2021年3月10日 19時00分:ヤンマースタジアム長居
予想スタメン |
アウェイ2連戦を経てホームに帰ってくる明治安田生命J1リーグ 3節。セレッソ大阪はヤンマースタジアム長居で昨季までの指揮官ミゲル・アンヘル・ロティーナ率いる清水エスパルスと対戦する。
■2021年の清水エスパルス
2年間に渡ってセレッソ大阪を率いたミゲル・アンヘル・ロティーナが監督に就任した清水エスパルス。
もうその経緯は触れないが、まだ少し何だか複雑な感情を抱く部分もある。
そんな清水エスパルスは昨季は16位。例年であれば降格の可能性もあった順位に終わったこともあり、このシーズンオフは大型補強を敢行。Jリーグで最も移籍市場を賑わせたチームだった。
獲得したのはJ1からだと、中山克広(横浜FC)、指宿洋史(湘南)、鈴木義宜(大分)、原輝綺(鳥栖)、片山瑛一(C大阪)、J2からはディサロ燦シルヴァーノ(北九州)、永井堅梧(松本)、海外からは権田修一(ポルティモネンセ)、ウィリアム・マテウス(コリチーバ)、チアゴ・サンタナ(サンタ・クララ)。
期限付き移籍から復帰した選手と昇格した選手を除くと10人が加入。そしてチームを去った選手は13人。Jリーグではどのチームも30人程の編成となっているのでおよそ1/3の選手が入れ替わるという大なたである。
特に積極的に動いたのはDFライン。昨季はなんと70失点と1試合平均2点以上の失点を喫していたので動かざるを得なかったという部分もあるだろう。ロティーナ監督も清水の監督に就任するにあたってDFライン、特にCBの補強を望んだという。
そしてこの新加入選手のほとんどは、すでにチームの中心選手となっており、ここまでのリーグ戦では2試合で15人が出場しているが、そのうち7人が新加入選手となっている。
布陣は4-3-3。セレッソ時代は4-4-2を使うことが多かったので、メディアなどではロティーナ=4-4-2というイメージがあったようだが、東京V時代は4-4-2を一度も使っていないことからもわかるように、実際は4-4-2に特別なこだわりがあるわけではない。
むしろセレッソ時代、4-4-2にこだわりがを持っていたのは選手やチームの方だった。
とはいえ当然ながら4-4-2を嫌がっているわけでもない。なので清水の布陣は4-3-3がベースになっているものの、相手のDFラインにプレッシャーをかけるときなどは4-4-2に変化。
その時は右IHに入る選手、開幕戦ではディサロ燦シルヴァーノ、第2節では後藤優介が1つ前に出てきて2トップになる。そのためメンバー表では右IHに入る選手がFW登録になっている。
そしてこのチーム。我々もよく知るロティーナのチームということで、ボール保持、非保持のそれぞれの局面で形を変えることもできる。
ビルドアップの時は片側のSBが残る片上げ3バック。そしてアンカーの選手が落ちる3バックと相手のやり方や状況によって使い分ける。
特徴的というか、セレッソ時代と特に違っているのがこの片上げ3バック。セレッソでは右SBの松田陸が最終ラインに残り、左SBの丸橋/片山は大外レーンを前に出るという形だったが、清水で最終ラインに残るのは左SBでここまでルヴァンカップを含めた全公式戦でフル出場をしている片山。さらに右SBの原は大外レーンを前に出るのではなく、内側に入ってCH的なポジションを取ることが多い。セレッソでも右SB松田陸が内側に入ることもあったが、その時はCHがCBの間に落ちる時がほとんどだったので、構造自体が少し変わっていると言えるだろう。
この右SBの原が松田陸や丸橋と異なる動きになっているのは、右サイドの大外レーンには中山というサイドアタッカーがいるから。彼が右サイドの大外レーンをベースのポジションとしているので、原が安易に上がってしまうとポジションが重なってしまうからである。
右サイドの大外レーンに触れたので、そのままボール保持のポジショニング、ポジショナルプレーのベースとなっている立ち位置について話しをすすめると、左サイドの大外レーンを担当しているのは左WGに入るカルリーニョス・ジュニオ、もしくは左SBの片山。片山は3バックビルドアップの時に最終ラインに残るのでその時はカルリーニョス・ジュニオ、アンカーが落ちて片山が前に出られる時はカルリーニョス・ジュニオが内側に入るという立ち位置になっていることが多い。
ただし「内側でプレーすることもある」ということからもわかるようにカルリーニョス・ジュニオは右利きのいわゆる逆足WG。なので左の大外レーンに立っていても内側に向かってプレーしようとする、清武や柿谷がやっていたようなロティーナサッカーでいうエースポジション的な選手でもある。
なのでカルリーニョス・ジュニオが内側に入ってきた時に左の大外レーンに出ていくのは、左IHの中村。この辺りはセレッソではあまり見られなかった関係性になっている。
一方、右サイドは少し関係が異なる。
先程触れたように右サイドの大外レーンは右WGの中山。スタート時点では左サイドと同じである。しかし中山は右利きの右サイドアタッカー。そのため内側に向かってプレーすることは少なく、基本的に中山はレーンを移動する動きは少ない。
