分〜 |
アディショナルタイムには豊川がカウンターで走る場面もあったが追加点は奪えず、そしてガンバのパワープレーもしっかりと凌ぎ切り1-2で試合終了。
昨季のセレッソホームのダービーに続きダービー2連勝。敵地では2003年以来17年ぶりの勝利となった。
■その他
再開初戦、大阪ダービー、という色々な要素が重なった試合は勝つべくして勝った、素晴らしい勝利だった。おそらくセレッソはもっとガンバが前からプレスにくることを想定していたと思うが、そんな中でも相手を動かし、チャンスを作り、見事に決めた。
今季はもっとボールを保持する時間を長くすること。そしてチャンスの数を増やすこと。が目標だと思うが、こうして勝利を重ねながら着実に進歩していきたい。
お疲れ様です。
返信削除今期は選手もですが、Akiさんのレビューも過密日程ですねw
大変だと思いますが、プレビュー、マッチレビュー共に一読者として楽しみにしています。
試合の方は完勝と言った所でしょうか。
個の力だったり、事故だったり、一部ハラハラさせられる所もありましたが、終始セレッソのペースで戦えてて、改めてロティーナセレッソの安定した力に感服しました。
今期は去年と違い過密日程から来るターンオーバーが重要になりますが、ヨニッチ、丸橋、松田をどう変えてくるか楽しみだったり不安だったり・・・
コメント有難うございます。
返信削除そうですね。内容は盤石だったと思います。
またおっしゃられるようにヨニッチをどこで休ませるか問題が一番むずかしそうですね。