スタジアム | 豊田スタジアム | 主審 | 山本 雄大 |
入場者数 | 4,898人 | 副審 | 大塚 晴弘、塚越 由貴 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 22.2℃ / 51% | 第4の審判員 | 川崎 秋仁 |
VAR | 岡部 拓人 | ||
AVAR | 田尻 智計 |
メンバー
名古屋
C大阪
- コーチ
- ブルーノ コンカ
- 監督
- レヴィー クルピ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
明治安田生命J1リーグ第13節、敵地豊田スタジアムでの名古屋グランパス対セレッソ大阪の一戦は1-0で敗戦。数多くのチャンスを作られたわけではないが、チャンスらしいチャンスは全く作れないまま、もはや名古屋の代名詞ともなっている「ウノゼロ」での敗戦となった。
■メンバー
名古屋グランパスのスターティングメンバーは前節から3人入れ替え。前田直輝、長澤和輝、成瀬竣平が外れて柿谷曜一朗、相馬勇紀、森下龍矢が起用された。また布陣も4-3-3から4-2-3-1に変わっている。とはいえこれは、前節・前々節が川崎Fとの2連戦だったから。特に前節は1戦目の完敗を受けて対川崎F用の戦い方を採用したからで、今節は変更というよりも元に戻したというニュアンスの方が強い。
その中でも唯一変更と言えるのが右SBに森下を起用したこと。これまでも途中出場はあったが、この試合が鳥栖から加入後初先発。それまで起用されてきた宮原和也や成瀬に比べると前への意欲が強い選手である。
また新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受けているマッシモ・フィッカデンティ監督は今節もベンチ外となり、ブルーノ・コンカコーチが引き続き指揮をとる。
一方のセレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から1人入れ替え。前節負傷交代となった大久保嘉人に代わって起用されたのは中島元彦。それに伴い布陣も普段の4-4-2から清武弘嗣がトップ下、中島がに入る4-2-3-1となった。
予想としては、前節大久保に代わって入ったアダム・タガート、また開幕から途中出場でプレータイムを伸ばしている加藤陸次樹が前線に入る形も考えられたが、前節のプレーを見る限りタガートは身体のキレ的にもコンディションはまだまだ。また加藤は途中出場でも豊川雄太と入れ替わることが多いように、クルピ監督の中ではおそらく同じポジションの選手という認識。そして前日会見で「次の試合で一番いいパフォーマンスを出せる選手を起用する」という発言をあえてしていることを踏まえると中島の起用は十分予想できるものだった。
また大久保、タガート、松本泰志がベンチ外となったことで西川潤が2試合ぶり、高木俊幸が7試合ぶり、松田力が3試合ぶりにベンチ入り。さらには体調不良で長らくチームから外れていた瀬古歩夢が7試合ぶりにメンバーに入った。
■チャンスを作りきれない両チーム
試合の立ち上がりはセレッソにとってまずまずのものだった。
ポイントになっていたのは2列目の3人のところ。おそらく名古屋としてはセレッソの2CHを自由にさせないという狙いを持っていたのだろう。稲垣、米本の2CHで藤田、奥埜の2CHを牽制するような形で試合に入った。
しかしこの試合のセレッソは4-4-2ではなく4-2-3-1。しかも右SHの坂元は外よりのポジションを取ることが多いが、中島は少し内より。その中でトップ下には清武がおり、清武が名古屋の2CHの間を除くようなポジションをとるので、その清武を誰が見るのかが中途半端になる。
象徴的だったのが開始早々2分のダンクレーから清武への名古屋の2CHの間を通したパスだろう。
