2020年7月14日火曜日

7/12 明治安田生命J1リーグ第4節 VS 名古屋グランパス @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審村上 伸次
入場者数4,026人副審野村 修、西村 幹也
天候 / 気温 / 湿度曇 / 24.6℃ / 55%第4の審判員谷本 涼
セレッソ大阪C大阪
 
名古屋グランパス名古屋
 
  • 監督
  • ロティーナ
 
  • 監督
  • マッシモ フィッカデンティ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>

セレッソ大阪:ロティーナ監督
名古屋グランパス:マッシモ・フィッカデンティ監督

<選手コメント>
セレッソ大阪:レアンドロ・デサバト、豊川雄太
名古屋グランパス:阿部浩之、中谷進之介

多くの制限がありながらもいよいよスタジアムでの観戦が許されるようになった明治安田生命J1リーグ第4節。セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居に名古屋グランパスを迎えての一戦は0-2で敗戦。今季初黒星を喫し開幕からの連勝は3でストップした。

■メンバー

両チームの先発メンバーはプレビューでの予想通り。
セレッソ大阪は高いレベルでローテーションができる左CBと左SHに今節は木本と清武。またFWには少しずつコンディションが戻りつつあるブルーノ・メンデスが起用された。

一方名古屋グランパスは、相馬が出場停止から戻り左SHに。そして阿部がトップ下に戻りCHには前節はベンチスタートだったジョアン・シミッチと今季から加入したにもかかわらず阿部と並んで代えの効かない存在となりつつある稲垣を起用。1トップには金崎が入った。

■支配していた立ち上がり

試合後のコメントで、ロティーナ監督は「良い入りができたと思います」、フィッカデンティ監督は「立ち上がりからセレッソのボール回しを見せつけられ…」、中谷は「正直、最初の5分は相手にボールを持たれていて、強いなと」。この3者の言葉からも分かるように立ち上がりはセレッソが支配していた。
名古屋の守備
セレッソのビルドアップに対して名古屋の対応は、トップ下の阿部が1つ前にでて4-4-2の形になり金崎と阿部がセレッソの2CBの前に立つ。そしてセレッソの2CHに対しては名古屋の2CHが前に出て距離を詰める。という形を徹底してきた。この2CHが2CHを捕まえるというのがおそらく名古屋の守備の肝の部分だったんだと思う。
あとおそらく名古屋のSHはセレッソのSBを基本捕まえながらも行くかどうかは状況によるという感じだったと思うが、セレッソは松田の立ち位置を調整しながらビルドアップを行うので相馬はちょっとふわふわしてしまい相馬に対して名古屋の後ろの選手からキツめの指示が飛んでいた。

ただ2CHが2CHを捕まえるとその周辺にはスペースができる。セレッソはそこに清武がサイドから入り、またFWの1枚が落ちる形で起点を作りボールを前進させていた。
セレッソの3バック化
名古屋の2トップは積極的にボールを取りに来るわけではなくボールも運べていたのでセレッソとしてはこのままでも良かっただろうが、どこまで付いてくるのかを確認する流れの中で藤田が最終ラインに下がる動きを見せる。
ということで結果的にセレッソはCHの1枚を最終ラインに落とす3バック化をするように。これに対しここまでセレッソのCHに対してCHに距離を詰めさせていた名古屋だが、2トップを越えた位置にまでは出て行くことがない。ということでセレッソは藤田が下がることが多かったので、藤田とマッチアップする稲垣は元のポジションに残り、デサバトとマッチアップするシミッチは2トップの近くまで出てくるという状況が多く見られた。
ただ、こうなるとセレッソは名古屋の2トップに対して3人使っており、名古屋はその余った1人を中盤に戻すことができているので当然セレッソはボールを運びにくくなる。
しかしセレッソはテンポを落としてじっくりとサッカーしようとするチームなので、ボールを横に動かすことでタイミングを伺い、先ほどのボランチ脇のスペースへのくさび、もしくは大外を使う形でボールを前進させていた。
また藤田が最終ラインに落ちて松田が前に出ているので右サイドの内側レーンはFWが落ちるだけでなく坂元が中に入るパターンも増えていた。

試合の立ち上がりはセレッソのこのビルドアップに対し名古屋が思うように制限をかけられず、セレッソがアタッキングサードまでボールを運ぶことができていたことから、冒頭の両監督、中谷のコメントとなっていた。

