スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 上田 益也 |
入場者数 | 副審 | 唐紙 学志、田中 利幸 | |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 26.4℃ / 44% | 第4の審判員 | 野田 祐樹 |
VAR | 松尾 一 | ||
AVAR | 野村 修 |
メンバー
C大阪
広島
- 監督
- レヴィー クルピ
- 監督
- 城福 浩
<監督コメント>
<選手コメント>
明治安田生命J1リーグ第15節、本拠地ヤンマースタジアム長居で行われたセレッソ大阪対サンフレッチェ広島の一戦は1-2で敗戦。ヨドコウ桜スタジアムの改装が終了し、次節以降のホームゲームは原則ヨドコウ桜スタジアムでの開催となるため、この試合がヤンマースタジアム長居での最終戦だったが、結果を残すことはできなかった。
■メンバー
セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から2人入れ替え。豊川雄太に代わり高木俊幸、丸橋祐介に代わって新井直人が起用された。
それに伴い布陣も4-4-2から4-2-3-1に変更。1トップには広島ユース出身である意味古巣対決となる加藤陸次樹が入り、トップ下に清武弘嗣。左SHに高木が入る。
また新井は4月6日の第8節横浜FM戦以来2度目の先発。この時は丸橋が濃厚接触者疑いということでメンバー外となったことによる先発入りだったが、今節は丸橋をベンチに置いての先発ということで期待がかかる。またベンチには原川力が3月21日の第6節湘南戦以来の復帰となった。
一方のサンフレッチェ広島のスターティングメンバーは、前節から5人入れ替え。永井龍、エゼキエウ、茶島雄介、今津佑太、東俊希が外れ、ジュニール・サントス、柏好文、藤井智也、青山敏弘、荒木隼人が入っている。5人ものメンバーが入れ替わったことになっているが、これは前節が中2日でのリーグ戦だった影響もあるだろう。またミッドウィークのルヴァンカップ仙台戦でのスターティングメンバーと比較すると11人全員が入れ替わっていることとなる。
そして布陣が4-4-2から3-4-2-1に変更。今季は開幕から4バックで戦ってきていたが、ここ最近は結果ももちろんながら内容的にも苦しいものになっていたので昨季までの3バックに戻してきた形である。
■広島のボール保持
前半を通してアタッキングサードやペナルティエリア付近までボールを運ぶことが多かったのは広島だっただろう。
試合開始後しばらくはセレッソも今節から変えてきたこの広島の布陣を把握しきれていなかったのか、簡単にサイドでWBに1対1を仕掛けられる場面も目立っていた。
とはいえ、17分の柏の突破の様にここで1対1で抜き切れればもちろんチャンスにはなるものの、セレッソがブロックを下げポゼッションフェイズに入ると攻め手がなくなる。単純なクロスであればチアゴとダンクレーに跳ね返されるし、おそらくボール保持攻撃は各自の役割が明確になっているというよりもアドリブ要素が強いので、外国籍で言葉が通じずさらに今季新加入のジュニール・サントスは迷子になりがち。なのでどうしても下がってきてしまい結局何も起こらないという展開が多かった。
■セレッソのボール保持
一方セレッソのボール保持だが、豊川から高木、丸橋から新井と選手が入れ替わった左サイドではその影響が見える部分もあった。
尹晶煥監督の時から高木を左SHで起用した時に問題となっていたのは、高木と丸橋は使いたいスペースが重なってしまう事。
高木は左サイドの大外レーンでプレーしたがるので後ろから上がってくる丸橋の前を塞いでしまうことが多かった。当時のセレッソのサッカーにはレーンという概念があまりなかったからでもある。そして今季もここまで何度か丸橋と高木が同じサイドでプレーしてきたが、丸橋が内側に入っていくこともあったが、基本的には同じ問題が出ていた。
しかしこの日は左SBに右利きの新井を起用。前回先発した横浜FM戦でもそうだったが新井は左SBもできるが本来は右サイドでのプレーが得意な選手なのだろう。ボールの持ち方は利き足の前である右足の前に置こうとする。なので左サイドでプレーした時に内側には入って行きやすい。ということで左の大外にポジションを取る高木と内側に入っていく新井という形で自然と棲み分けができるようになっていた。
そして新井が内側に入ることで、ボールを引き出すためにそこに下がっていた清武が下がる必要がなくなった。
比較的左サイドでスムーズにボールを持てる時間があったのはこの影響だろう。
ただこれでボール保持が機能していたかといえばそうではない。
