スタジアム | 札幌厚別公園競技場 | 主審 | 村上 伸次 |
入場者数 | 3,201人 | 副審 | 大塚 晴弘、大川 直也 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 18.1℃ / 55% | 第4の審判員 | 上原 直人 |
VAR | 岡部 拓人 | ||
AVAR | 野村 修 |
メンバー
札幌
C大阪
- 監督
- ペトロヴィッチ
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
ACL参加の影響で延期となっていた明治安田生命J1リーグ第19節、敵地札幌厚別公園競技場での北海道コンサドーレ札幌対セレッソ大阪の一戦は、前半後手に回る場面が多かったものの3点を奪って0-3の勝利。これで3月の第3節から第5節までの3連勝以来となるリーグ戦連勝。そして同じく3月の第5節から第7節の3試合連続無失点以来となるリーグ戦連続無失点となった。
■メンバー
両チームともにミッドウィークにルヴァンカップ準々決勝セカンドレグを戦っておりそこから中2日、さらに3日後にはセレッソのホームで対戦するという状況での試合。
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは、ルヴァンカップから2人入れ替え。外れたのはその試合で負傷交代となった福森晃斗とジェイで、代わりに共に負傷明けとなる青木亮太と小柏剛が起用された。
DFとFWが外れてアタッカー2人が入る形となるが、ポジションとしてはCHに入っていた高嶺朋樹が3バックの左に移動しシャドウだった駒井善成がCHに下がることで、青木がシャドウ、小柏がFWに入る。
ただ、ミシャことペトロヴィッチ監督率いる札幌は布陣が3–4-2-1になっているものの実際は3-4-2-1ではないのでその辺りは後程。
またベンチには夏の移籍市場でベルギーから加入したスロベニア人FWミラン・トゥチッチがベンチ入り。ルヴァンカップではすでにデビューしているが、リーグ戦では初のベンチ入りとなる。
一方、セレッソ大阪のスターティングメンバーは、ルヴァンカップから4人入れ替え。外れたのはその試合で負傷交代となった丸橋祐介と、チアゴ、鳥海晃司、喜田陽。代わって西尾隆矢、瀬古歩夢、小池裕太、原川力が起用された。
大きく代わったのは後ろのメンバーで前線は4点を奪って快勝となった試合から固定。ただ次節も中2日でやってくることから長時間プレーすることは難しいだろうからどこかで入れ替えてということなのだろう。
ということでベンチにはチアゴ、喜田陽の他は、西川潤、乾貴士、大久保嘉人、松田力と前線の選手が並んだ。
■狙い通りではなかった前半
前半のボール支配率が札幌55%・セレッソ45%、パス数(成功率)が札幌305(81%)・セレッソ180(71%)。
ボールを持ったから、パスを繋いだからどうという訳ではないが、セレッソとしてはこういう試合展開を望んでいた訳ではないので、攻守において狙い通りとは言えない前半だった。
そうなった要因をまず札幌のボール保持、セレッソのボール非保持から振り返ってみる。
まず札幌のボール保持はお馴染みのミシャシステム。一応布陣は3-4-2-1となっているのでそこから始めると、CHの1人が3バック中央の脇に降りて、3バックの両サイドがSB化する形で4バック化。両WBが高い位置にでるので4-1-5になる。
ただ、4-1-5だと相手が2トップの場合CBと2トップが同数でマッチアップしてしまう。
ミシャシステムでは基本的に局面での数的有利、人数調整がベースになっているので、こうなるともう1人のCHも4バックのCB化している2人の間に降りてくる。
そうなるとCHには誰もいなくなるのでシャドゥの1人が降りてくる。
ということで結果的には5-1-4のような形。もしくは5の両サイドが上がっていくので3-1-6のようなことになる。
ただこれは3-4-2-1をベースにしているから結構ややこしいことになっているが、最初の荒野が降りてきた後を基準にすると、DFラインが右から田中、宮澤、荒野、高嶺。MFがルーカス・フェルナンデス、駒井、青木、菅。FWが金子と小柏。となる4-4-2でそこからCHの駒井がCBの間に降りていると考えると比較的シンプルである。
