2020年8月17日月曜日

8/15 明治安田生命J1リーグ第10節 VS. 柏レイソル @ 三協フロンテア柏スタジアム

スタジアム三協フロンテア柏スタジアム主審高山 啓義
入場者数2,603人副審山内 宏志、岡野 宇広
天候 / 気温 / 湿度晴 / 32.8℃ / 59%第4の審判員関谷 宣貴
柏レイソル
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • ネルシーニョ
 
  • 監督
  • ロティーナ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>

柏レイソル:ネルシーニョ監督
セレッソ大阪:ロティーナ監督

<選手コメント>

柏レイソル:ヒシャルジソン、高橋祐治
セレッソ大阪:ブルーノ・メンデス、西川潤

ミッドウィークのルヴァンカップから中2日で行われる明治安田生命J1リーグ第10節。セレッソ大阪は敵地三協フロンテア柏スタジアムで柏レイソルと対戦し1-3で勝利。無敗記録を6試合に伸ばした。

■メンバー

柏レンソルの先発メンバーはリーグ戦前節から2人入れ替え。共に試合中に負傷した山下、大南のCBはやはり間に合わず、CBにはルヴァンカップで復帰した高橋祐治と前節は右SBでプレーしていた古賀を起用。右SBには7/8の第3節以来の先発となる高橋峻希が起用された。
またベンチには負傷で離脱していた神谷が戻っている。

セレッソ大阪の先発メンバーはリーグ戦前節と全く同じ11人。ベンチには庄司、西川、高木、鈴木、柿谷らが入り片山は今季初のベンチ外。都倉、豊川もベンチ外となった。

■柏がボールを保持する展開に

試合前までのスタッツではボール保持率が46.6%で15位の柏と52.7%で4位のセレッソ。普通に考えるとセレッソがボールを保持し柏がカウンターを狙うという展開になりそうなものだが、この試合は全く逆の展開となった。

そうなった要素の1つに実はそれほど両チームともにボール保持/非保持に拘っているチームではないという部分があっただろう。
例えば柏であれば非保持型ではあるもののボール保持を嫌がって相手にボールを渡す展開を望むわけではないし、高い位置からボールの即時奪回を目指す様な前線からのプレッシングを行うこともある。
一方のセレッソも是が非でもボールを握ろうとするわけではないし、即時奪回を目指す前線からのプレッシングを行う回数はかなり限定的。相手がボールを保持する様な状況になれば、ボールを奪い返すよりもしっかりと4-4-2のブロックを作ることを優先する。

そもそもセレッソのボール保持の目的は試合をコントロールすることにある。もちろんゴールを奪うことが最大の目標ではあるのだが、目的としては試合を落ち着け自分たちの意図するペースで試合を進めることにあり、ボールが両チームのゴール前を行ったり来たりしたことで生じるアクシデントが起こりかねない状況をできるだけ作らない様にするた。その手段の1つがボールを保持することなのだ。

おそらくネルシーニョが意図したのはセレッソに試合をコントロールさせないことだったのだろう。
セレッソがボールを持ってゆったりゆっくりと(柏から見ればチンタラ)試合を進められたくはない。最初からボールを早く奪い返し、ボールを握る試合にしようと考えていたのではないだろうか。
その結果が立ち上がりから見せた前線からのプレッシングであり、CBに古賀を起用するというプランだったのだろう。
古賀は昨季は左SBで起用されていたが、左右のSBを始めCB、U-22代表では3バックの左でも起用、とDFラインならどこでもできる器用な選手で両足が使えパス能力も高い。
なので柏は最初からボールを握ろうという考えを持っていたと思われる。

