スタジアム | 県立カシマサッカースタジアム | 主審 | 池内 明彦 |
入場者数 | 5,977人 | 副審 | 五十嵐 泰之、桜井 大介 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 19.9℃ / 48% | 第4の審判員 | 阿部 将茂 |
VAR | 佐藤 隆治 | ||
AVAR | 柿沼 亨 |
メンバー
鹿島
C大阪
- 監督
- 相馬 直樹
- 監督
- レヴィー クルピ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
前節から中2日で迎える明治安田生命J1リーグ第16節、敵地県立カシマサッカースタジアムでの鹿島アントラーズ対セレッソ大阪の一戦は0-1で敗戦。これで未勝利期間が5試合にのび、4月以降は2勝3分5敗。今季の成績としても6勝4分7敗となり、負けが先行する形となった。
■メンバー
鹿島アントラーズのスターティングメンバーは前節から3人入れ替え。松村優太、三竿健斗、広瀬陸斗が外れ、常本佳吾、ディエゴ・ピトゥカ、小泉慶を起用。怪我人が多く出ている影響もあるのだろうが、中3日の次節が川崎F戦だということを考えると予想よりも少ない入れ替えとなったが、プレビューでの予想通り小泉をトップ下に起用する布陣を採用してきた。
ちなみに右SBの常本は昨季は特別強化指定選手として既にプレーしていたが、今季明治大学から加入した大卒ルーキー。横浜FMの下部組織出身で、ジュニアユース時代は西川潤の兄、西川公基選手と同じ学年のチームメイトだったからか試合後には西川と会話している姿が見られた。
一方、セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から3人入れ替え。外れたのは高木俊幸、新井直人、チアゴで、原川力、丸橋祐介、瀬古歩夢を起用。これで奥埜博亮、藤田直之、原川とこれまでCHで起用されてきた選手3人が同時にピッチに立つことになる。ただし彼ら3人は3CHではなく奥埜はFWでの起用。今季は一貫してCHで起用されてきたが、前節の原川投入後から西川投入までの16分間で久々のFW起用されており、今節はスタートからFWということになった。
一昨季、ロティーナ監督の下で突然始まった奥埜のFW起用は守備面を強化するためといったニュアンスで語られることも多いが、それ以上に効果的なのが豊富な運動量を活かして前線で背後やスペースに出て行く動きを繰り返すことができること。この動きによって相手のDFラインを押し下げたり、2列目の選手がプレーできるスペースを作ることができる。当時はそれまで柿谷曜一朗や高木俊幸がFWで起用されており、奥埜は彼らに比べるとスピードは劣るが動きの質は高い。ここを見込まれてのFW起用だった。
奥埜がFWに入ったことで、プレビューでは先発も予想したアダム・タガートはベンチスタート。また負傷離脱していた大久保嘉人もベンチに復帰。そして控えGKにはダン・バン・ラムが加入後初めてベンチに入った。
■ボールを持たせる判断
両チームともに立ち上がりに見せたのは前線からのプレッシング。そしてそれを受けるCB陣は相手の最終ラインの背後に長いボールを蹴るという姿。立ち上がりなのでリスクをかけずにシンプルに、はっきりとした選択をしているということだろう。
しかし徐々に鹿島がボール保持する展開になっていく。
今季のセレッソはボール非保持で4-4-2の陣形をとっているが、後ろが消して欲しい場所を2トップが消しきれず、 2トップと2列目以降の4-4が連動しない場面が時々起こる。
そしてそれは特に2トップがプレッシングに行った時に起こりやすく、そうなるとCHの前がどうしても空いてしまう。
さらにここに奥埜もサポートにくる。
となるとボールを奪った時に前線に加藤が1人残るのみ。1人だと流石になかなかボールを収めきれず、鹿島がセカンドボールを回収し、再びボールを保持するという場面が増えていたからである。
ただ、鹿島はこのセレッソのブロックを崩すボール保持を見せることはできなかった。
鹿島は5月に入ってからは前節の鳥栖戦こそ1得点だったが、前々節の横浜FM戦では5得点を記録しているようにそれまでの4試合で13得点と爆発的な得点力を見せている。この4試合で得点になった場面、もしくは決定機となった場面のほとんどがカウンターかセットプレー。つまりボール保持からの攻撃という形ではあまりチャンスを作れておらず、前向きに守備をしたそのままの勢いでゴールに迫るという形を得意としていた。
なのでこの試合のようにセレッソにブロックを作られてしまうとどうしても攻めあぐねてしまう。ブロックを動かすような形はなく、サイドの大外からクロスを上げるぐらい。しかし単純なクロスではセレッソのCBダンクレーと瀬古に対して、土居と小泉という前線では流石に分が悪い。