これに対するセレッソだが、小菊監督になり4試合目。徐々に見えてきたのは4-4-2のゾーンディフェンスをベースにしながらも前からプレッシングを仕掛ける機会も増やしたい、より高い位置でもボールを奪えるようにしたいという狙い。G大阪3連戦では初戦と試合を殺しにかかった2試合目はリトリート優先し、3試合目は得点を奪わないといけない試合だったので守備のスタート位置を前にしたという流れだったので「必要に応じやっただけか?」とも思ったが、この試合でも守備のスタート位置を高くしていたのでそれがチームとしての狙いなのだろう。
確かにそれが21分の場面、坂元のアプローチで荒野のミスを誘い、奪ったボールを加藤がペナルティエリア内でシュートを放つという決定機を作っていた(菅野がスーパーセーブ)ので上手くいった場面もある。
しかし裏目に出ていたことも多く、結果的には札幌が攻め込む時間が長かった要因の1つにもなっていた。
4-4-2で3バック化する相手に前からプレスに行くということは2トップ+もう1人が出ていくということ。そのもう1人がSHになっており、この試合は福森がいないこともあって札幌の右サイド(セレッソにとっての左サイド)に左SHの中島が出ていくという場面が多かった。
しかしここに中島が出ていくと後ろでは田中が空く。なので札幌はここからボールを運ぶ。右サイドにはルーカス・フェルナンデス、金子、田中がいる札幌にとってのストロングサイドである。
13分にサイドで受けた田中からDFラインの背後へ早いタイミングでグラウンダーのクロスを入れ小柏を走らせる場面があったが、これが中島が出て行くので空くという形だ。セレッソも後ろに小池はいるが小池の前にはルーカス・フェルナンデスがいるので田中までは出ていくことができない。
とはいえ中島もU23時代にプレスに行って外されてプレスバックしてというような2度追い、3度追いを経験していて何度も走ることを叩き込まれているので前に出ていっても戻ってくる。これを徹底していたので相手が浮いている時間はその13分のクロスの場面のようなアーリー気味の一瞬でしかなく、札幌にとってもこのスピードで攻め続けるのは難しい。なので一発で一気にピンチになることはあまりなかったが、守備のやり方としてはハマっているとはいえず、中島が戻れなくなった時点で成立しなくなるというものになっていた。
ただし戻れているうちは大丈夫。
セレッソはプレスにはいくものの、そこを外されたり1列目の後ろにボールを運ばれたときはしっかりゾーンを作ってブロックで中を閉めて守る。元祖5レーンとも言えるミシャシステムはそもそもポジショナルプレーの概念が広まる前からやっていた形なので、ゾーンに対してポジショニングで人を動かすというよりも数的有利か個人技かで勝負しようとする傾向があるので、組織さえできていればなんとか守り切れる。
もちろん札幌も右サイドにかなりの人数を集めて押し切ろうとする場面もあったが、セレッソにすれば守る場所がはっきりしており、そこだけはやらせないという形で守ることができていた。
■浮いた選手を作れないセレッソ
次はセレッソのボール保持について。
ミシャが広島から浦和に行ってより行うようになったのが高い位置からの守備。その結果今ではほぼマンツーマンみたいな形をとり、どんどん前から捕まえる守備を行う。
なのでセレッソの4-4-2に対峙するともはや4-4-2。先ほどボール保持でも4-4-2から変わったと考えた方がわかりやすいと書いたが、選手とポジションは合ってるのか?みたいなことはあるものの、役割としてはほぼ4-4-2と言える。
そこからセレッソはいつものように松田陸が最終ラインに残る形でボール保持を行おうとする。これは通常であればSHは後ろをカバーする分浮きやすいからで、そこを起点にしようということなのだが、札幌はほぼマンツーマンなので関係ない。であればと松田陸が前に出て藤田がCBの間に落ちようとするがこれも関係ない。ということで直接DFラインの背後を狙うか、必ずフリーになれるキム・ジンヒョンに戻すという場面が多かった。
マンツーマンなのでDFラインのところも数的同数、一気に狙うのはわかる。ただ、札幌は普段からこの守り方なので日曜日のガンバのようにCB同士の関係さえきれているということはなく、こればかりだと可能性の低いギャンブル。なのでGKを使う頻度がかなり高くなっていた。
