2020年8月3日月曜日

8/1 明治安田生命J1リーグ第8節 VS. 湘南ベルマーレ@ Shonan BMW スタジアム平塚

スタジアムShonan BMW スタジアム平塚主審佐藤 隆治
入場者数3,494人副審山内 宏志、中野 卓
天候 / 気温 / 湿度曇 / 27.5℃ / 62%第4の審判員上田 益也
湘南ベルマーレ湘南
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • 浮嶋 敏
 
  • 監督
  • ロティーナ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>

湘南ベルマーレ:浮嶋敏監督
セレッソ大阪:ロティーナ監督

<選手コメント>
湘南ベルマーレ:鈴木冬一、齋藤未月
セレッソ大阪:清武弘嗣、瀬古歩夢

8月に入り東西のブロック分けが今節から解消となった明治安田生命J1リーグ第8節。敵地Shonan BMW スタジアム平塚での湘南ベルマーレ対セレッソ大阪の一戦は清武のPKによる得点で0-1で勝利。今節から始まる7連戦の初戦を勝利で飾った。

■メンバー

湘南ベルマーレの先発メンバーは前節から3人入れ替え。石原広教、中川寛斗、岩崎悠人が外れ、古林将太、山田直輝、石原直樹が入る。
前節の2トップが共に外れ、代わりに入ったFWは石原直樹の1人だけということで布陣も開幕から続けてきた3-1-4-2ではなく3-4-2-1に変更。
試合後のコメントで浮嶋監督もいろいろと語っているが、守備面での狙いが大きかったのではないかと思う。

一方、セレッソ大阪の先発メンバーも前節から3人入れ替え。木本恭生、柿谷曜一朗、豊川雄太が外れ、瀬古歩夢、奥埜博亮、鈴木孝司が入る。
こちらもメンバーから見ても前節の4-2-3-1から4-4-2へと変更。鈴木は2019年11月23日の神戸戦以来の先発となる。
小学校時代からセレッソの下部組織で共にプレーしてきた瀬古と鈴木冬一はこれがJ1では2度目の対戦。同級生のもう1人喜田も早くここに絡みたいところだろう。

■湘南の3-4-2-1

湘南の3-4-2-1
3-4-2-1の布陣を採用してきた湘南。その目的の1つとしては高い位置から1トップ2シャドゥの3枚でプレッシングに行きたいというところはあっただろう。セレッソのビルドアップに対して中央の石原と右の松田天馬がヨニッチと瀬古に。山田直輝が松田陸にマッチアップする形になっていることが多かった。この形になっていた理由をプレッシングを仕掛けるという面に絞っていうと、セレッソがビルドアップの時に松田陸が最終ラインに残るパターンもあること、そして湘南のプレッシングは相手のSBのところでハメようとしているからだと思われる。
これは湘南に限った話しではないが、プレッシングというのは決して「1対1でボールを奪いにいくという勝負」ではない。連動してアプローチをかけることで意図的にボールを誘導しそこでハメ込んでしまいボールを奪うというものである。
プレビューでも書いたが、湘南の場合はそれがSBのところになっており中を閉めながらSBに出たところで一気に距離を詰めるアプローチをかけるというやり方をとる。そのため松田陸のところに山田直輝がマッチアップする形になっていたのだろう。

開始2分に山田と松田天馬のシャドゥ2枚が暴走し、CFの石原を差し置いてこの2人でCBにアプローチに出てしまったところでキム・ジンヒョンから一気に奥埜へのクサビが入るという典型的なプレッシングのミスといった場面もあったが、山田直輝が松田陸を意識している限りそれ以降はそういったあからさまなプレッシングミスは無かった。
右から左へのプレス回避
ただしこの捕まえ方はセレッソも織り込み済み。それに対してセレッソはデサバトがヨニッチと松田陸の間でうまくポジションをとったりすることで右から左サイドの丸橋や清武にボールを届けるという形のビルドアップで序盤は湘南のプレッシングを回避する場面が目立っていた。
5-4-1でブロックを作る
セレッソが湘南のプレッシングラインを突破しボールを運ぶことに成功すると湘南は両シャドゥを下げて5-4-1になる。
湘南がこの試合で普段の3-1-4-2ではなく3-4-2-1の布陣を使ったのは、運ばれることも織り込み済みでそうなった時に5-4-1になりやすい。というのも理由の1つだろう。5-4-1は守備に最も人数をかけることができ、「守る」という部分だけでは最強の布陣だからだ。
ただしこの布陣は攻撃に移るのが難しいという問題点もある。なので一時主にJ2で大流行した時は採用していたチームのほとんどがハイプレスからのショートカウンターを狙っていたし、5-4-1でブロックを作った時は前線のターゲットマンを目掛けてロングボールを多用するというチームが多かったのである。
実際にこの試合でも前半の湘南はほとんど攻撃の形を作ることはできなかった。20分ごろからセレッソにビルドアップのミスが続き湘南はこの時間帯で2本のシュートを放ったが、前半に放ったシュートはこの2本のみ。鈴木冬一も大外からクロスを入れる場面はあったものの前述ビルドアップミスの場面以外ではチャンスらしいチャンスは無かった。