シュートも強引なものが多く、可能性があったのはセットプレーぐらいだったので、鹿島の選手にしても攻めあぐねている、ボールを持たされているという感覚はあったのではないだろうか。
一方でセレッソの攻撃、ボール保持に関しては、基本線は立ち上がり同様にDFラインの背後に2トップを走らせるロングボール。これが一番手っ取り早い。ただ、これ一本だと流石に厳しいのでそれを合わせてねらっているのが清武にボールを預けること。
清武がこの時間を作ることができればセレッソはボール保持のフェイズに入ることができる。
しかし、清武といえども毎回時間を作るのは流石に結構厳しい。
ということボールを失ってしまう回数も多く、それが試合後の監督会見での「清武弘嗣選手ですが、本来の出来ではないような、精彩を書いたプレーも見られたが…」という質問につながったのだと思うが、これだけ厳しい役割を担ってた中では、個人的にはよくやっていた方だと思う。
DAZN中継のハーフタイムで紹介されたセレッソのアタッキングサイドで左サイドが72%という異常なほど偏った値が出されていたのは、セレッソのボール保持がこういう作りになっていたからである。(左SBの永戸が高い位置をとるからではない)
こういった攻防が繰り広げられた結果、前半は0-0で折り返すこととなるのだが、個人的には悪くない前半だったと感じていた。
セレッソとしては無理にボールを持ってカウンターを受ける場面は避けたい。特に鹿島はプレッシングが強烈なのでできるだけリスクを下げたい。そしてブロックを作った守備は安定している。
攻撃に関しては清武に負担はかかっているが、90分の何処かでここからカウンターを狙えれば最高だし、原川が絡んでボールを持ち逆サイドの坂元へ展開する形に持っていくことも狙い続ける。
26分のキム・ジンヒョンから清武への相手のプレッシングを裏返すパスから最後は松田のスルーパスで加藤が抜け出しかけた場面のような形が狙いたい形である。
そして後はセットプレー。16分の藤田のロングスローの場面ではダンクレーニアに入らせ、その背後に瀬古を飛び込ませるという形を見せていたが、おそらくこれは準備していた形だろう。
相手のプレッシングをボール保持で裏返したり、後ろから時間とスペースを届けるようなボール前進は現状ではなかなか難しいので、カウンターを受けるリスクを考えると割り切って相手にボールを持たせるという判断は「チームとして最もやりたいこと=ベストな選択」ではないかもしれないが、「今できることの中で考えるとベターな選択」ではないかと感じていた。
■後半の変化はプランなのか不満からなのか
ハーフタイムでセレッソは加藤に代えてアダム・タガートを投入。個人的には前半の加藤のプレー自体にそこまで不満は感じていなかったが、チャンスを作れていたわけではないのでFWを入れ替えたいということになったのかもしれない。
もしかしたら最初から考えていた交代なのかもしれないが。
後半の立ち上がりは前半同様に前線からのプレッシング、奪ったボールはシンプルに背後に蹴るという形を両チームとも見せていたが、少しづつ前半とは違った姿が見えてきた。
特に変わったのはセレッソの方で、前半はしっかりとブロックを作って背後か清武というシンプルな戦い方だったが、後半に入るともっと積極的に攻撃に人数をかけるようになっていた。
その結果53分の松田のシュート性のクロスの場面や、56分の坂元のミドルシュートの場面ようにゴール近くまで迫る場面は増えた。
しかし、その反面鹿島にカウンター気味に一気にボールを運ばれる場面も増えた。
ブロックを作って相手にボールを持たせているという形を作る前に一気にボールを運ばれる場面が増えたのだ。
セレッソの変化はもちろん指示によるもの。紹介されているハーフタイムコメントでも「パスコースを作りながら、前に運ぼう」とある。
ただ、これはどういう意図だったのだろうというのは気にかかった。
最初から前半は慎重に入って後半から積極的に仕掛けようというプランだったのか、それとも前半のやり方は本意ではなかったからなのか。という部分である。
先ほど書いた2つのセレッソが鹿島ゴールに迫った場面の間の54分には永戸のグラウンダークロスに白崎が合わせるという場面を作られている。そしてこの場面の起点はそうだったのだが、セレッソのCHの裏で鹿島にボールを持たせる場面が増えていた。
■チャレンジしたことで起こったミス
鹿島の交代はミッドウィークの試合なので週末のことも考えての交代だろう。一方のセレッソは54分の白崎のチャンスでも丸橋の対応が遅れていた。試合に動きが出てきた中でフレッシュな選手をということだったのだろう。