実際試合が始まると柏はセレッソのボール保持に対して高い位置からアプローチをかけてきた。

■柏が押し込む

さらに柏がボールを保持する展開へと進んだのは、5分にセレッソが先制したからだろう。
まずは先制ゴールの場面。
松田からの縦パスでブルーノ・メンデスが抜け出すと、清武とのパス交換から放ったシュートがゴールネットを揺らした。
先制点の場面
この場面はセレッソが持つビルドアップの1つでデザインされた形。
準備段階として松田が最終ラインに残る3バックの形で最終ラインでボールを保持し、松田のところには瀬川がくることを確認する。
そしてキム・ジンヒョンからのヨニッチを飛ばすパスで松田に少しの時間を送ると、松田がルックアップしたタイミングで奥埜が下がってくる。この動きに古賀が少し引っ張られたので松田が古賀の背後に飛び出したブルーノ・メンデスを走らせるパスを選択。これで一気にペナルティエリア内までボールを運ぶことができた。

先制後しばらくはセレッソがビルドアップからボールを運ぶ場面もあったが、時間の経過と共に柏が押し込む展開になっていく。
そうなっていったのはセレッソの守備自体がブロックの外で相手がボールを持つことは許容しているから。つまり外では柏がボールを運ぶことができていたからである。
そしてもう1つは柏のネガティブトランジションにあった。
柏はネルシーニョのチームだけあってガツンと強くボールを奪いにくる。プレビューでも触れたがタックル数はリーグ2位。例えばヒシャルジソンなんかは非常にネルシーニョが好みそうな選手である。この試合でもファールになることも多かったが球際に激しくアタックにくるディフェンスは何度も見られた。

そしてネガティブトランジションのところで柏がケアしてきたのはCHのところ。ボールを失った時にセレッソのCHに対してヒシャルジソンや江坂のプレスバックで距離を詰めてしまうことでセレッソはボールを奪い返しても逃しどころを作れず、すぐにボールを失ってしまうという場面が続出する。
清武のところまでボールを届けることができればセレッソもボールを運ぶ場面が作れるのだが、一旦逃してボール保持のポジショニングを取るということがあまりできなかった。
前半パス数のランキングで松田やデサバトが入らない試合というのもあまりない。

■守備組織さえ作れていれば

柏が押し込む展開が続いたことで柏はシュートを打つ場面も作っていく。セレッソは押し込まれる時間が続くことで4-4と2が離れてしまい柏はDFラインからのクサビのパスも入れる様になっていた。
前半に柏が作った代表的なチャンスは、24分にオルンガ、31分に仲間、39分の江坂によるシュート場面だろうか。
この中でも31分のものは高橋峻希からのクロスをオルンガが落として仲間が打つという形で、これは決定的なピンチだったがキム・ジンヒョンのスーパーセーブでことなきを得た。仲間はプレビューではサイドアタッカーのくくりで紹介したが、岡山時代にはシャドゥでもプレーしていた様に中でのプレーすることも十分できる選手である。
39分の場面はビルドアップから坂元がボールを失って江坂にシュートを打たれるという場面。これはビルドアップのミス。ヒューマンエラーである。
最後に24分のオルンガのシュート。これはセレッソにとってはそれほど問題ではない場面。オルンガのシュートは強烈でもちろんセーブしたキム・ジンヒョンは素晴らしいがあのシュートコースしかない状態なのでセレッソとしてはキム・ジンヒョンが止めることを計算に入れている。

この3つの例に代表されるように柏がボールを保持しシュートまで持っていく回数も多かったのだが、セレッソにとっては最も嫌な展開というわけではなかった。
セレッソにとって最も嫌なのは両チームのゴール前をボールが行ったり来たりするオープンな展開。この状態は誰が何をすれば良いのかがはっきりしなくなるからだ。そうなってしまうと「個々で頑張る」以外にどうすることもできなくなり、誰がどうするかはやってみないとわからないのでチームは混乱する。
しかし相手がボールを持って攻め込んできている状態は、誰がどこに立つべきか。どこを埋めるべきかがはっきりする。ルヴァンカップの浦和戦でもそうだったが、そうなればルールが整備されて・徹底されているセレッソの守備は強みを発揮できるのだ。

柏には31分の場面の様に、きちんとと守備組織を作っていてもその上からチャンスを作るだけの高い能力を持つ選手もいるのでもちろん一番良いのは自分たちでボールを持っている展開だが、やるべきことがはっきりしているのでチームが混乱することはあまりない。