■スローペース

湘南がチャンスらしいチャンスを作れなかったのは攻撃に移るのが難しい3-4-2-1を使っていたからというのも理由の1つだが、それ以上にセレッソが湘南のプレッシングを外しボールを保持する、湘南がブロックを下げるという流れの中で試合のテンポをセレッソのリズムであるスローペースに持ち込むことができていたからだった。
この試合の前まで1試合平均で190回、過去7試合で200回以上を3度も記録していた湘南のスプリント数が、最終的にこの試合ではわずか127回に終わるのだが、おそらく前半の45分間ではその半分にも達していなかっただろう。
スプリントで試合のテンポを上げたい湘南にとってはまさに「走らせてもらえない試合」で、セレッソは湘南のストロングポイントを消した「走らせない試合」に持ち込むことに成功していた。
ただし、湘南側にとってもこうなることはある程度予想していた。もちろん湘南は走りたい。なのでプレッシングも仕掛けた。しかし両チームの状態を比べるとプレッシングでハメきれないことも増えてくるだろうし、セレッソに試合をコントロールされる可能性も高い。
なので湘南は何がなんでもスピードアップしようというよりもしっかり5-4-1で撤退する方法を選んだのだと思われる。

ということでセレッソがボールを保持する時間を作り湘南を押し込むことはできていたが、それほどチャンスが作れていたわけでは無かった。
チャンスになりそうだったのは、30分のデサバトのタイミングの良い飛び出しから鈴木孝司がヘディングで合わせる場面や、36分の坂元のミドルぐらい。セレッソはシャドウやWBを食いつかせたところから1つずつズラしていくという5-4-1を崩す方法を持っているので、対5-4-1はそれほど苦手にしていないのだが、この試合の湘南はスペースを埋める意識が高く簡単に食いつかないことを徹底してきたのでなかなか手こずるという前半になった。

■3-1-4-2に戻す

後半開始〜
湘南は後半開始から山田直輝に代えて中川寛斗を投入。中川はトップに入り布陣も普段の3-1-4-2に変える。

先ほど湘南は「走れなかった」が「こうなることも予想していた」と書いたが、前半にそうなったときに布陣をいつもの形に戻すというところまでもセットで想定していたんじゃないかと思う。
前半のままの形であればジリ貧であることは間違いない。しかし前半は最悪そうなっても0-0で進むならOK。後半にペースを上げるための策としていつもの形に戻すといういわば「後半勝負」ともいえるプランは想定していたと思う。

ただ、セレッソもこの試合は勝ち点3が欲しい試合ということもあり、後半立ち上がりから少しプレーのテンポを上げてきた。
後半キックオフから湘南に一度もボールに触れさせず奥埜がフィニッシュまで持っていったプレーを皮切りに、50分までの5分間で4度ペナルティエリア内に人とボールを送り込み、51分には右サイドの高い位置でハメ込み藤田がフィニッシュまで持って行っている。
テンポが上がる3-1-4-2
湘南が3-1-4-2にすることでテンポが上がるというのはある意味必然である。
2CBと2トップのマッチアップがはっきりすることでCBには時間が無くなる。しかしその隣にいるSBは比較的自由。なのでそこにボールを出すことが増えるが、湘南はそこでハメることを狙っているのでIHもしくはWBが一気に距離を詰めてくるからだ。
セレッソのプレス回避
しかしこの形に対してもセレッソは対応できる。松田がIHのプレスが届かない位置にいたり、前に出てCHのデサバトと並ぶことで松田天馬に対して2対1の状況を作る動き。藤田がCBと同じラインに下がって3バック化する動き。さらに齋藤は動くタイミングが速いので丸橋の位置に引き出したところで内側の清武にボールを入れる動きなどで湘南のプレスを外す。そして湘南が前に出てきたことでスペースが生まれるのでそこを使ってボールを運ぶ。セレッソがテンポを上げたこと(縦パスを増やし、前への動きも増えた)で後半は前半以上にセレッソにペースが傾くこととなる。

■change of pace

64分〜
60分にセレッソは鈴木孝司に代えて豊川雄太を投入。背後を狙う選手を入れる。
一方の湘南も64分に古林に代えて坂元の大学の先輩にあたる馬渡を投入。馬渡は左WBに入り鈴木冬一が右WBに回る。馬渡と坂元は東洋大学の先輩後輩だが、5年離れているので一緒にプレーはしていない。
セレッソにペースが傾いているものの湘南は勝ち点3を掴むためにはこのやり方、この道を進むしかない。

ここまでも何度か触れているが、ロティーナ体制のセレッソはスプリント数の少なさが特徴的なチームとなっている。
「無理に走らない」ことで試合をコントロールし相手に「走らせない」。今季のスプリント数もダントツで最下位である。
しかし「0」ではない。当然ながら「走らない」わけではない。
坂元がドリブルの時によく使うテクニック1つとしてチェンジ・オブ・ペースがある。一旦スローダウンして相手の重心移動を見ながらここぞというタイミングで一気にスピードを上げ抜き去る技だ。
セレッソがチームとして行なっているのがこれと同じ理屈。ゆっくりとボールを保持し相手の布陣の重心移動を見て、ここぞというタイミングでスピードを上げる。「絶対的な速さ」ではなく「相対的な速さ」である。
緩急とも言われたりするが、野球では阪急〜オリックス〜阪神で活躍した星野伸之が武器としたように人と人が勝負する以上「相対的な速さ」はどんなスポーツでも、スポーツ以外でも効果的なのだ。