もちろん名古屋は守備意識が高いのでプレスバックが早く、その時も相馬がプレスバックすることでセレッソの攻撃が一気に加速することはなかったが、名古屋にとっては的を絞りきれない形になる。
15分に中島が左足のミドルで狙った形もこの名古屋のCHの裏にいる清武、坂元、中島が起点だった。
そしてもう1つ、立ち上がりの名古屋はボールを奪い返すと自陣でボールを繋ぎながら時間を作り山﨑へのロングボールで前進させようとする形を多用。これは名古屋の定番の形でもあるのだが、この試合ではロングボールで山﨑がダンクレーとチアゴにほぼ勝てなかった。もしかしたらセカンドボール要員として柿谷や2CHを計算していたかもしれないが、そもそもセカンドボール勝負にまで持ち込むことができる回数自体も少なかった。
セレッソがあまり前線からプレッシングを仕掛けてこないことを受けて、CHの1人を最終ラインに下げて3バック化。そしてこの3人でボールを動かしながら2トップの脇からボールを運ぶ形に。
具体的には最終ラインの3人でパスを繋ぐことで2トップを動かし左の丸山の前を空ける。
そして丸山がドリブルでボールを持ち出す動きを見せながら、左の大外レーンをメインに時折内側のレーンに入った相馬へ縦パスを入れるという形になった。
名古屋は今季のボール支配率が49.4%とそれほどボール保持の時間は長くないチームなのだが、前半のボール支配率で54%を記録することになったのはこうして後ろでボールをもつ形を作ったことにある。
ただ、ここまでの名古屋の試合を見てもそうだったように、ここから先はどうしても個人任せのアドリブ要素が強いのでセレッソの守備を崩すところまでは至らない。それを象徴するように、SBとSH、SHとトップ下が同じレーンで重なっていることも多かった。
8分にハーフスペースに入り込んだ柿谷のクロスに米本が飛び込んだ場面や、26分にも同じく柿谷がハーフスペースに入りクロスを入れる場面があったように、当然ながら名古屋の選手もここがチャンスになりやすいことは知っている。ハーフスペースを攻略しようとするのは何もポジショナルプレーの専売特許でもない。
しかしポジショナルプレーの考え方ではそれをチーム全員の共通認識とするためにわざわざピッチを5つのレーンでわけ、そのレーンに名前をつけ、誰がどこに立ち、どんな役割を担うのかを整理する。つまり体系化したもの。それをチームのガイドラインとして持っているということである。
しかし名古屋のボール保持には3バック化からの丸山の縦パスというビルドアップの部分こそガイドラインは見えるものの、そこから先にはガイドラインがあるようには感じないので、時々可能性の感じる形は見られるものの再現性は低く、アドリブ要素の強いものとなっていた。
続いて名古屋は、先に書いた15分の中島の左足ミドルの後あたりからボール非保持での振る舞いも変える。
CHの背後で漂う清武をどうにかしたかったのだろう。セレッソが藤田を最終ラインに落として3バック化すると、名古屋はCHをそれまでの横並びから奥埜を米本が、清武を稲垣が捕まえるという人を捕まえる形に変えた。
そしてこれにより名古屋は徐々に中盤でボールを引っ掛ける回数が増えるようになっていった。
中盤で引っ掛けることができれば名古屋にとってはカウンターのチャンスが生まれる。特にセレッソは左SHが内側に入る分左SBは自然とポジションが高くなる。となるとその左SBの背後を狙えるというこということである。そしてそこを狙えるのは名古屋のストロングポイントである右SHのマテウス。ボール保持のガイドラインがあまり見えない中でもこれだけの勝ち点を重ねているのはこの形でマテウスや相馬のSHが躍動できるからである。
がしかし、この試合ではそのマテウスが丸橋の裏を突いてもチアゴがスライドして対応し1対1を徹底的に止めてみせた。マテウスはこの試合で8回ドリブルしているが成功は0。なので当然ドリブル突破も0。また逆サイドを狙っても相馬もダンクレーを突破できず相馬のドリブル突破数も0。マテウスはシュート2本を記録したが、頼みのSHのドリブルがこれだけ止められるとなかなか厳しい。