特に広島はこの試合で5バックに戻して従来の人への意識が強い守備、人に食いつく守備をしても人数が余るようになった。そして中央に並ぶ3人のCBの壁は高くペナルティエリア内にボールを入れても跳ね返される場面が多く、前半で6本のシュートは記録しているもののそのほとんどがペナルティエリアの外からのミドルシュートだった。
そしてさらに影響を受けたのが右サイド。結局人数でしか解決していないのでボールを持つことができていたのは、藤田、新井、高木、清武と人数を揃えることができる左サイドだけ。となると右サイドで坂元は常に藤井の監視を受けている状態で、さらには佐々木もすぐにサポートにいくことができる。名古屋戦の状態と同じように坂元のところに時間とスペースを届けることができていないのでセレッソの武器であるはずの坂元があまり機能していない状態。サイドチェンジから坂元が内側に藤井を引っ張って大外に松田陸を上げてくるのが精一杯。しかし大外からのクロスは広島の3CBに跳ね返されるという状態だった。
■可能性があったのはカウンター
そんな両チームで共に可能性があったのはカウンターだった。
チャンスになったというか、チャンスになりそうだったものとしては、セレッソ1分の奥埜のシュートや、26分の加藤のシュート、広島の14分と38分のジュニール・サントスが抜け出した場面など。しかしそれ以外にも両チーム共にカウンターの形で一気にボールが動く場面も多かった。
ボール保持では他の選手同士の関係に入っていけずに迷子になってしまう広島のジュニール・サントスだが、カウンターの局面であれば仕事がハッキリする。なのでボール保持ではよくわからないプレーが多かったが、カウンターの場面では持ち味であるスピードと推進力に可能性を感じさせた。
ただ、セレッソにはチアゴとダンクレー、広島には野上、荒木、佐々木と、両チーム共に最終ラインには対人に強いDFが揃っている。ということで両チーム共に決定機までは至らない。ちなみに38分のジュニール・サントスが抜け出してシュートがポストに当たった場面は、中継では決定機を逃した様に伝えられていたが、オフサイドディレイで遅れてオフサイドの判定が下されているのでセレッソの間接FKから試合が再開されている。
しかし、そんなカウンターの場面で気になったのは両チーム共にボールの失い方があまりにも不用意だったことである。
象徴的なのが広島の14分のジュニール・サントスが抜け出した場面、そしてセレッソの26分の加藤が抜け出した場面だろう。
14分の場面であればセレッソの、26分の場面であれば広島の、それぞれのボールの失い方と失った時のポジショニングがお粗末だった。
どちらも書くと長くなってしまうので、取り上げるのは14分の場面。
この場面では広島の最終ラインでのボール保持に、加藤が荒木にアプローチをかけ、荒木のミスから高木がボールを回収。セレッソが高い位置でボールを奪い返したところから始まっている。
ボールを奪い返した高木はドリブルでそのままゴール方向に進むも、野上と青山が戻って対応。そして広島は多くの選手が戻り、セレッソもカウンターのチャンスとばかりに前に人数をかける。その結果高木はマイナス方向にドリブルの方向を変え、中央の藤田にマイナスのパス。このパスをミドルで狙うも川辺に当たりそのこぼれ球が浅野に。
するとここから一気にカウンターに持っていかれ、広島の浅野、川辺、ジュニール・サントス、森島の4人に対して、セレッソはチアゴとダンクレーのCB2人と懸命に戻る松田という4対3の状況を作られた。
セレッソとしてはあまりにもボールの失い方が悪い。そしてボールを失った時のポジショニングがめちゃくちゃだった。
ちなみに26分の場面も高木が浅野からボールを奪い返したところから始まっているが、柏、野上が上がったところで浅野がボールを奪われているので最終ラインでは加藤と荒木が1対1。佐々木が懸命に戻ったことで加藤はシュートを選択したが、広島のボールの失い方。ボールを失った時のポジショニングがめちゃくちゃだった。
あと少し話しはそれるが、44分に坂元が森島に行ったファールに対して主審から注意を受けた場面。この時にベンチから城福監督が「頑張ったらイエローじゃなくて倒れたらイエローはおかしいでしょ」と抗議というか野次を飛ばしているが、現在のルールでは相手の大きなチャンスとなる攻撃をファールで止めるSPA(Stopping A Promising Attack)でイエローカード該当のプレーでもそのままチャンスが続くということでアドバンテージを適用しプレーを続けさせた場合は、カードの色は一段階下がる。つまりノーカードになると決まっている。
