スタジアム | ヨドコウ桜スタジアム | 主審 | 清水 勇人 |
入場者数 | 4,927人 | 副審 | 唐紙 学志、竹田 明弘 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 28.2℃ / 58% | 第4の審判員 | 松本 大 |
VAR | 榎本 一慶 | ||
AVAR | 中野 卓 |
メンバー
C大阪
札幌
- 監督
- 小菊 昭雄
- 監督
- ペトロヴィッチ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
明治安田生命J1リーグ第28節、今度はセレッソ大阪が本拠地ヨドコウ桜スタジアムに北海道コンサドーレ札幌を迎えての一戦は0-2で完敗。中2日で札幌・大阪と互いのホームで戦った普段はあまり見ない連戦は1勝1敗に終わった。
■メンバー
セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から4人入れ替え。外れたのは小池裕太、藤田直之、中島元彦、山田寛人で、丸橋祐介、喜田陽、乾貴士、松田力が起用された。
乾はこれが加入後初のスターティングメンバー。そして喜田もこれがJ1リーグ戦での初のスターティングメンバー。喜田はこれでJ1、J2、J3、ルヴァン、天皇杯、ACLの全てで先発した選手となった。
またルヴァンカップセカンドレグで負傷交代となった丸橋が復帰。これは今後を考えても好材料と言っていいだろう。
一方、北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは前節から1人入れ替え。外れたのが荒野拓馬でミラン・トゥチッチがJリーグ初先発となった。
CHに代わってFWが起用されたということなので当然ながら配置は入れ替え。前節は3バックの左に入っていた高嶺朋樹が本来のポジションであるCHに戻り3バックの左に入ったのは普段左WBの菅大輝。そして青木亮太が左WBに入ることとなる。
前節のレビューでも書いたが札幌の3バックの左は4-4-2換算だと左SB。豊富な運動量とスピード、パンチ力のある左足という武器を持ってWBでプレーしていた選手が3バックの左となると違和感を覚えるかもしれないが、左SBだと考えるとそんなに不思議でも無い。
■両チームの改善点
前半の展開としては前節に引き続きマンツーマン気味に捕まえにくる札幌に対してセレッソがうまく裏返すことができなかったということになるのかもしれない。
小菊監督も「前半は相手の圧力に、なかなか自分たちの準備してきたことを出せませんでした。」と振り返っている。
ただし、ボール支配率こそ前回の前半45%に対して今回の前半は44%とわずかながらに下がっているものの、パス数では前回前半の180本から今回は207本、パス成功率も前回の71%に対して今回は76%と少し上昇している。
なかなかスペースを共有できずマンツーマンで捕まえられるということも多く上手くいっていた訳では無いが、相手を引き付けてパスを出すという鉄則は意識できていたので、ビルドアップの最大の狙いであるボールとスペースを前線に送るという部分では続けていればまだ可能性は感じられた。
しかし前節よりも厳しいなと感じたのは非保持の部分。札幌の修正とセレッソの修正では札幌の方がより効果的だった。
札幌は荒野からトゥチッチというCHからFWという入れ替えを行なった訳だが、これで変わったのは菅と高嶺のポジション。菅が3バックの左で高嶺がCHということだが、実際のピッチ上の立ち位置、4-4-2換算での立ち位置だと菅は左SB、高嶺は左CBになる。左利きの2人をDFラインの左側に並べた。この形は普段の福森が入っている時も実は同じ。高嶺は普段ここをやってる選手である。
ビルドアップは時間とスペースをボールと共に前線に届けることなので、それができているかどうかという意味では微妙な部分もあるが、ここにボールが渡れば相手の4バックに対して5人でアタックできるのでOKだという考え方なのだろう。このチームは色々な部分で数的有利をベースにしている。
ただ実際にはあまりにシンプルに縦に運んでしまうとセレッソの守備やり方の場合同サイドで圧縮されてしまう。なので札幌が狙ったのはサイドチェンジ。詰まれば、詰まりそうなら戻してサイドチェンジをする。これを狙うという部分でDFラインの右サイド2人が右利き、左サイド2人が左利きを置いたのはかなり効果的だった。