しかし思わぬ形で試合は動く。
73分、自陣でのビルドアップで新井がパスミス。土居にボールが渡ってしまうと最後は荒木が落ち着いてゴールに流し込み鹿島が先制する。
新井としては痛恨のミスパスとなってしまった。
新井は試合終了後に自身のSNSで謝罪のメッセージを出していたが、ビルドアップのミスはしょうがない。ミスはいつでも起こり得る。そして個人的にはミスに対してSNSで謝罪する必要なんてないと思っている。
ただ、この場面を振り返ると右サイドでボールを運ぼうとしたやり直しで左サイドまでボールがきた形。それに対して鹿島の前線の選手もずっとついてきていたので、ここでは前に蹴ってしまっても良かったんじゃないかとは感じた。
ただ、新井にすれば後半から繋いで攻めようとした中での途中出場。なのでボールを失う可能性の高い蹴るプレーよりも繋いでチャンスを作りたいとなるのも理解できる。
なので形としては自陣でもパス回しのミスだが、ある意味チャレンジした中でのミスだった。
この得点を受けて73分に鹿島はレオ・シルバと荒木に代えて三竿健斗と上田綺世を投入。上田は1トップに入り土居が左SHに移動する。セレッソも75分に藤田に代えて大久保嘉人を投入。大久保はFWに入り奥埜がCHに下がる。
鹿島の交代はこれも週末の試合を見越してのもの。セレッソの交代は得点が必要なのでわかりやすい。
しかしこうなるとセレッソはいくらFWを強化したとしても厳しい。そもそも交代前も前線に良いボールが入っていたわけでもないのでそこまでボールが届かないのである。しかも鹿島はリードしたことで戦い方がはっきりした。
その結果、ここからの時間帯でチャンスを作っていたのはむしろ鹿島の方だった。
瀬古の投入は原川のコンディションの問題もあるかもしれないが、おそらくセットプレーのことも考えての交代だったのだろう。
しかしCHは今のセレッソの自由律サッカーにおいて調整役となっているポジション。前監督時代には試合途中にCBからCHにポジションを変えてもそつなくこなしていた瀬古だったが、この試合では機能したとはいえなかった。
ということで73分の失点以降、鹿島は4本のシュートを放ったが、追いかけているセレッソのシュートはわずか1本。
そのまま試合終了となり、セレッソは連敗。5試合勝利なしとなった。
■その他
直接的な敗因としてはミスとなるのだろう。ただ、本文中にも書いたように個人的には前半の戦い方は悪くないと感じていただけに、後半の試合の進め方として「どうかな?」と感じてしまう試合だった。
後半開始からセレッソがオープンな展開に持っていったが、その必要があったのかという部分である。
今できることと、今の問題点を考えるとオープンな展開に持ち込むとしても早すぎるんじゃないかと感じた。
もしかしたら昨季までのロティーナ監督の「試合をできるだけオープンにしない」という考え方が染み付いてしまっているからなのかもしれないが、鹿島の戦い方とセレッソの現状を考えるとオープンにしても得する部分よりも損する部分の方が大きいだろうし、オープンにするにしてももう少し後。例えば大久保の投入をきっかけに10分なり15分なりで勝負をかけるという形かなと考えていたからだ。
神戸戦やG大阪戦、遡ればその前からだが、セレッソは試合終盤の失点問題を抱えていた。
この問題にに対して小田さんが神戸戦の監督会見で質問したように「交代策も含めた試合の締め方」つまり「最後守り切る方法をどうするか」といった捉え方もあるが、おそらくこのチームはそういう考え方のチームではないと思っている。
このチームがやりたいのは、リードした状態で相手が前がかりになったところを逆に使って追加点を奪うこと。例え追加点を奪えなかったとしても攻めながらやりくりしようと考えているんじゃないかと思っている。
なので最後までクロスを入れたりするし、シュートも打つ。アディショナルタイム近くになれば流石に時間を使おうとするが、割とギリギリまで相手ゴールに向かってプレーしようとする。
しかし、現状ではこのゴールに向かってプレーするという部分に問題を抱えている。効果的にボールを運べない。なのでチームとして前線にチャンスを供給できない。問題点の根本部分はそこなんだと思っている。
それを踏まえてこの試合。前半の戦い方は、今できること、今の解消できていない問題点を考えるとベストではないがベターだったと感じていたが、後半開始から試合をオープンにする事を選択した。
「セレッソらしさ」がどういうものを指しているのかはわからないので「取り戻す」ということも何をしようと考えているのかはわからないが、何をするにせよ整備しないといけない課題は多い。
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