■セレッソの守備とオルンガ対策

この試合では前半柏が9本のシュートを放ったが、ここ何試合かと同様にそのほとんどがDFの前からのものだった。
この様になるのはセレッソの守備のやり方にある。
セレッソの守備はゾーンディフェンス。中を固めて帯状に守る。なので1人が出ていくとそれに連動する。
この連動する手順が徹底されていて、例えばSBが出るとSBとCBの間は誰が埋めるのか、CBが出て行くとそこに誰が入るのかがルールとして決まっており、そのルールに則ってポジションをとる。
そしてもう1つの特徴はスペースを決して空けないこと。なので守備の時に安易にボールを奪いに行かず、正しいポジションを取ること、スペースを埋めることを徹底する。飛び込んだりすることはほとんどない。
ボールを奪い返すことができればもちろん最高だが、相手にシュートするスペースと時間さえ与えなければ例え相手がボールを持っていても失点することはないからだ。

この試合では相手にオルンガという現在のJリーグで最も怖いFWがいるのだが、そのオルンガ対策もセレッソの守備の原則に則った形で行われていた。
まずベースになるのは相手を走らせないこと。これも普段から行なっていることの1つだが、トランジション(攻守の切り替え)の機会を減らすため急いで攻撃を行うことはしないし、急いでボールを奪いにいくこともしない。(カウンターをやらないわけではない)
この試合ではあまりボールを持つことができなかったが、それでも先に書いた嫌な展開ではなかったのは相手がボールを持っていればトランジションの機会は無いからだ。
そしてさらにいつも以上に中を閉めた。
SBとCBの間をSHが埋める
柏は三丸がいる左サイドからの攻撃が多く、その分松田がサイドに引き出される場面が多かった。となると松田とヨニッチの間が開く。
普段であればここを埋めるのはデサバト。そしてそれに合わせて藤田、清武がスライドしてくることになる。
しかしこの試合ではデサバトだけでなく坂元がここを埋める、もしくは坂元が戻れていない時は奥埜までもが戻ってきて埋める場面も多かった。
これはCBーCHによる四角形をできるだけゴール前に置きたかったのだろう。
こうすることでオルンガに対してはヨニッチか瀬古かが必ず競りに行ける状態を作れるし、江坂や仲間が使うスペースも減らすことができる。
もちろんこの形は坂元や奥埜の負担も大きいので「先制したから」だったのかもしれないが、普段以上に中を閉める意識は高かった。

試合終了間際にキム・ジンヒョンのキックミスからオルンガにゴールを奪われたものの、それ以外はほぼ封じることができていたのはこの守備によるところも大きかった。

■リードを広げるセレッソ

後半開始〜
後半開始から柏は大谷に代えて神谷を投入。IHで江坂と神谷が並ぶ4-3-3(4-1-4-1)にする。
これはおそらくセレッソのCH2枚に対してはっきりとマッチアップを決めたかったのだろう。
前半からセレッソのCHに時間を与えないことでネガティブトランジションで優位に立っていたのでここを強化した形だ。
こうすれば、例えばデサバトが最終ラインに落ちる形であっても、それが藤田であっても明確に対応できる。

しかしこうすることで柏のボール保持に何かいい影響を与えたかといえばそうでもなかった。
特に右サイドから仲間が中に入ってプレーする機会が多くそこに江坂も神谷もいるので中央は渋滞状態。そうなれば中を閉めているセレッソにとっては思うツボである。

すると55分にセレッソが追加点。
高橋峻希が藤田を倒してしまいFKを獲得。このFKから古賀がオウンゴール。0-2とセレッソがリードを広げる。
オウンゴール自体はヨニッチが古賀を押している様にも見えるので柏にとってはアンラッキーな面もあったが、そこに至るまではセレッソがボールを持って前進させることができていたから獲得したFKでもある。