通常ビルドアップでの3バック化は2トップの脇からボールを運ぶための手段の1つで、札幌は駒井が降りたところでそういった動きはあまりしない。ならば単に後ろに人数をかけただけで意味がなさそうにも思えるが、札幌にとってはサイドにボールを出すための起点となる人がフリーになれればそれでいいということなのだろう。なのである一定の効果はあったと思われる。このあたりも札幌は色々な部分で数的有利をベースにしていると感じさせる1つだった。
そして小菊監督になって目立つようになった前線からのアプローチ、プレスだが、印象的だったのはこういった札幌のボール保持に対して常にアタックに行く、ボールを奪いにいくプレスを行っていたことだろう。おそらく小菊監督としては高い位置でボールを奪い返しショートカウンターを狙うという武器をチームに加えたいという考えがあるんだと思う。しかしボールを奪いにいくアプローチはやるんだったら徹底的に人数を合わせないと数的有利を作られて外される。ということで実際に単純な数的有利で外される場面も目立った。
ここは監督の考え方による部分なので良いとか悪いとかというものではないが、プレスにいく場合でも相手を制限するような形で行った方がこの試合では効果的ではなかったかと感じた。
しかし、札幌にしてもサイドの奥にボールを運んだところでペナルティエリア内にボールは入るがセレッソはゾーンでスペースを消すので決定機までにはなかなか至らない。どうしてもガードの上から殴っているだけになる。
札幌はこういった展開になることも多いので、フェイント的な形でサイドの奥に運んでから後ろに戻し相手がラインを押し上げようとしたタイミングでクロスを入れるという得意技もあり、実際にこの試合でも20分の菅のクロスにトゥチッチがヘディングで合わせようとした場面がそれにあたるが不発。ゴールを決めることはできなかった。
とはいえペトロヴィッチ監督としてはここまで持っていけばOK、チャンスを作ることができているという認識なのだろう。
ただ、それ以上に札幌にとって効果的だったのは、こうして押し込んだことでセレッソのボール保持のほとんどが札幌がマンツーマンで守りやすい状況でしか始めることができていなかったことでは無いかと思う。
セレッソからすると、裏返せばチャンスを作ることができるという認識だったと思うので、前半の展開はそこまで嫌だったという訳ではないだろう。しかし、押し込まれることでトランジションだったりのマンツーマンで守りにくい状況からボール保持をスタートする場面がほとんどなく、常に相手にマンツーマンで見られている状態からスタートしていたのは、選手がピッチでストレスを抱える原因になっていたのではないかと思う。
■改善と課題
後半に入ると少しセレッソがボールを運ぶ場面が増えるが、これはビルドアップの時に奥行きも作るようになったからだろう。
前半は駒井の脇を狙うあまり下がって受けようとしてマンツーマンで捕まえられている相手に後ろから潰される場面が多かったが、後半に入るとポイントを手前の丸橋などのSBにしてそこから奥行きを使う場面が増えていた。
そして奥行きがあれば手前も空きやすいということで、後半になればセレッソはボールを運ぶ場面が増えるが、なかなかフィニッシュには至らず。これはG大阪とのルヴァンカップファーストレグのところでも書いたが、チームとしてはあまりカオスを好まない傾向にあるので相手にとってもスクランブル状態になりにくいから。
例えば札幌だとどちらかと言えばカオス上等なのでどんどんクロスを入れていくが、セレッソの場合はそうしない。
前回にも書いたようにロティーナの時はこれを打開するために再現性の鬼へと進んでいったが、現状は前線のコンビネーションとアイデアに頼っている状態。これだとトランジション以外の場面ではちょっと難しいのでは無いかと思う。
また、これは以前も書いたが例えば坂元にボールが入った時に喜田がサポートで出ていくことも結構多い。前線のコンビネーションという部分でのサポートなのだろう。しかしここで喜田が出ていくと相手も連れてくる。となると坂元がプレーするエリアも狭くなる。
小菊監督になり全体的には昨年までの形に近づいた雰囲気があるものの、坂元が1対1で仕掛ける形をあまり作れていないのは、もちろん相手が警戒していることもあるがこうしてスペースを味方同士で消しているからでもある。
そしてこの試合でセレッソが最もゴールに近づいたのは分の丸橋のFKだろう。
56分にキム・ジンヒョンのゴールキックから乾が一気に裏返すことに成功し松田力へとパス。松田力は後ろから菅に倒されFKを獲得した。