これは決定機阻止にあたるDOGSOでアドバンテージが適用された場合にレッドカードからイエローカードに一段階下がるというルールがあり、そのルールとの整合性を取るためにSPAの場合も一段階下げましょうということでそのようになっている。
そもそもアドバンテージが適用されるということは、DOGSOで言うところの決定機を阻止できていない、SPAで言えば大きなチャンスとなる攻撃を止めることができていないからと考えるとわかりやすい。
なのでルール上は主審のこの判断には全く問題がなく、残念ながら城福監督の言葉は抗議ではなく野次に過ぎない。
もしかするとこのルールに対して抗議したいということで言っているのかもしれないが、そうであったとしてもここで言われても主審も迷惑だろう。
■試合が動いた15分間
すると後半開始早々のCKでこぼれ球を奥埜が押し込んでゴール。47分にセレッソが先制する。
後半はセレッソボールのキックオフからということでセレッソがロングボールを蹴り込む形で始まったが、そのセカンドボールを奥埜が回収。そして左に展開して高木がクロスを入れようとしたプレーで、セレッソはこの試合初めてのCKを獲得した。
そして広島のCKの守備はマンツーマン。ということでGKの前に立った奥埜には川辺がマーク。そして清武のCKはニアのGK前へのボールだったが、GKの大迫は前に奥埜だけでなく味方の川辺もいたので弾き返すことができなかった。
時々CKの守備はゾーンとマンツーマンとどちらが良いのか?と言う議論があるが、答えとしては一長一短でしかない。
この場面は相手のポジションによって味方のポジションも決まってしまうというマンツーマンの弱点が出たシーンでもあった。
しかしこの得点からの再開後すぐ、FKが2つ続いた後のCK。森島のキックをニアで野上がフリックしファーサイドでジュニール・サントスが詰めてゴール。50分に広島が同点に追いつく。
セレッソのCKの守備はゾーン。ゾーンの場合はボールが基準となるため最初のキックに対して多くの人数がアクションを起こすのでフリックされるとファーサイドでフリーになりやすい。そしてこの場面ではストーンの新井を越えてゾーンの最もニア側に立つ瀬古に対して広島は浅野と野上の2人を当ててきて瀬古の前で野上がフリックに成功。つまり今度はゾーンの弱点が出たシーンだった。
ここまでキックオフからの展開でそのままゴールにつながったと言う形が続いていたのでよくわからなかったが、この両チーム1点ずつの後ようやく試合が落ち着き後半の狙いが見える様になる。
セレッソは守備のスタート位置を前にしプレッシングに行く様になり、広島を押し込む様になる。
広島の5-4-1を動かすだとかという動きは見えないが、圧力をかけることで押し込みそれが54分の坂元のシュートにつながっていた。
しかし相変わらずボールを失った時、ネガティブトランジションの設計は怪しいまま。
何とか瀬古が対応したが、56分に藤井にカウンターを受けた様に押し込むのは良いがバランスを崩しておりボールを失った時にカウンターの餌食になりかねない状態が続く。そして行ったり来たりの展開が増え始めていた。
そんな中で清武が個人技からチャンスを作りかけFKを獲得。
このFKを高木が直接狙うがブロックされる。しかしそのこぼれ球を拾った新井が松田に展開し松田のクロスを瀬古がシュート。しかしこのシュートは荒木の腕か背中かに当たって跳ね返される。そのこぼれ球を拾った坂元のシュートは佐々木がブロック。
そしてそのこぼれ球を拾った清武の右サイドへのパスを川辺にブロックされるとボールロスト。
ここからカウンターを受けることとなり、ボールを拾ったジュニール・サントスがダンクレーのファールをものともせずに突進。
最後は抜け出した浅野へスルーパスを出し、それを浅野が決めて59分に広島が逆転に成功する。
もちろんここからVARチェック。
このチェックは7分間にも及ぶ長いものとなったが、最大のポイントは瀬古のシュートを荒木が止めた場面がハンドかどうかというものだったのだろう。
映像を見る限りははっきりとはわからない。腕にも見えるし背中にも見える。その場合主審の判断に委ねられるのでここではノーハンドという判定になったのだろう。かなり怪しいとは思うが。
そしてこの場面では坂元のシュートをブロックした佐々木のプレーはもちろん、最後の浅野の抜け出しもオフサイドかどうかという部分もVARではチェックしているが、それも問題なし。ということでゴールが認められた。
ただ、この場面で見逃してはいけないのは、ここまでも書いたネガトラの設計の問題である。
まず最初のFKは比較的長距離からだった。なのでCB2枚をゴール前にあげている。そもそもこの状況でロングシュートを打つ意味がわからない。
そして跳ね返ってきたボールに対して後ろに残っていた新井が拾って、新井の前にいた松田が右に出てクロスを上げた。
