スタジアム | 埼玉スタジアム2002 | 主審 | 西村 雄一 |
入場者数 | 12,863人 | 副審 | 木川田 博信、堀越 雅弘 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 17.5℃ / 60% | 第4の審判員 | 五十嵐 泰之 |
メンバー
浦和
C大阪
- 監督
- 大槻 毅
- 監督
- ロティーナ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き(入場可能数の「50%以下」又は
入場可能数が「20
000 人以上のスタジアムは30%程度からの段階的な緩和」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
明治安田生命J1リーグ第24節、セレッソ大阪は敵地埼玉スタジアム2002で浦和レッズと対戦し3-1で敗戦。豊川の2試合連続ゴールで先制するも今季2度目の逆転負けを喫することとなった。
■メンバー
浦和レッズの先発メンバーは前節から1人入れ替え。出場停止の宇賀神に変わって山中が9/26の第19節以来の先発復帰となった。それに伴いベンチメンバーも必然的に入れ替わり岩武が9/20の第17節以来のベンチ入り。さらに柏木、柴戸がベンチから外れ、青木、伊藤がベンチ入りした。
一方のセレッソ大阪の先発メンバーも前節から1人入れ替え。ブルーノ・メンデスに代わって前節2ゴールを決めた豊川が7/26の第7節以来今季2度目の先発となる。木本は3試合連続、CHとしては2試合連続の先発で藤田は引き続きベンチスタート。ということでベンチメンバーの変更も豊川と入れ替わったブルーノ・メンデスのみとなる。
■背後を狙ったセレッソと浦和と
キックオフ最初のプレーから丸橋が前へと走る豊川へのロングボールを使ってきた様に、この試合のセレッソはDFラインの背後を狙うという意識がかなり高かった。そもそもこの最初のプレーの為にキックオフを行う選手を普段の坂元から豊川へと代えていた。
先発をブルーノ・メンデスから豊川に代えてきたのも当然それを踏まえてのもの。ブルーノ・メンデスよりも豊川の方が直接的に背後を狙うことができる。湘南戦、横浜FM戦とここ最近のセレッソはより背後の意識を強めている。
とはいえ浦和もその2試合はもちろん確認しているし、背後も警戒している。
ということで、立ち上がりの浦和はセレッソのビルドアップに対してミドルゾーンで4-4-2のブロックを作ることを選択。最初からCBに対してプレッシャーをかけることはなかった。なのでセレッソは2CB+2CHという形でビルドアップを行う。そしてSBが前に出て幅をとり、SHは内側に入る。
浦和は2トップがCBにまでアプローチに出ないのでこの内側に入ったSHに対応するのはCH。立ち上がりに坂元が倒されたファールもSBの山中ではなくCHの長澤が対応していた。
しかし、このままだと浦和は自陣でブロックを作るだけになってしまう。そうなるとセレッソは「チンタラ」ボールを回して押し込み、そして坂元のアイソレーションから攻めてくるというのがパターン。これは浦和が最も避けたい展開だろう。
これを避ける為には浦和はどこかでスイッチを入れる必要がある。
セレッソがCHなどからCBへパスを戻すとそれに合わせてFWはCBにアプローチをかけ、2列目以降もそれと連動するという形をとっていた。
CBにアプローチをかけにきたところでキム・ジンヒョンに戻し、そこから背後を狙うロングキック。
出てきたところで背後を狙うという形は徹底されていた。
このセレッソのロングキックでポイントとなっているのは、セカンドボール要員を必ず準備していること。
ターゲットとなる豊川に対して必ず奥埜がサポートに入る。また坂元も清武も内側に入れている。
そして背後を狙うのでサイドもあく、9分にCBの間に落ちた木本からのロングフィードを大外で受けた坂元が個人技で山中を裏返そうとする場面も見られた。
こうして立ち上がりからセレッソが準備してきたであろう形を見せていたのだが、浦和にとってもある程度こういう展開は想定していたんじゃないかと思う。
というか、先に書いた様にスイッチを入れなければ自陣でブロックを作るという選択肢もあった。しかしそっちの方が嫌だったんだと思う。
サッカー界には「速く運んだボールは速く戻ってくる」という言葉があるが、浦和にとってはじっくりやられるよりも、お互いが速く攻め合う様な展開の方が自分たちのやりたいサッカーに近いからだ。
なので11分にはカウンターで武藤がシュートまで持ち込むことに成功。この場面はセレッソの守備陣に選択肢を削られ、最終的には武藤が厳しい体制でシュートを打つしかなかった場面なのだが、カウンターで持ち込めたということに意味がある。