ちなみにこの場面では実況と解説が松田力が処理をしてなかった、詰まりボールに触ってなかったからDOGSOではなかったと言っていたが、それは関係ない。
松田力はファールを受けなければ十分コントロールできる状態だった。もし判断基準がボールが触ったかどうかなら、ボールを触る前に倒してしまえば全てDOGSOではなくなる。
なのでこの場面でDOGSOにならなかったのは宮澤もポジション。松田力よりもゴールに近い位置に宮澤が戻っていた(加藤の抜け出しについて行った形だが)ので松田力がコントロールできても宮澤がカバーできるポジションにいたという判断である。
この丸橋のFKはトゥチッチに当たってクロスバー、そして下にボールが落ちるがゴールラインは超えず。得点にはならなかった。
■2失点
これは戦術的な狙いというよりもコンディション面の方が大きいだろう。もちろん山田の裏抜けと大久保の技術には期待しているだろうが。
そして72分に札幌もトゥチッチに代えてドウグラス・オリヴェイラを投入する。
このドウグラス・オリヴェイラ投入の直前にビルドアップのミスから駒井を倒したとして札幌にFKを与える。
このFKから菅のシュートのこぼれ球を小柏がシュートを放つもキム・ジンヒョンがスーパーセーブ。しかしドウグラス・オリヴェイラが押し込みゴール。73分に札幌が先制に成功する。
そもそもFKの場面が怪しかったというか、おそらくペナルティエリアの中ならPKかどうかでVARが介入してノーファールとなりそうな場面だったが、ペナルティエリア外なので介入せず。まあそういうルールでやっているので仕方ない。
また試合後に駒井が自身のSNSで接触はあったとアピールしていたが、実際に接触はあったんだと思う。なので駒井の言ってることは間違っていない。そしてこれに対して駒井が色々言われてたみたいだが、それをファールかどうかを判断するのは駒井ではなく主審。なので気持ちはわからないでも無いが駒井に何か言うのも違うかなと思う。
そしてこの場面はそもそも駒井に中間ポジションに入られて少し前向きにドリブルされたことでセレッソが厳しい状況になったので、そこの対応を誤ったというところだろう。
そして前半から、なんとか守れていたもののあまりにも押しこまれる場面が多く、さらに後半に入ると少しオープンになってきていたのでこういうことは起こり得る試合にはなっていた。
またさらに、そのわずか2分後の75分に駒井の折り返しに青木が飛び込んでゴール。札幌が追加点を決める。
これは札幌が押し込んだ時に見せる形の1つ。そして浦和〜札幌と移籍するうちに駒井はすっかりミシャシステムのCHの選手になっているが、そもそも京都時代からこういうプレーが最も得意な選手だと思っている。
■準備していた展開は終わり
この交代後の札幌は西川のポジションを掴みきれていなかったようで、駒井ー原川、金子ー喜田という関係のまま原川と西川と対峙し、原川と対峙する田中が前に出て、喜田とマッチアップしていた金子が後ろに下がるといったアンバランスな状態になり、そんな流れから84分に山田がシュートを放つもポストに跳ね返された。
ただこの交代はセレッソにとってそれまでのオーガナイズを壊す選択である。もちろん試合は最後まで勝ち点を目指して諦めずに戦うし、そのための選択なのだが、これはいわばそれまでのちゃぶ台をひっくり返す行為。2点ビハインドとなりオーガナイズを捨てスクランブル上等の展開に持ち込むしかなかったということになので、この時点で試合に向けた監督同士の勝負、ミシャ対小菊の第2ラウンドはミシャの勝ちだった。
秩序からカオスに持っていったセレッソは何とか勝ち点を奪おうと最後まで奮闘するが、スコアはそのまま0-2で終了。
第2ラウンドは0-2で北海道コンサドーレ札幌の勝利に終わった。
■その他
札幌がやりたいことをやり切って2点を奪って勝った、セレッソとしてはそれに対抗できなかったという試合だったので、完敗と言っていいだろう。
そして同時に今のチームの課題もはっきりとしたと思う。
札幌は考え方から戦い方までJリーグでは他に類を見ない特殊なチームなので難しかった部分もあるだろう。しかし、ここで出てきた課題は他のチームと対戦した時にも出てくる部分でもあるので、今後小菊監督がどういった形で解消しようとするか、どういう方向にチームを進めようとするかに注目していきたいと思う。
次はACL浦項戦。時間の無い中でのさらに難しい相手との試合になるが、何とかチームの進む方向を提示し、結果を掴んでほしい。
0 件のコメント :
コメントを投稿