■名古屋の狙い

セレッソがCHが落ちる3バックを多用し始めしばらくたった10分すぎぐらいから少しずつ名古屋がペースを取り戻し始める。名古屋は狙った位置でボールを奪い返すことができるようになり始めたのだ。
コンパクトなブロックを作る名古屋
名古屋が狙ったのはCH脇に入るクサビのパス。ここで受けようとする清武や坂元、奥埜らに対してCBが激しくアプローチに来るようになり、セレッソはここで潰されてしまう機会が増えたのだ。
もちろんただ単にここにCBがアプローチに出ると最終ラインにギャップができ大ピンチにつながる。しかし4-4のブロック全体を縦にも横にもコンパクトにすることで、アプローチのスピードを速め、さらに収められてもカバーできる位置関係に選手を置くことが出来るようになったのだ。おそらくこの試合に向けて名古屋はこの準備をしてきたのだろう。
またコンパクトにできた要因としてはセレッソはCHが下がってSBが前に出たのでSH(特に相馬)のポジショニングに迷う要素が減ったことが影響しているかもしれない。(それでも相馬は試合を通じて厳しく言われていたが)

これにより名古屋もボールを運ぶことができるようになり試合はイーブンの状況に。途中で名古屋はSBの左右を入れ替える時間帯もあったが(意図はよくわからなかった)崩しきる場面はなく、またセレッソも組織的に対応することで名古屋の攻撃を遅らせることができていたのでそこまで大きなピンチはなかった。
しかし名古屋がボールを運ぶことができるようになったため、CKやFKなどセットプレーを得るようにはなっていた。

そんな時間帯の38分、マテウスのCKでニアへの速いボールが入ると競合いの中でヨニッチの頭にあたりオウンゴール。名古屋が先制、セレッソは今季初めての前半失点を喫する。
前半にセットプレーで失点といえば昨季のホーム鹿島戦を思い出すが、実は昨季の失点比率ではセットプレーからの失点が28%と最も高い。
ただ、これは全体の失点数が少なかったからでもあり、失点数自体は7。もちろんこれより少ないチームもあるが、取り立てて多い訳ではない。
しかしセレッソはある程度相手にボールを持たれることを認める戦い方をするので相手のセットプレーは増える傾向にはある。このあたりをどう考えるかだろう。

ということで前半は0-1で折り返し。ボール保持率とパス数はセレッソが大きく上回りながらも、シュート数はセレッソの4本と名古屋は8本(中継でのHTスタッツでは9本となっていたが、得点がオウンゴールになったため)。枠内シュートはセレッソの1本と名古屋4本となっていたが、名古屋の4本の枠内シュートは全てセレッソがブロックしていたので実際に名古屋のシュートで枠内に飛んで行ったのは0。
内容自体はまずまずといったところだが、、ビハインドを負っているので後半にどう跳ね返すか。

■間を広げたいセレッソ

後半開始〜
後半開始からセレッソはブルーノ・メンデスに代えて豊川を投入する。

そしてプレー面の変化としては、セレッソが長いボールを使うようになっていたこととなる。中継では「ロングボールを蹴らされている」というニュアンスで話しを進めていたが、おそらくこれは意図的なもの。名古屋の守備ブロックがコンパクトで間へのクサビを潰される場面が多かったので、ブロックを広げようという意図でスペースへの長いボール。DFラインの背後を狙う裏抜け要員としての豊川だったのだろう。前半はDFラインの背後を狙う動きがほとんどなかった。

そんな中、長いボールからの展開で坂元がファールを獲得。50分の清武のFKからマイナスのボールで松田が狙うもシュートは枠を外れる。
この場面、「崩した形」や「狙い通りの形」というわけではないが、セレッソは決めなければいけなかった場面だった。そして名古屋は決められなくてラッキーという場面だった。
というのも名古屋の守備にマイナスのスペースをケアする選手が誰1人おらず、明らかに守備の配置がおかしかったからである。スタンドから見ていると名古屋の守備がセットした瞬間から「ホントにそれでいいの?」と感じるほどで、吉田豊もそれに気付いて声を出していた(ただし彼1人が直前に気付いたところで変えられない)。なのでセレッソのこのプレーも練習したサインプレーというよりも選手のアドリブだったと思う。
(ちなみにこの3分後ぐらいに再び同じぐらいの位置からセレッソのFKがあったがその時は修正していた。)
「相手のミス」とも「降って湧いた」ともいえるチャンスだったが、この絶好の場面で同点に持っていけなかったことは本当に痛かった。