同じ選択肢を削られてシュートを打つしかない場面でも、お互いがじっくりと攻め合う中では組織や役割が徹底されているセレッソの守備にエラーが起こる確率は浦和も含めた他のチームに比べるとずば抜けて低くなるが、早い展開だとその差は縮まる。
15分ぐらいからセレッソのビルドアップに対して右SHのマルティノスが高い位置に出て3枚で中央を絞ってという形に変えてくる。
これはここ最近の対戦相手がよく見せる、中に入ってプレーする清武をCHで捕まえることができるという形である。
■サイドを狙うセレッソと浦和と
マルティノスが出て3枚で中を閉めてくる様になったのでセレッソも木本を最終ラインに落とし、そこからSBへというパスが増える。
このSBに対して浦和のSBが食いついてくればその背後にSHを流す。
多かったのが瀬古から丸橋へだし、丸橋に橋岡が食いついたところで清武をその背後に走らせるという形だ。
この形が見られたのは左サイドがほとんどだったのは丸橋と片山のキャラクターの違いという点もある。片山は受け手とすれば優秀だが、出してとなると少し厳しい。
そしてもう1つは浦和が前に出したのがマルティノスだったということ。
このSHを1つ前に出す形はここのところいくつものチームが見せる様になった形だが、相手は必ず右SHを上げる。
1つはもちろん清武を捕まえる為でもあるが、同時に左SHを上げてしまうと左SBの背後に坂元が出て行くことになってしまうという部分もある。そうなればどうぞ1対1をしてくださいということになる。要するに坂元対策の一環でもある。
しかし22分に見せたプレーはそんな坂元対策を逆手にとった興味深いプレーだった。
それに合わせて坂元が下がってくると左SBの山中もついてくる。
それでできたギャップを使って豊川が背後へ飛び出すと、そこにデサバトから浮き玉のパスを出した。
豊川のシュートはGK西川周作にセーブされ、奥埜がこぼれ球に反応するも槙野にカバーされて得点には至らなかった場面だが(ファールくさいプレーだったのでPKをとって欲しかった)、その手前では汰木は片山に引っ張られ山中は坂元に。坂元を警戒する相手を上手く逆手にとっている。
これをやったので、その直後の23分には坂元のアイソレーションの形を作ることに成功し左足でクロス(奥埜にはあわなかったが)。
さらに飲水タイムを挟んでからの26分も坂元のアイソレーションの形を作っている。
■先制点
セレッソが先制点を奪ったのは28分。
西川周作からのゴールキックを木本が競り勝ち、そのままDFラインの背後へ。そのボールにいち早く反応した豊川が岩波に競り勝ち、カットインからのニアへのシュートを決めセレッソが先制した。
まずシュートからいうと、カットインからのニアへのシュートはサイドは逆だがアリエン・ロッベンが得意にしていたパターン。カットインからのでGKはポジションをファーサイドへと修正するのでニアへのシュートは反応しにくい。
しかし一方でニアへ強いシュートを打つにはかなりの腰の回転が必要なので結構このシュートを打つのは難しいという面もある。弱いシュートだと反応しにくいとはいえGKは間に合う。なので日本人選手は安全策でどうしてもファーを巻いて狙うことが多い。外国人GKに比べると日本人GKは手が短いのでそれでもゴールになるというのもあるとは思う。ディスるわけではないが、杉本健勇はこのパターンになるとほぼ100%ファーへの巻いたシュートを狙う。
しかし豊川はこのシュートが打てる。このあたりが外国人GK相手にベルギーでもゴールを奪えていたポイントなんだろう。
そしてもう1つ。このゴールにつながったのは木本が西川周作からのゴールキックで橋岡に競り勝ったところから始まっている。
実は浦和のゴールキックにおいて橋岡はハイボールのターゲットとして非常に重要な選手である。SBでありながら182cmあり空中戦にも強い。セレッソが時々ゴールキックで片山にハイボールを入れるのと同じである。
この試合でセレッソがCHに木本を使ったのはこの橋岡対策という部分もあったんじゃないかと思う。
実際にこの場面の前にも西川周作からのゴールキックで橋岡と木本が競り合い木本が競り勝つという場面もあった。
■浦和にとって
ここまではセレッソが浦和に対して行っていたことを中心にセレッソが先制するまでを書いたが、おそらくここまでの流れとしては、もちろん失点はしたくなかっただろうが浦和にとってはそんなに悪い感じはしてなかったと思う。
というのも、先にも書いたが浦和にとって最も嫌だったのはセレッソに凪状態を作られること。しかしこの試合では自分たちがスイッチを入れることで波風を立てることができていたからだ。波風さえ立てればチャンスがあるんじゃないかというのは、前節6点とった自信もあるのだろう。
セレッソに攻め込まれた後も、マルティノスの推進力で何かが起こせそうな波風を立てる状態にもできていた。