前半の湘南は5-4-1のブロックでスペースを消してきたので加速するタイミングをなかなか見出せなかった。ドリブルでいえば相手は抜かれまいと後ろに下がっている状態である。
しかし後半はボールを取りにきた。ということで前半以上に加速するタイミングが生まれる。

それが実ったのが70分に坂元が馬渡に倒されPKを獲得した場面。ゆっくりとボールを保持しながら松田から坂元に入り、坂元が前を向いたタイミングでスピードアップ。奥埜とのワンツーでスピードを上げペナルティエリア内に侵入すると、このスピードの変化についていけなかった馬渡が遅れて後ろから坂元を倒してしまった。
このPKを清武が落ち着いて決めて72分にセレッソが先制。2018年4月28日のアウェイジュビロ磐田戦以来、2年3ヶ月と5日、827日ぶりのPKである。

■危なげなく逃げ切り

73分〜
セレッソが先制直後の72分、湘南は齋藤と松田天馬に代え福田とタリクを投入。福田は金子の隣に入り再び3-4-2-1にする。
続けてセレッソも73分に奥埜と清武に代えて柿谷と片山を投入。柿谷は2トップというよりもトップ下に近い4-2-3-1になる。

湘南としてはもう前に圧力をかけるしかない。セレッソは1点リードしているのでリスクは犯さず。このままでもOKだがリスクをかけずにカウンターを狙うという形。
柿谷はトップ下で2列目の守備のヘルプに入る4-4-1-1の様な形をとっていた。

湘南は前に圧力をかけるものの外からクロスを入れるか、ミドルレンジで狙うかという形しか作れない、セレッソが作らせないのでピンチらしいピンチはなし。藤田が時折疲れからかミスを犯すこともあったがチーム全体でカバーできていた。疲労が出始めるとわかりやすいのは「走れなくなる」という部分だが、実際はそれ以上に判断力に影響が出る。
83分には中盤で坂元が引っ掛けカウンターを仕掛け豊川と2人でフィニッシュまで持ち込むという場面を作ったが残念ながらシュートは谷がキャッチ。こういうチャンスで決められるようになるともっと楽になる。

あと片山が入ったことでロングキックのターゲットが生まれ、ゴールキックで片山を目掛けて蹴るという場面も出てきた。
少し話しはずれるが、片山は身体能力が高いのでハイボールにも強い。なので岡山時代に対戦した時に片山が左WB、松田が右WBでマッチアップするという試合があったのでてっきりこのミスマッチを使ってロングボールを入れてくるかと思ったのだが、岡山はここを全くターゲットにせずもったいないなあと思った記憶がある。
89分〜
89分にセレッソは藤田に代えて木本をそのままCHの位置に入れる。
湘南は終盤大野を上げてパワープレーを狙うもセレッソが危なげなく逃げ切り。
今季4度目となるクリーンシート0-1の勝利を挙げた。

■その他

スコアとしてはPKによる1点のみで辛勝ともいえるかもしれないが、セレッソにとっては負ける要素のほとんど無い危なげない試合だった。
PKもチームとして狙っている形でとったものであるし、あのまま湘南が3-1-4-2で耐え切れるとも思えなかった。
もちろん2点目3点目と奪いリードを広げて勝つとうい試合が良いに決まっているのだが、セレッソのサッカーの根本にはサッカーが90分間で行われるスポーツであること、90分終えた時にリードしている方が勝ちだということがある。
これは当たり前のことなのだが、必要以上にオープンな展開に持ち込もうとするチームも多いようにわかっているようでわかっていないチームも多い。

ミッドウィークはルヴァンカップ。ここではおそらく選手を大きく入れ替えることになるだろう。
チームの目標を考えるとリーグ戦では簡単にテストしにくい状態だったが、このルヴァンカップではそれができる。ここで活躍して是非リーグ戦のスタメンにも絡んでくる選手が出て来て欲しい。



3 件のコメント :

  1. PKだろうと何だろうと一点には違いないし、
    ちゃんとゴールに向かって侵入していたのでどちらにしても
    「坂元よくやった!」でいいとは思います。

    むしろここまで酷使している印象すらあるので、
    この7連戦で彼を休ませるような采配があってもいいのではと思うほど。
    坂元抜きで「90分で一点多くとる」ことができるのかが気になりますね。

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  2. そんな時は曜一朗やトッシー、西川でカバーできませんかね?

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  3. お2人方ともコメントありがとうございます。
    ルヴァンカップで出場しましたが、右SHは西川潤待ちというところはあったんじゃないかと思います。
    キャンプからこのポジションはほとんどこの2人でプレーしていました。
    復帰した今、この2人で回すという回数が増えそうな気がします。

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