■痛恨の2失点目

61分〜
ここから両チームが立て続けに動く。
先ず最初はセレッソ。52分に奥埜と藤田に代え都倉とルーカス・ミネイロを投入する。後半頭からの背後へのロングボール、そして前線に都倉が入ったことで少しづつ名古屋の中盤にスペースができるようになっていた。
ルーカス・ミネイロはタイプ的には扇原に近い感じなので藤田に疲労が見えることもあり中盤でボールを捌いて欲しかったのだろう。
それを察知した名古屋は58分にシミッチに代えて米本を投入する。
この早い時間に、前節はラスト5分だけの出場だったシミッチを下げ、フル出場の米本を投入することになるのだが、以前からそうだがこのあたりの判断はフィッカデンティ監督は本当に早い。(時に早すぎて裏目に出ることもあるが)
そしてさらに61分にセレッソは清武に代えて柿谷を投入。いつものルーティーンの交代だが少しのスペースでも違いを作れる選手である。

しかし柿谷投入の直後、痛恨の2失点目を喫する。
きっかけになったのはルーカス・ミネイロ。迷ってのボールロストからカウンター。しかしここで一旦は対応に成功し再びルーカス・ミネイロの元にこぼれ球が出るが、ここでも対応を誤りボールを拾えず稲垣に。そしてそのボールを阿部が受けるとミドルシュート。ここでもルーカス・ミネイロの寄せが甘く61分に追加点を奪われてしまう。
阿部のシュートは見事だし、これぞ阿部の武器というプレーだったが、そこまで3度に渡ってミスをしてしまったルーカス・ミネイロのプレーももったいなかった。そしてペナルティエリア外からのシュートには鉄壁の守備を誇るキム・ジンヒョンだったが、寄せも甘く、ブラインドになってる状態でコースギリギリを突かれたので対応できなかった。
昨年8月11日の鳥栖戦以来、11ヶ月ぶり、337日ぶりの2失点である。

■キッカケが無いまま前にボールを入れてしまうセレッソ

74分〜
ここからセレッソは70分に坂元に代えて片山、名古屋は阿部に代えてシャビエルと両チーム交替枠を使って行くことになるのだが、ここからの時間帯のセレッソはあまり良い形の攻撃ができなかった。

昨季から先に失点すると厳しい(昨季先制された試合は1勝1分9敗)と言われているが、これはセレッソの戦い方的にはしょうがない部分でもある。セレッソの戦い方はペースを落としじっくり時間をかけて攻撃するのだが、このじっくり時間をかけている時に狙っているのは最初の1枚を剥がしてその裏にボールを入れること。最終的に相手のゴール前で大きなズレを作るための最初のキッカケを作っている。
セレッソはこの最初のキッカケから相手ゴール前への大きなズレと結びつけることが出来るので、ペースを落としゆっくりとした戦い方でも勝ちに結びつけることができる。ペースを落とすことで失点のリスクも減らしながら、得点の機会を作り出しているのだ。
縦に速く攻めて、縦に速くカウンターを受ける行ったり来たりのオープンな展開とは真逆の展開である。

しかし先に失点をしてしまうと、この難易度は一気に上がる。最初の1つ目で相手を剥がしてその裏にボールを届けることが難しくなる。そうなるのは相手は勝っているので出て行く必要がなくなるからで、1つ目のキッカケを作るのには0-0の時以上に手数がかかりがちになるのだ。

しかしその反面、こちらは焦れる。負けているので速く前にボールを入れたい。となると相手の守備ブロックに突っ込むだけになってしまう。
清水戦のレビューでも、セレッソがペースを失った後半の立ち上がり、そして再びペースを握った時間帯。その境目として相手の右WGを引っ張り出してその背後の丸橋にボールを届けたプレーを書いたが、その1つのアクションの有無が攻撃の大きなキーポイントなのである。

ということで焦れてしまい効果的な攻撃ができなくなっていったセレッソ。
都倉の高さや柿谷のテクニックなどを活かした場面も作るが、焦ってしまっているのかどうしても中へ中へ。日本代表でもよくある中央合体問題である。中央合体はまれにすごいゴールが決まることもあるが、守備側からすれば守りやすいというのは尹晶煥以降のセレッソはよく知っているはずだ。
90+3分〜
終了間際、アディショナルタイムに入りセレッソがCKのチャンスを迎えると名古屋はマテウスに代えて高さのある山﨑凌吾を投入。
最後までフィッカデンティ監督らしさ溢れる采配を見せそのまま試合終了。0-2で今季初の敗戦となった。