形としては橋岡を最終ラインに残し、左SBの山中を前にだし、右の幅はマルティノス、左の幅は山中が作るという方上げ3バック。セレッソも松田が残って3バックにするのと同じ形である。
この形でセレッソにとって面倒だったのは武藤の存在。この変化だと武藤は右シャドゥに入る3-4-2-1になるのが素直な形だが、右シャドゥの位置には基本誰もおらず、武藤は流動的に左ハーフスペースへもどんどん流れる。
これはセレッソが坂元のアイソレーションの形を作ろうとするのと同じで、浦和もマルティノスという突破力に優れた選手がいるのでそこで1対1をやらせる為。おそらくマルティノスはスペースがなくなるので橋岡にあまり近づいてくるなという様なことも言っていたと思う。
一方で左サイドは人数をかける。武藤が起点になることで左ハーフスペースの汰木に前向きでプレーさせる。
しかし左サイドに人数をかけている分中央にいるのは興梠のみとなるのだが、そこに出てくるのが長澤。空いている右シャドゥの場所に後ろから出てくる。
15分に長澤がシュートを打った場面は、体勢が崩れていたのでシュート自体には全く怖さはなかったがセレッソの対応が遅れていたのでちょっと面倒だなと感じさせるものだった。
プレビューで武藤が降りてくることでサイドを孤立させない様になったということを書いたが、武藤が降りることでいなくなったところにも3列目から飛び出すことができる様になったのも浦和の良くなったポイントに1つだと思う。
こういった下地があった上で、先制直後にヨニッチのミスパスからの展開で最後は山中のクロスをマルティノスが頭で合わせたのが29分。
キム・ジンヒョンが「はっきりー!」と声を出した場面である。
そして31分に今度は片山から清武への一山越えたところを狙ったパスが長澤に引っかかり、武藤を経由してハーフスペースをペナルティエリア内に侵入した汰木へ。その汰木を瀬古が倒してしまいPK。34分に興梠が決め浦和が同点に追いつく。
ミスに関してはロティーナ監督が言っている様に、セレッソは後ろから繋ぐことで前線に時間とスペースを送ることができるチームなのでビルドアップのミスに関しては受け入れなければいけない税金みたいなもんである。
ただ、この試合のセレッソは浦和のプレッシングをスイッチにしてスピードアップしていた。なのである意味キッカケとなっているのが自分たちではなく相手。その分ミスが起こりやすい状況になっていたと言えるだろう。
■落ち着き始めるが
1-1になってからは少し落ち着いた試合に。
浦和も高い位置から守備をすることが減ったのでセレッソがダイレクトに背後を狙う回数も減ったが、サイドを使ってボールを運ぼうという形が見えていた。
丸橋にボールが入ったときにいわゆる3オンラインの様な丸橋から直線で見方選手が並ぶ様な形が頻繁に見られた。
丸橋と2トップの2人だけでなく、坂元や清武が入り4人が並ぶこともあったので言うならば4オンラインか。
ミスパスや選択ミスがあったのでこの形から決定機を作る場面までは訪れなかったが、何度もこの形は作っていたので意図したものであることは間違いない。
この形は例えば奥埜(手前の選手)が抜け出すと、その選手を岩波がついていくのかどうかと言う判断に迫られる。
しかしついて行けば丸橋から豊川へのパスコースが開く。
ある意味当然といえば当然だが、片山が左SBに入っていた時はこの形は無かったので新たに落とし込もうとしている形の1つであることは間違い無いだろう。また22分のデサバトからの縦パスと同様に、この形は相手が右SHを上げ清武がCHに捕まえられやすくなった時の打開策としても可能性は感じさせた。
同点後は落ち着いた展開になっていたが次のゴールを決めたのも浦和。
44分、山中のミドルシュートが瀬古に当たってコースが変わりゴールイン。2-1と浦和が逆転した。
この場面はセレッソにとっては事故ともアンラッキーと言うこともできる。
山中のシュートは、セレッソ守備陣にとってはあそこからなら打たせてもOKという場所だった。おそらく瀬古に当たってなければ普通にキム・ジンヒョンが対応できた。ただ、最後に奥埜が山中に対して遅れてアプローチに行っている様に普段よりも陣形としては崩れていた。
なので事故が起こりやすい状況にはなっていた。
なので相手はよく清武を引っ張り出せばチャンスになるんじゃ無いか?と言うことでこの形を狙ってくることもあるのだが、実は奥埜が帰ってくるのでそんなことはなく慌てて入れたボールをセレッソが奪い返すといった場面も多い。
しかしこの試合ではそうはならなかった。
普段なら対応は丸橋1人で後はカバーリングポジションをとるのだが、この試合では必ず2対1の状況を作ることを徹底していたのだ。
これはマルティノスの突破力を警戒していたからこそなのだろう。