それを象徴するのが20分の豊川のシュートの場面。この場面はダンクレーがドリブルで持ち出し、そこから一発でDFラインの背後を狙う豊川へのパスを出すのだが、藤田が最終ラインに下がってボールを動かすことで2トップを動かしダンクレーの前を空けると、CHは奥埜と清武に付き、左SHの相馬は松田陸に付いているのでダンクレーの前は空白状態。なので余裕を持って豊川へ縦パスを出すことができたのである。
ただ先ほど名古屋について書いたが、セレッソはそれ以上にアドリブ志向は強い。なので攻撃はどうしても再現性に乏しく単発。
清武と奥埜を捕まえられる形に対しても、中島、清武、坂元が流動的にポジションを入れ替えて解決しようとするもなかなかチャンスにまでは至らないという時間が続いた。
中島には「筋肉系の違和感」があったとのこと。モモ裏を押さえていたのでハムストリングを痛めた可能性が高い。
中島に代わって高木が入ったことで2列目3人の関係が変化することになり、直後には高木のクロスのこぼれ球から最後ダンクレーが狙う場面を作るも、前半はそのまま0-0で終了。
名古屋のシュート3本に対してセレッソは5本と若干セレッソの方が多いが、どちらもチャンスらしいチャンスは作りきれていないという前半。
そしてCKも前半だけで3本獲得し、左から丸橋が蹴っていた様にアウトスイングのボールでファーサイドでダンクレーとチアゴを並べるという形をみせていたが不発に終わった。
■停滞するセレッソと齋藤学
後半立ち上がりにはセットプレーからの流れで坂元がシュートを狙い、そのこぼれ球を拾った松田陸のクロスから最後は高木が狙うという形を作ったが、セレッソは徐々に「浮いている選手」が作れなくなっていっていた。
その結果、坂元、清武、高木のポジションが固定されることになり、名古屋は誰が誰を捕まえるかはっきりできるようになったのだろう。前半途中からの稲垣が清武を捕まえ、米本が奥埜を捕まえるという形に加え、サイドでは坂元を吉田が、高木を森下が捕まえる形になる。またCHの片方をトップ下の清武に当てている分空いている藤田には前線からのプレスバックで山﨑や柿谷が戻ってくるのでセレッソはCBのところ以外で時間をもらえなくなっていたのだ。
そしてその分、清武や坂元もなかなかいい形でボールを持てなくなった。高木が試合後のコメントで「相手がかなりマンツーマンでプレスにきた」と話しているのはこういった状況からである。
また坂元は昨季も吉田にはかなり苦労させられたのだが、吉田は相手を捕まえる時の距離がかなり近い。
これは自分のアジリティに自信があるからこそできることなのだろうが、距離を詰めてガッツリ身体を当ててくるので坂元はなかなか自分のリズムでプレーさせてもらえなかった。このあたりが吉田の対人の強さの秘訣なのだろう。
そして清武も中央では稲垣に捕まってしまうので左に流れてプレーすることが多くなっていくのだが、そうなると豊川が孤立する。
ということで、後半に入るとセレッソの攻撃はより停滞傾向が強まっていく。
早めの交代だが、名古屋は武器であるSHで優位性を作れていなかったのでこの決断に至ったのだろう。マテウスは一発があるのでどちらを下げるかとなるとやはり相馬となる。
そして齋藤投入後、名古屋の攻撃は活性化する。
相馬は左サイドの大外を基本に時々インサイドレーンにも入ってくるというポジショニングでプレーしていたが、齋藤はもっとプレーエリアが広い。中央にも頻繁に顔を出すし逆サイドに出て行くこともある。去年までプレーしていたから当然といえば当然だがちょっと川崎Fっぽい。
そして前節川崎F戦の終盤でも感じたが、アドリブ感もおそらく柿谷と合う部分もあるんじゃないかと思う。
相馬は柿谷とレーン被りを起こすことが多かったが、齋藤とは比較的スムーズにプレーできていた。この2人は子供の頃から代表で共にプレーしていたからなのかは知らないが。