前半に「清武のところにボールが入ればボールを運ぶことができる」と書いたが、これは柏が前からプレッシングを行うためセレッソのSHはSBが見るというマンマーク気味の対応になっていたからでもあった。
その中でも坂元は比較的開いたポジションからスタートするので三丸は行きやすい。しかし左SHの清武はスタートから中に入る。そうなると高橋峻希はどこまでいくのか、受け渡すならば誰に受け渡すのかという問題が出てくる。柏は後半から4-1-4-1にしてヒシャルジソンの1アンカーになったがこの問題は解消されていなかった。
なのでセレッソは清武を使ってボールを運ぶ。そんな流れから生まれた高橋峻希のファールだった。

■西川潤の初ゴール

59分〜
柏はこの失点を受けて59分に仲間に代えて呉屋を投入。呉屋はオルンガと並んで2トップ。江坂がトップ下の様になる。
柏にとっては2点リードされているのでストライカーを増やすという選択になるのはわかる。しかしこの交代によりセレッソのCHを捕まえていた人数が減る。ということでセレッソはこの交代の後から少しずつボールを運ぶことができる様になる。
75分〜
66分にセレッソは奥埜に代えて高木を投入。さらに75分に坂元とブルーノ・メンデスに代えて柿谷と鈴木を投入する。
柏は前に出てきているので背後は開く、またSBがセレッソのSHを捕まえにくるのでSBの裏にも十分スペースがある。高木には背後を狙わせよう。そしてボールを運ぶことができる様になってきたというところで柿谷と鈴木ということなのだろう。
柿谷投入後すぐにオフサイドにはなったが背後を狙う高木に柿谷がスルーパスを送るという場面があった。
83分〜
83分、セレッソは清武に代えて西川を投入。柿谷が左、西川が右に入る。同時に柏は瀬川に代えて戸嶋、髙橋に代えて北爪を投入。戸嶋は少し低い位置にポジションをとり、右サイドは北爪が前に出ていく形になる。

しかしさらに得点を奪ったのはセレッソ。87分に柿谷のパスから背後に抜け出した西川がループで決めゴール。0-3とリードを広げた。
柿谷はレーンを横に移動するドリブルを見せたので最初に対応したのは戸嶋だったがそこにCBの古賀も来た。ということは西川の前にはスペースがある。そこに丁寧に落とした柿谷の鮮やかなパスから西川は落ち着いて決めた。

88分にキム・ジンヒョンのキックミスからオルンガに決められてしまったが、試合はそのまま1-3で試合終了。
今季最多得点を奪い勝ち点を21に伸ばした。

■その他

柏がボールを持ち、セレッソがカウンターで得点を奪うという予想外の展開となった。
もちろんセレッソとしてはボールを持つ時間を長くしたいという思いはあっただろうが、セレッソには組織的な守備という武器もある。
イバンに出会ったことでボール保持を組み込み現在のスタイルを気付き上げたが、そもそもロティーナは守備の人。非保持時の守備組織を落とし込むことはお手の物なのだろう。

現代のサッカーは世界的にもボール保持部分にクローズアップされる機会が多いが、ロシアW杯の時に上位に進んだチームはプレッシングではなくブロックを組む守備を行なっていたことを少し思い出した。


2 件のコメント :

  1. いつも楽しく、サッカーの教科書のように拝見しています。
    ありがとうございます。
    柏の波状攻撃でもあまり怖さはなかったように思います。
    川崎戦も同じように抑え込めるでしょうか、前半の山場非常に楽しみです。

    返信削除
  2. オルンガに6戦連発を献上したり、
    西川のリーグ初ゴールが柿谷のスーパーアシストだったりとメモリアルな試合になりましたね。
    柿谷は当分こうやっていろんな位置でスーパーサブとして使われるのがいいのかな、
    と思われます。

    ルヴァン仙台戦でもそうでしたがシュート打つ選手、ボール持つ選手、
    を後ろの選手が追い越してマークをはがす動きがけっこうありました。
    この二試合で点が取れているのと無関係ではないかな、と。

    あと、地味に江坂や瀬川に昔やられた思い出を払拭できたのもサポとしてはうれしいですね。

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