相手が前からくるなら狙うポイントとしてはCHの脇や裏で、そこにFWが降りてきたり、SHが入ったりということになるのだが、キーマンとなる左SHの中島がなかなかここでボールを収められなかった。
マンツーマンなので田中がどんどん捕まえにくることも多く、そもそもなかなかフリーになれない。そして瞬間的な動きで短時間でなんとかしようとするがミスにつながることも多い。収めることができれば田中を内側に引っ張ってる分小池が上がる道がありそこからチャンスを作れそうなのだが、とにかくボールロストが多かった。そうなるとどんどん押し込まれる。
■困った時のセットプレー
こうして前半はピンチはそんなにないものの押し込まれる展開が続くことに。しかし、40分をすぎた頃からセレッソがセットプレーでチャンスを作り出す。
きっかけとなったのは背後狙いからの相手のクリアを西尾がインターセプトしたところから。西尾から山田、加藤へとボールが渡り加藤がシュートを放つもこれは高嶺がブロック。CKを獲得する。
42分に原川のCKから藤田がヘディングで合わせるもDFに当たりボールが溢れる。それを西尾が詰めるも菅野がセーブ、さらに瀬古が詰めるが今度はクロスバー。ゴールには至らなかったが決定機だった。そしてこの場面でもヘディングで藤田が競り勝っていた。
そして前半のアディショナルタイムに再びCKを獲得すると、原川のCKは一旦はねさえされるが、そのクリアボールを松田陸がワンタッチでサイドに展開すると、原川の左足のクロスに飛び込んだのは藤田。スタンディングで飛ぶ菅に対して後ろから飛び込んだ藤田が完全に競り勝ちゴール。45+1分にセレッソが先制に成功する。
札幌の布陣は本来CHの選手がCBをやってるのでどうしてもこういうことが起こり得るのだろう。
セレッソにすれば狙い通りに進めることができていた訳では無い中で奪った先制ゴール。これはかなり大きい。
■後半にペースを取り戻す
札幌はトゥチッチが中央に入り左シャドゥに小柏、そして青木が左WBに移動。セレッソはそのままの入れ替えとなる。
小菊監督によると乾は「もともと半分は考えていた」とのことなので予定通りなのだろう。仕事内容的にも中島がボール非保持であのプレーを90分続けるのは無理だ。そして前線は3日前の試合から代えていないので連戦。そのためのベンチメンバーでもあった。
そして札幌の交代だが、加入時の報道だとトゥチッチは高さもスピードもあり1トップで期待されているという感じだったと思うので前線の迫力をということなのだろう。
後半開始早々に再び試合を動かしたのはセレッソ。サイドを変えて2本続いた2本目のCK。原川のCKに松田力がニアで合わせてゴール。51分にセレッソが0-2とリードを広げる。
これもまたセットプレーから。松田力はもともと特別強化指定選手だった2013年の大分時代にヘディングで名を売った選手である。
身長175cmと高さはないがジャンプ力があって横からのボール、空中戦にはめっぽう強い。
これが松田力にとって加入後リーグ戦初ゴール。そしてJ1リーグ戦では名古屋在籍時代の2016年3月12日川崎F戦以来5年5ヶ月と27日ぶりのゴールとなる。
この追加点は結果としてはもちろん非常に大きいものだったが、それ以上に試合に大きな影響を与えたのが後半の頭からセレッソが徐々にペースをつかみ出したことだろう。
まず後半の立ち上がりから札幌は前半のように簡単に右サイドでボールを運べなくなっていた。
その要因となっていたのが乾のポジショニング。前半の中島は中盤に一度セットしてから前に出ていくことが多かったが、後半の乾は相手が最終ラインでボールを持っている時にすでに少し前にでた場所にいる。なので札幌は3バック化した右サイドになかなかボールを付けられない。
前に出ているのでということで一旦GKに戻してGKから田中にパスを出そうとすると、今度はパスに距離があり、乾も完全に前にいる訳でもないので戻るのが間に合う。その結果右サイドで簡単にフリーを作ってボールを運ぶという形は減った。
この辺はさすがラ・リーガで、そしてエイバルで長年やってきた選手といったところ。
エイバルというチーム自体が、ポジショナル志向の強いラ・リーガの中で4-4-2でプレッシングに行くことをベースとしたチームだったのでこうしたポジショニングが完全に身についているのだろう。