62分セレッソが清武のCKからの流れで高木のクロスを大外で豊川が折り返すという形でランゲラクを完全に振ることに成功するも、ダンクレーの前で中谷がクリアしチャンスを逸すると、65分に名古屋がゴールネットを揺らす。
きっかけとなったのは森下のクロスをブロックしたボールを拾った高木のパスミスから。
このボールを吉田が拾うと中央の齋藤に。齋藤は中央の柿谷にパスを出すとそのボールをチアゴが左足のヒールで掻き出す。
しかしこのボールが最初に齋藤に出した時にワンツーを狙って最終ラインの裏にまで行っていた吉田へのちょうどパスになってしまい、最終ラインの裏でフリーの吉田が流し込んでゴール。
吉田のポジションは紛れもなくオフサイドポジションだったが、ここにボールを出したのはチアゴ、つまりセレッソの選手だったので当然オフサイドはなし。セレッソにとってはアンラッキーな形だったが、痛い痛い失点を喫してしまう。
■活性化しない交代策
清武が稲垣に捕まっていたのでということなのだろう。
しかし人が代わっても捕まる状態は同じなので状況は改善されなかった。
そして86分にセレッソは藤田に代えて松田力を投入。西川をCHに下げて松田力は加藤との2トップに。同時に名古屋も柿谷に代えて前田直輝を投入。こちらはそのままのポジションに入る。
マテウスはチアゴを嫌がってか齋藤と頻繁にサイドを入れ替え、最後はそのまま左でプレーし続けていたのでSHの左右を入れ替えている。
失点以降もセレッソにチャンスらしいチャンスはないまま、名古屋が落ち着いて試合を進め1-0で試合終了。
いいところなく敗戦となった。
■その他
「日本に来てから、なかなかここまで悔しい思いをする負け方はなかったかなと思う。」とクルピ監督が振り返った様に、低調なまま進んだ90分だった。
失点シーンはセレッソにとってアンラッキーな部分もあったように、名古屋もSHは封じられ、前への勢いを期待されただろう森下もそもそも前で蓋をされているしサイドの奥まで入っていくことができた回数は少なくクロスは3本のみ。チームとしてチャンスを作ることができていたわけではないので試合内容的には0-0でもおかしくはないものではあった。
ただ、そんな中でも名古屋は齋藤の投入をきっかけに1点を奪おうというアクションを起こし試合の流れを動かしたが、セレッソはそれすらもできなかったので完敗といってもいいだろう。
クルピ監督はさらに「自分ももう一回振り返って、彼らの良さを引き出していくことを考えないといけない」と話しているが、4月以降で勝利したのはワンチャンスをものにした鳥栖戦、浦和戦の2試合のみ。2勝2分3敗。複数得点も相手が退場者を出した福岡戦のみ。何か変化に手をつける段階なのかもしれない。
今季は思いのほか早くから結果が出たためかなり早い段階からメンバーが固定された。メンバー固定して戦うことにはもちろんメリットがある。特にクルピ監督が志向するような現場の調整力に委ねる形だと、同じメンバーで試合を重ねることで新しいものが生まれることにもつながっていきやすい。
がしかし、3月末以降は離脱者が続出。そのメンバー固定もできなくなった。
そして4月以降は、なんとか離脱者が出たポジションに代わりの選手を当てはめ、現場の調整力で解決しようとしてきたが、そもそも明確なガイドラインがないので同じ戦い方を続けることもできず、かといってチームの戦い方が変わるという相互作用もなく、単純にスケールダウンするのみ。現時点ではそんな状態に陥ってしまっている。
以前にも書いたと思うが、クルピ監督のチームはシーズン途中に必ずこういった状況が出てくる。
ここをどう乗り越えるか。今季の大きなポイントと言えそうだ。
なんか名古屋グランパスを分析する記事になってますね笑
返信削除多分しっかりやりたいことが見える名古屋を解析する方が、何やりたいか分からない今のセレッソより楽しいでしょうしね。