そして坂元のシュートのこぼれ球を清武が拾った時に新井が右サイドへ。
ということはこの時清武がセレッソの一番後ろの選手だった。これはちょっとあり得ない。
なので川辺にボールを奪われた時、この時清武は川辺に対してアプローチに行かなかったので少し空白の時間が生まれているのだが、これは当然。ここで清武が行ってしまえばもう一発でゴール前まで持っていかれてしまうからである。
しかしここで少し遅らせることには成功したものの、ジュニール・サントスの突破で結局はカウンターを浴びることに。
この場面は判定云々もあるが、あまりにも色々な事が重なっていた。
■攻めきれないセレッソ
これでCHには原川と藤田。左SHに清武。奥埜と豊川が前線で並ぶ4-4-2に。原川は負傷した3月21日の第6節、湘南戦以来の復帰となる。
ここからビハインドのセレッソがさらに押し込む場面が続くのだがなかなかチャンスには結びつかない。
チャンスに結び付かなくなったのは前半にはボールを保持できていた左サイドでボールを持てなくなったからで、左SHに清武、左SBに新井という形になったことで清武が内側に入り、新井が大外レーンにという関係になる。
しかし新井は左の大外で縦にという形があまりないので、その分広島は5人の最終ライン全体をセレッソの右サイドに寄せることができる。
結局新井は内側に入りたいので、大外でフリーになっていてもある程度離しても間に合うという判断ができるからだ。
なので坂元がプレーするスペースを消されてしまうという形になっていた。
その後広島は72分に藤井に代えて東俊希を、79分には柏と浅野に代えて茶島雄介と鮎川峻を、さらに86分にはジュニール・サントスに代えてハイネルをとプレビューでも紹介した3-4-2-1の時に負担がかかる1トップ2シャドゥと両WBの5人のうち4人を交代。
セレッソも82分に新井と藤田に代えて丸橋祐介、西川潤を投入し、奥埜と原川の2CH、西川と豊川の2トップという形に変更。
しかしリスクをかけずに入れ替えた前線とWBを守備に走らせることで逃げ切りに成功。
攻め込んだ66分以降、セレッソは圧倒的に押し込むも打ったシュートはわずか3本。広島も森島のループで狙ったロングシュート1本のみという潰しあいのような展開で試合終了となった。
■その他
この試合も、ここ最近ずっと続いている試合と変わらず低調なものだった。
そもそもボールを運べないし、相手を動かすこともできない。
そして前がかりになってカウンターを受けるということを繰り返している。
広島も決して良い内容には見えなかったが、カウンターのチャンスを決めた分勝利したという試合だった。
ただ、そういう意味ではこれまでの4バックではなく、3バック・守備時は5バックにした成果が出たと言えるだろう。
そして試合後のコメントで奥埜が「チーム全体として、どう崩していくかという共通意識を高めていかないといけない」と語っているが、ちょうど同じようなことを大阪ダービーの後、G大阪の矢島が話していたことを思い出した。
こういう試合だと、誰のプレーが良かったか、誰のプレーがダメだったかという部分が話題になりかねないが、正直なところ今の状態ではチームとしての良い悪いの基準がないのでその判断もできない。戦術的なエラーなのか、ヒューマンエラーなのか。チームとしての判断基準がないのでミスに見えるプレーもなぜそうなったのかが判断できないのだ。
前節も試合後のインタビューで思わぬ反応を見せ、この試合でも試合後のコメントで「攻撃がうまく機能していない理由、その全ての責任は私にあります」と語っているように、現状にはかなり応えている様子。
選手の入れ替えを示唆するコメントも出しているが、おそらく直接的な原因はそこではない。しかしそれをきっかけに上手く改善できることもあるので、それを願うというのが現状だろうか。
去年までのサッカーとのギャップや、今のJリーグのサッカーを考えると開幕前からこうなる可能性も考えられたが、開幕直後にはラッキーな面もあって結果を残せていただけに、思ったよりも早く厳しい状況がやってきたなという印象である。
おつかれさまです。
返信削除崩され方や失い方を見ていると去年までではちょっとあり得ないような形が多すぎますね。
攻撃に関しても1試合あたり得点1.312と去年のロティーナセレッソよりも0.04近く下がっていてとても攻撃サッカーとは言えない状況。
コロナもまた出たようですが、万が一クラスターが発生して活動ができないようなことがあればシーズン途中なだけにガンバより状況は悪くなるでしょうね。
シーズンオフより長いオフがシーズン真っ只中に来るようなものでそうなればコンディションを上げるにも1ヶ月はかかるでしょうし。