2021年5月7日金曜日

明治安田生命J1リーグ 第13節 vs. 名古屋グランパス プレビュー

 2021年5月8日 15時00分:豊田スタジアム

予想スタメン

引き分けに終わった大阪ダービーから中5日で迎える明治安田生命J1リーグ 第13節。セレッソ大阪は敵地豊田スタジアムで名古屋グランパスと対戦する。


■2021年の名古屋グランパス

昨季終了後に柿谷曜一朗と木本恭生というセレッソの顔的選手を獲得した名古屋グランパス。

2人ともその前年に引き続いての2年後しのオファーに答えた形だが、ロティーナ監督の退任と合わせてこの主力2人の移籍は今季のセレッソが大きく変化する決断を下したことを印象づけるものだった。

そして名古屋は彼ら2人に加え、川崎Fから齋藤学、浦和から長澤和輝、鳥栖から森下龍矢という各クラブの主力クラス獲得し、さらに金崎夢生も念願の完全移籍加入。昨季3位に滑り込んだチームは「さらに上を目指すぞ」という強い意思を感じさせる移籍マーケットとなった。


そんな名古屋の今季は開幕から好調で6連勝。開幕戦こそ福岡に1失点を喫したが、第2節以降は無失点を続け、第7節でFC東京戦、第8節に湘南戦はスコアレスドローに終わったものの9試合連続無失点という堅守ぶりを発揮。

第10節では注目のチームである鳥栖に1-2で今季初黒星を喫したが、翌第11節のG大阪戦では2-0で完勝。打倒川崎Fの一番手は自分たちであるということを証明する戦いぶりだった。


名古屋の布陣は4-2-3-1がベース。

GKにはランゲラク。

DFラインは右SBに宮原和也もしくは成瀬竣平。右CBは中谷進之介、もしくは木本恭生。左CBには丸山祐市。左SBには吉田豊。

2CHは稲垣祥と米本拓司の鉄壁の2人がファーストチョイスで、どちらかが欠けたときには長澤和輝。守備固めのときは木本恭生。

SHはマテウスと相馬勇紀がファーストチョイスでそこに前田直輝、齋藤学が加わる形。

トップ下は柿谷曜一朗がファーストチョイスで、ガブリエル・シャビエル、阿部浩之。

1トップには山崎凌吾、もしくは柿谷曜一朗が入る。


名古屋といえばなんといっても堅い守備だろう。

4-4のブロックをできるだけ維持しようとする。

ただし特徴的なのは稲垣と米本の2CHのプレーエリアがかなり広いこと。

通常4-4の守備ブロックを作る場合まずCHがどこを埋めるかを徹底し、CHはできるだけそのエリアからは動かさないというやり方を取るチームが多いが、名古屋の場合この2人が共にJリーグを代表するボールハンターでもあることからかかなり広いエリアを動いてボールを奪いに行く。

攻撃と守備とで全く逆ではあるが、トップ下の選手に自由を与えてボール保持では自由に動くことを認めるというやり方の守備バージョンというとイメージしやすいかもしれない。

ということでCHが広く動くが、一方で4-4のブロックをできるだけ維持する。ということはCHがボールハントに出ていった時にはそこをカバーする選手が必要となる。

その役割を担っているのがトップ下や1トップに入る選手。つまり柿谷や山崎である。

山崎は別としても一般的に柿谷には守備をしないイメージがある人も多い様だが、セレッソサポーターにとっては柿谷は役割さえ与えればもはや守備をしない選手ではないことを知っているはず。そもそも柿谷は2017年に左SHで山口蛍(当時C大阪)、青山敏弘(広島)に続くリーグ3番目のインターセプト数を記録している選手である。

もちろんボール保持での柿谷の特別なスキルを買っているという部分もあるだろうが、この様な守備面でのタスクから、山崎、柿谷が前線のファーストチョイスであり、ガブリエル・シャビエルや阿部浩之はその点でどうしても劣るという判断で出場試合数が伸びていないのだろう。

SBも含めたDFラインの対人の強さももちろんあるが、それを踏まえた上での4-4ブロックの維持と2CHのボールハント能力が名古屋の堅守のキーポイントとなっていることは間違いない。


一方でボール保持に関しては完全にカウンター型。スペースを得れば躍動するマテウスと相馬の突破力をベースにチャンスメイクをして中央の2人+後ろから飛び出してくる稲垣でフィニッシュという形になっている。

ただ、面白いのが木本を除くDFラインの4枚はすべて風間八宏監督時代からの主力選手であるということ。前線の選手のファーストチョイスには風間時代の主力選手はほとんど残っていないが、後ろはほぼそのままなのだ。

実はこれが今の名古屋を支える結構なポイントだと思っていて、この風間時代からのDFライン4人はプレス耐性が高い。つまり簡単にボールを失わない。なので2CBと2CHで相手の守備のファーストラインを越えることが出来、プレスを受けてもそのプレスを外すことが出来る。そして人数をかけてきてもSBが最終ラインに残ってボールを持てる。なのでSHを前に出せる。