乾もエイバル加入時にはかなり苦労していたが、最終盤にはメンディリバル監督からボール非保持でのポジショニングについてチームで最も高い評価を受けるまでに成長した。
そしてもう1つがセレッソが前半苦労していたポジティブトランジションのところで優位に立つ場面が増えてきた。
そうなったのは札幌の選手交代にも要因があるだろう。トゥチッチが入って青木が左WBになった。そして札幌はプレッシングに行く。ということは先ほどの4-4-2換算で行くと、小柏とトゥチッチの2トップ、左SHに青木、右SHにルーカス・フェルナンデス。CHに駒井と金子となるが、これは流石に厳しい。
もちろん前半の駒井・青木も厳しいといえば厳しいのだが青木はまだボール保持で中盤に降りて受ける機会も多い。しかし金子は前で仕掛けてなんぼ。もちろん金子もサボる訳ではないのだが、前にいるのでそのままプレスに行く時なども起こり得る。となると中盤は駒井1人。なのでセレッソがそこにボールを出し、小柏がCHの位置まで戻ってこざるを得ないといった状態になることもあった。
ミシャのチームは対戦相手として見てきただけだが、広島時代、浦和時代から感じていたのは先制されると打つ手がなくなる事が多い事。
そもそもミシャシステムのベースである4-1-5は中盤を空洞化させて相手が取りに来たところを裏返して4バックを一気に攻略しようというのが基本となる考え方。なので先制するとめっぽう強いのだが、先制されると相手が取りに来なくなるのでなかなか裏返すことができない。
しかしベースとなる仕組みがはっきり決まっているので形は変えれない。となると人を入れ替えるしか無い。SBにSHを入れたり、CHにOHを入れたりするしかないのだ。となると当然秩序は失われていく。
■力こそパワーに秩序で対抗
完全な「力こそパワー大作戦」である。先ほどの4-4-2換算ならドウグラス・オリヴェイラと駒井がCHなので「力こそパワー」っぷりが伺える。
ジェイの高さとパワーはJリーグではちょっと飛び抜けたレベルなので単純なロングボールでも押し込まれることになり、72分には高嶺のクロスからジェイにあわされポスト直撃という場面は作られた。
しかしセレッソは4-4-2のブロックによる秩序で大きな混乱はきたさない。
つい先日まで相手の秩序に対して完全に後手を踏み、ちゃぶ台をひっくり返してカオスで対抗していたのが嘘のようだ。
3日前の試合に続いての西尾の左SBだが、おそらく3日前の試合で初めてやった時はスクランブルだったと思う。丸橋が負傷したがベンチにSBはいなかったのでそうするしかなかった。
ただそれが上手くいったことで大きなオプションの1つになった。
西尾をSBに入れることができれば4-4-2のオーガナイズは崩さなくても良くなる上に、クロスに対してファー待ちしている相手にも西尾をぶつけることができる。
おそらくロティーナのときなら5-3-2とかで対応していたと思うが、小菊監督の下ではまだ5-3-2のトレーニングはしていないだろうから、4-4-2を維持できるのはかなり大きい。
そして88分に試合を決めるゴール。
スローインから抜け出した西川の折り返しは一旦札幌に跳ね返されるが、そのセカンドボールを拾った乾が大久保に落とすと落ち着いて相手を外してゴール。セレッソが3点目を奪い試合を決めた。
試合はこのまま終了。難しい前半だったが終わってみれば0-3。セレッソ大阪が3月以来となるリーグ戦連勝を飾った。
■その他
点差ほど両チームに差があった訳ではないが、終わってみれば0-3。素晴らしい結果となった。
ただ、札幌が色々な意味で特殊なので判断が難しいが、前半の上手くいってなかった部分をどう捉えるか。
中島が頑張っていたけどそれをベースにするのは仕組みとしては厳しい。後半の乾のポジショニングも乾しかできないことならば仕組みとしては難しい。
もちろん個々のスキルには違いがあるので精度に差があるのは当然だが、少なくとも前半は上手くいってなかった。
前半アディショナルタイムの先制ゴールがなければ試合展開はもっと違っていただろう。
前から取りに行くということは当然リスクにもなりえる。それを踏まえて小菊監督がチームをどう持っていくかに注目していきたい。
0 件のコメント :
コメントを投稿