となるとその隣にいる右IHはどう動くかということになるが、この右IHの役割はゴール前に後ろから飛び出していくストライカー。IHは5レーンでいうところのハーフスペースを立ち位置にしているのでそこに後ろから飛び込んでいくのだ。
これが見事に成功したのが、開幕鹿島戦での2点目。左サイドからのクロスに対し途中交代で右IHに入った後藤が後ろから飛び込みゴール。後藤が飛び込んだ位置は鹿島の左CBと左SBの間だった。
次にボール非保持について。
ベースとなっているのはゾーンディフェンス。先程も書いたように4-4-2と4-5-1を使い分けるが、基本的にはセレッソでやっていた時と同じ様に、中を閉めて無理に飛び込まず確実にスペースを消して相手の選択肢を潰す。なのでブロックの高さ自体は低くなることが多い。
またクロスに対するポジショニングはやはりロティーナのチームなので徹底しようという姿勢が伺える。
そして、川崎F戦、東京戦で書いたサイドチェンジ、ピッチを横断させないためのやり方だが、これは4-5-1で中盤のセンターに3枚いることで対応。もちろん選手が異なるので厳密に言えば違うが、イメージとしてはブロックを作って守る時に藤田とデサバトの横に最初から奥埜を戻して対応しているというのがわかりやすいかもしれない。
セレッソのときもそうだったがボール非保持に関しては比較的早めに落とし込みが進むので、すでにある程度は形になっている。なのでルヴァンカップも含めた公式戦3試合で前半の失点はもちろん0である。
とはいえこのチームはまだ公式戦で3試合しか戦っていないチーム。
「自分たちのイメージ通りに試合が進んでいる」という状態は1試合の中でそこまで長くない。
この「イメージ通りに試合が進んでいる」状態というのは、ロティーナのチームなので当然ながら攻めている時間帯というだけでもないし、「イメージどおりに試合が進んでいない」状態というのも攻められている時間帯というわけではない。
この2つの目安になるのは「奪ったボールを運ぶことができているかどうか」。ロティーナのチームがブロックを下げて低い位置で守ることを厭わないのは、ボールを運ぶ手段を持っているから。もちろんボールを保持することで相手に攻められる時間を短くしようとはするが、ボール保持と非保持の両輪が回っていれば、たとえ引いて守る時間が多かったとしてもそれは想定内でありイメージ通りの状態。
しかしここまでのリーグ戦2試合+カップ戦1試合を見る限りはまだそれは限定的というのが現状である。
■プレビュー
セレッソ大阪の予想スタメンは前節と同じ11人とした。
ただ、連敗しているのでもしかすると何かを変えてくる可能性もある。
トレーニングが見られない状態が続いているので、ここなのか、次なのか、それともまだ先なのかはわからないが、いわゆる「抜擢」というのが起こり得るタイミングではある。
それに関しては前2試合をクルピ監督がどう捉えているかだろう。
一方の清水エスパルスの予想スタメンは、こちらも前節と同じ11人を予想。
前節はアディショナルタイムにFKを決められ同点に追いつかれてしまったが、それほど頻繁に選手を入れ替えるタイプでもないので同じ11人を継続。カップ戦で新戦力を見ていくという形になるのではないかと思う。
試合のポイントとしては、かつて我々がやりたかったことをやらせないこと。そしてやられて嫌だったことをやること。に尽きる。
「やりたかったこと」といえば試合のリズムを握ること。
試合のテンポを落とし、淡々を時計をすすめることである。
なので相手のテンポに合わせず、こちらから試合のテンポを動かしていきたい。
そして、かつて対戦相手は「守備陣系が整う前に素早く攻める」「早くボールを動かして攻める」などと言っているチームが多かったが、実際のところそれはそこまで怖くなかった。
怖かったのは一点突破でゴリゴリ来られること。鈴木とヴァウドの両CBは強いし、さらにその隣には万能の鉄人もいるが、ゴリゴリ攻めるのが一番効率が良い。
なので、この試合では川崎F戦や東京戦でも得点を奪ったSBからDFラインの背後を狙う形を何度も繰り返したい。
ロティーナ監督はセレッソ大阪の監督としての2年間で数々のジンクスを破ってきたが、この2チームが持つ最大のジンクス、J1リーグ戦における2005年から続くIAIスタジアム日本平でのセレッソ大阪未勝利記録、1999年から続く長居での清水エスパルス未勝利記録は、覆らなかった。
そして今季のここまでのリーグ戦でプレーしてきた選手のうち、
セレッソから得点を奪ったことがある清水の選手は、
中村慶太2点、後藤優介1点、金子翔太1点の3人で合計4点。
それに対して清水から得点を奪ったことがあるセレッソの選手は、
大久保嘉人13点、丸橋祐介1点、藤田直之2点、清武弘嗣4点、奥埜博亮1点、原川力4点、進藤亮佑2点、松田力1点、豊川雄太2点の9人で合計30点となっている。
ロティーナは、セレッソの1年目の序盤は確か3バックだったと記憶しています。ただ、後ろが重くなりすぎて、結局4バックに変えて定着していったような。
返信削除2年目の終盤に、相手によってはまた3バックも試すようになってましたね。