そして相手の守備のファーストラインを外したところでSHを走らせるロングパス。これで一気に敵陣を攻略できてしまうのだ。


ただし、DFラインから時間とスペースを前線に届けるといったいわゆるパスを繋いでのビルドアップの形、ボール保持の形は無い。

なので相手がセットした守備に対してはマテウスや相馬のところで詰まってしまって攻めあぐねることも多い。そのあたりが得点数が伸びない要因だろう。


そして今年1月に書いた記事「セレッソ大阪 2020年シーズンレビュー Vol.4」で、木本の移籍について触れた中で「おそらくレギュラーポジションを掴むのではないか」と書いたが、現状レギュラーポジションを掴みきれていないのはおそらくこのプレス耐性の部分だろう。パスの能力は十分あるので仕込まれたビルドアップの中では遜色ないプレーを見せることができるだろうが、単純にプレス耐性という部分に関して言えば中谷に一日の長がある。


■川崎Fとの2連戦

そして現在の名古屋を考える上で触れておかなければいけないのは、直近に行われた川崎Fとの2連戦。0-4、2-3で連敗を喫してしまった試合である。

これで川崎Fとの勝ち点差は9に広がってしまい、打倒川崎Fの一番手を自認し本気で優勝を目指していた名古屋にとってはショッキングな連敗だったのではないだろうか。

最初に行われた4月29日の第22節。いわゆるファーストレグは普段どおりの形で入った。

しかし前半23分までで3失点。前半30分の段階で2枚替えをし戦い方の変更を余儀なくされた。

そして5月4日の第12節。いわゆるセカンドレグでは最初からファーストレグでの30分以降の形でスタート。

この試合では、昨季の対川崎F戦のプレビューでも書いた「川崎Fはパスサッカーのイメージがあるが、実はカウンタープレスのチームでビルドアップはそんなに上手くない」という姿をあぶり出すことに成功。試合は名古屋のペースで進んでいるかに思われた。

しかし31分にCKから失点すると結局59分の丸山のオウンゴールまでで3失点。

偶然ではなくラッキーでもない。勝つために真正面からぶつかり合うという土俵にあがるところまでは成功したが、昨季のセレッソ同様に今年から本気で優勝を目指したチームと、2017年からずっと本気で優勝を目指し続けているチームの差を見せつけられた。

名古屋は今後ボール保持も突き詰めていかなければならないのか、それとも2度や3度の少なく小さいチャンスでも得点できるスーパーな選手をチームに加えなければならないのか、という課題を突きつけられた格好となった。


ただし、セカンドレグでは3失点から2点を奪い返したところは光明。

川崎Fの戦い方に依る部分も大きかったが、試合終盤にまで可能性を残す試合はできた。

ただ、それは点差があったからでもあり、1点差になってからは川崎Fは確実に試合をクローズ。なので余力を残していたとも言える。


名古屋にとって辛いのは、現時点でJリーグには川崎Fと正面から対峙できそうな、というか対峙しようとしているチームが少ないこと。セレッソも含め名古屋を除く昨季の上位陣が軒並みそれどころではないところで戦ってしまっている。

それだけにこの連敗、勝ち点差9に広がるという結果は、今後のシーズンに影響を与えかねない結果だった。


■予想スタメン

名古屋グランパスの予想スタメンだが、前節はファーストレグを受けてのセカンドレグということで形を普段の4-2-3-1から4-3-3に変更。しかし今節は普段どおりの4-2-3-1に戻すのではないかと思われる。

またメンバーも、連敗を払拭する意味でも例えば前節の終盤に途中出場しチームを引っ張った森下や齋藤らを起用するという考え方もあるが、あえてこれまでベースとなる選手を引き続き起用するという考え方もある。どちらになってもおかしくないが、おそらく後者、入れ替えない方を選択するのではないかと思う。

また、前々節では先発出場した木本だが、セレッソの前線に高さのある選手がいないことを考えるとベンチスタートが濃厚だろう。


一方、セレッソ大阪の予想スタメンだが、前節の大阪ダービーで大久保嘉人が怪我で離脱。前日会見によると重いものではなかったという喜ばしい情報もあったが、とはいえ今節は間に合わない。となるとアダム・タガートか、加藤睦次樹を豊川雄太と並べるか。それとも清武をトップ下に入れて中島元彦を起用するか。というところ。

タガートのコンディションは前節を見る限りまだ時間が掛かりそうだが、コンディションを上げるためにあえて先発起用するという手もある。中盤の人数を考えると中島の起用も面白そうだがどうなるか。

CBに関しては前節のコンビ、ダンクレーとチアゴが引き続き起用されるだろう。


■プレビュー

試合としては、名古屋の戦い方も踏まえて無理せずブロックを作る形を優先させたい。

両SHのスペースを消すことができれば名古屋の脅威は半減する。

そしてボール保持では2CH、特に米本が出てくることで空けたスペースを上手く使いたい。

4-4-2なら清武が内に入ってくるのはもちろん右は坂元で広げて奥埜が入ってくること。そして中島を起用して4-2-3-1も良いのではないかと考える理由はここにある。

CHからSBを経由して上手く斜めのボールをいれることができればチャンスを作れるだろう。


あとは前節の川崎F戦セカンドレグでの最初の失点、CKからジェジエウが決めた場面は構造上の問題にも見えたので再現できる可能性がある。ダンクレー、チアゴの高さはチャンスかもしれない。


ちなみに名古屋が最も得点を奪われている選手は大久保嘉人(14得点)なのだが、おそらくこの試合には出られない。


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