■その他

今季初黒星を喫してしまった。セットプレーの失点、そして小さいながらもチャンスをものにできなかったことで時間の経過と共にどんどん難しい試合となっていった。
「なぜ時間の経過とともにどんどん難しくなっていったのか」という部分には本文中にも書いたが、それを踏まえてこの試合を「負けているのに横パスやバックパスばかりしていた」という批判するのは半分正しいし、半分間違っている。
負けているんだからそれまでのやり方を捨ててどんどんスクランブルを作っていけ!というなら正しいし、それまでのやり方を貫いて行くなら最初のキッカケを作るために横パスやバックパス、そしてドリブルでの持ち出しをもっとしなければいけなかった。
ここは本当に悩む部分で、セレッソはペースを落とすところに強さがある。しかし状況によってはペースを落とすところが弱点にもなっている。このあたりをどう判断するかだろう。
万能なやり方なんてない訳で、その中でも今のチームの戦い方は様々なことを準備し、できるだけ負けないように、勝てるようにしていると思っているので徹底して欲しい、と個人的には思っているが。

あとミスで目立ってしまったルーカス・ミネイロ。
起用方法からしても徐々に慣らしていこうとはしている様子は伺えたが、ここでミスに絡んでしまった。
特に今のセレッソのサッカーを見ていると、よく言われる「日本のサッカーは速い」「Jリーグの速いテンポ」が実感できるが、やはり来日してすぐの外国人選手はこの日本のサッカーの速さに慣れるまでは難しい。セレッソはテンポを落とそうとするが相手は速くしたがってる。
こういうミスはしょうがない、よく言う「税金みたいなもの」なので、これに気落ちせず日本のサッカーに慣れ、素晴らしいプレーを見せてくれる日を期待したい。





3 件のコメント :

  1. 分析ありがとうございます。

    後半セットプレーの松田ミドルと豊川フリックからのルーカスヘディングは実況の言うようにサインプレーかと思ったのですがアドリブなのですか、だとするとロティーナは先制された後の攻撃面が尚更ダメだなあと思ってしまいました。速攻という選択肢を完全に捨ててるチームなのでこういうトリックプレーを仕込まないと先制された時の厳しさが去年と変わらないのではないか。
    セレッソ攻撃の選手は豊富なタレントがいるとDAZNやテレビのスポーツニュースで紹介されてますけど個人的には物足りないです。SHやFWの選手はシュートをなかなか打たないか上手くない選手ばかりなので、阿部みたいにコンパクトに振れてかつシュートが上手い選手が欲しいところです。
    4試合勝ち点9でこれだけ文句言うのもなんですが、残留が目的なら勝ち点を固く拾っていく本当に文句のない試合運びだと思うんですけど、優勝を狙うとなると不満と言うより足りないと感じた1戦でした。

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  2. やはりリモートマッチに相性良すぎて観客入れた最初の試合でどこかおかしくなってしまったのでは
    とジョークを入れつつ、これで2位なのだから計算としてはこんなものかなとも思います。
    名古屋は3位なのでシーズン通せば勝ったり負けたりするのが当然ですよね。
    (全勝というわけにはいかないので)

    先制されてからどうするのかについてはロティーナの工夫が見たいとこですかね。
    今のままでは確率高める以前の問題ですので。

    個人的には柿谷をひとつ前でスーパーサブ的に使ってアイデアを出させたいです。
    いまのポジションだとシュート打たない人になっちゃってませんかね。
    清武のバックアップ問題は別に解決するとして。

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  3. お2人方ともコメント有難うございます。
    まだ1つ負けただけなのでそこまで悲観する必要はないと思いますよ。

    あのFKはもちろん練習でもやっていたんだとは思いますが、そもそもサインプレーは1度しか使えないですからね。
    時々やるのは良いですけど、それにそんなに力を入れるのももったいないです。
    あと実際に速攻もありますから、速攻という選択肢を捨ててはいないですよ。
    再開前の記事にも書きましたが、速攻を捨てているのではなく、行ったり着たりの不確定要素を排除しようとしているのが今のサッカーで、世界のサッカーはそちらに向かってるのでJリーグでも遅かれ早かれその方向性にはなると思います。

    なので先制されてからという部分については、ロティーナの工夫というよりもまずは今のサッカーをやりきれるようになることだと思います。
    もちろんロティーナにはそのために、という部分をトレーニングで落とし込んでもらわないといけないですが。




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