しかしその結果、清武が前に出た時サイドを使われると木本がサイドに引っ張られるので普段よりも中盤が1人足りなくなる。
この失点場面でもマルティノスにボールが入り長澤に戻してクロス。それは片山がヘディングでクリアしたのだが、そのボールを拾った山中に対しては普段よりもアプローチは遅れる。
なので事故が起こりやすい状態になってしまっていたとも言える。
もちろんどちらを取るかと言う問題だろうし、やられてはいけない場所からシュートを打たれたわけでもないので、この対応が間違えていたと言うわけでは無いだろうが、結果的には失点につながってしまった。
■攻めきれず失点
後半に入るとビハインドのセレッソは攻勢を強める。
浦和はブロックを俗に言う守りに入らない様に前線からの圧力を強めていたが、セレッソは普通にビルドアップからボールを運んでいた。
ビルドアップの出口になっていたのは2トップ脇でボールを受けるデサバトと左サイドの丸橋。前半途中からマルティノスを前にだして前線3枚にして守備を始める(=清武を長澤が見る)浦和に対して見せていた打開策である。
ただし運んだ後の浦和のブロックを崩しきれない。特に左サイドで丸橋にミスが多かったのが少し気になった。
個人的には、こういった展開なら浦和は最初からブロックを作ってもっとはっきりカウンター狙いにした方が良かった様な気もするが(おそらく逆の立場ならセレッソはそうする)、チームの考え方としてそう言う訳にはいかないのだろう。
この交代はビルドアップの部分を強化するのが目的。瀬古が交代になったのは2失点ともに絡んだから。どちらも瀬古に責任があるとはいえないが失点に絡んだことでメンタル的な部分を気にしたのだろう。
奥埜を下げると守備面では苦しくなるがビハインドなのでそうも言ってられない。
前がかりになっていることで58分の武藤のヘディングの場面など危ない場面も作られる様にはなったが、ゴール前の場面は確実に増やしていたので、69分には片山のクロスからブルーノ・メンデスがヘディングで合わせる場面なども作っていた。
するとその直後のスローインから汰木が個人技で突破すると折り返しを受けたレオナルドがシュート、キム・ジンヒョンが弾くもこぼれ球をマルティノスが詰めてゴール。3点目を決める。
これはゴリっといかれる失点パターンの1つ。もちろん同点やリードしていればこういった状況を作られない、作らせない様にするのだろうが、ビハインドだとそうもいかない。
反撃の糸口を探るも3点目を奪われたことで難しい状態に。
この交代以降の浦和ははっきりブロックを下げ、レオナルドだけを前線に残して杉本には中盤の守備のサポートをさせ、ボールを奪えばカウンターの起点になるという役割を与えた4-4-1-1の様な布陣にする。
浦和が最初からブロックを下げてカウンターを狙わなかったのは、そうするには人を入れ替えなければいけなかったからなのだろう。
3-1でセレッソ大阪は浦和レッズに敗れた。
■その他
先制するも3失点を喫し敗れてしまった訳だが、ロティーナの言うようにやりたいことが出来たかどうかと言う部分ではそこまで悲観する様な試合ではなかったと思う。
ただ、気になるのはチーム全体としてこれまでよりも波風立てる状態を受け入れていること。
以前は良い意味でも悪い意味でも凪状態を作ろうとしていたが、湘南戦、横浜FM戦、そしてこの試合と以前よりも踏み込んでいる様に感じる部分が多い。
実際に攻撃回数もこの3試合は多い。つまりボールを失っている回数も多い。
失点が増えているのはこのあたりの影響もあるんじゃ無いかと思う。そしてその反面得点も増えているという部分もある。
この変化はどこを見て行なっているのか。ここ最近はこのあたりが気になっている。
最後の点、優勝を狙うなら得点を、ということがあるかもしれませんが
返信削除今のセレッソの「相手を走らせない」プレー原則はJリーグではとても印象的なので
ロティーナの間はそこを追求してほしいなっていちファンとしては思います。
ロティーナがやめたらほぼ間違いなくそこは失われるでしょうし…
最後に書かれた内容は非常に気になります。
返信削除ご指摘の通りボールが行ったり来たりするオープンな展開の時間帯が増えているから失点が増えているのかと。
以前はやりすぎた時はイバンが指笛を吹いてゆっくりしたゲームに戻していたんですが最近はそれも見られなくなりました。
クローズな展開でゲームを推移させることがブレないロティーナのコンセプトなわけで、ここを曲げてしまったということは「もっとたくさん点が入る試合に」と選手やフロントがやりたがってるのかな?と邪推してしまいました。
フロントも選手もやりたがってはないと思いますよ。もしそうならもっと失点は増えてないとおかしいですし。
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