2021年3月1日月曜日

2/27 明治安田生命J1リーグ第1節 VS. 柏レイソル @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審村上 伸次
入場者数4,481人副審武部 陽介、馬場 規
天候 / 気温 / 湿度晴 / 9.1℃ / 32%第4の審判員上原 直人
VAR小屋 幸栄
AVAR柿沼 亨

セレッソ大阪C大阪

 

柏レイソル

 
  • 監督
  • レヴィー クルピ
 
  • 監督
  • ネルシーニョ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き

(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>


<選手コメント>


2021年の明治安田生命J1リーグが開幕。セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居に柏レイソルを迎えた開幕戦は、15年ぶりに復帰した大久保嘉人と坂元達裕がゴールを奪い2-0で勝利。大きな変革となるシーズンで好スタートを切ることに成功した。

■メンバー

セレッソ大阪の先発メンバーは、昨季までのファーストチョイス、キム・ジンヒョン、松田陸、瀬古歩夢、丸橋祐介、坂元達裕、奥埜博亮、清武弘嗣、豊川雄太に加え起用されたのは西尾隆矢、原川力、大久保嘉人。
西尾はダンクレー、進藤との争いだったが進藤はまだ90分間プレーするのは難しいとのことでベンチ入りに止まり、ダンクレーは今週頭からチームに合流したもののコンディション的にまだまだということなのだろう。19歳と20歳のCBコンビで開幕戦を迎えることとなった。
また藤田も進藤同様に90分間プレーするのは難しいとのことでベンチスタート。大久保は加藤や高木との選択だったのだろうが、コンディションと経験を買っての先発起用ということなのだろう。

一方の柏レイソルの先発メンバーだが、こちらも昨季の主力クラス、キム・スンギュ、高橋峻希、大南拓磨、古賀太陽、大谷秀和、瀬川祐輔、クリスティアーノ、江坂任に加え、起用されたのは上島拓巳、椎橋慧也、呉屋大翔。CBには福岡から復帰の上島、CHには仙台から加入の椎橋が入り、染谷、三原、ヒシャルジソンがベンチスタートとなった。
柏の布陣はJリーグ公式では4-1-2-3となっているが、3トップというよりも呉屋とクリスティアーノの2トップに江坂のトップ下というイメージ。
なので以下は4-3-1-2(4-1-2-1-2)で表記する。

■運べないセレッソ


柏の布陣が4-1-2-3というよりも4-3-1-2だったということで布陣としては図の形。プレビューでも書いたがオルンガが去った柏にとって今季はビルドアップが鍵となる。なので対4-4-2だと守備の1列目と2列目の間にアンカー、2列目と3列目の間にトップ下が立つ形になる4-3-1-2ということなのだろう。
この試合序盤で柏がペースを握ることになるのだが、実際に立ち上がりはCHの背後にいる江坂がボールを受ける場面がいくつか見られた。
しかし、それ以上にセレッソが苦しんだのは4-3-1-2で見せる柏の守備。
それに対してセレッソが全くボールを運べなかったからだった。

柏の守備の仕組みは2トップ+トップ下の前線3人で中央へのパスコースを消してしまおうというもの。
そしてサイドに出たところでIHがアプローチをかけトップの選手のプレスバックと合わせてボールを奪う。それを嫌がってトップへ長いボールを蹴ると迎撃形で人に激しくアプローチをかけ潰しにくる。
昨季までだと相手の守り方に対してこちらがどうやってビルドアップを行うかということが準備されていたのだが、今季はそういったやり方をとっていないので難しい状況だったと思う。

それが特に厳しかったのがゴールキックの場面。キム・ジンヒョンをはじめとする選手はボールを繋ぎたい。しかしその準備が無いので探してしまい時間がかかる。そうなればクルピ監督は早く出せと指示を出す。となると蹴ってしまうしか無いが、蹴っても特に空中戦に強い選手はおらず相手ボールになる。
早く出して相手の背後に長いボールを入れて前線を走らせることでなんとか状況を変えようとしていたが、セレッソにとってはかなり難しい時間帯だったと思う。

■2年間の蓄積と運べない柏

しかし15分を過ぎた頃から少しずつセレッソがボールを運ぶ場面が作れるようになる。
きっかけとなったのはその少し前、12分のキム・ジンヒョンから清武へのパスだった。

CB2人とキム・ジンヒョンのパス交換を行っている間に清武がスッと大谷の背後に入り、その清武にキム・ジンヒョンからピンポイントパス。そして清武がヘディングでDFラインの背後に流して大久保が走り込むというプレーである。
結局大久保がオフサイドになったが、このキム・ジンヒョンからのパスで清武というのは何度も見た形である。準備はしてきたものという訳では無いだろうが、相手の形を見て清武が動き、それにキム・ジンヒョンも応えた形だと思われる。

そして15分を過ぎた頃からようやく相手のやり方、狙いをピッチにいる選手達が把握したということなのだろう。
ビルドアップの時に両SBを前に出して、清武、坂元は中に入る。これで清武、坂元、大久保が柏の中盤3人それぞれの背後に立ち、相手SBには内側に入ったSHについていけばいいのか、それとも出てくるSBを見ればいいのかと判断を迷わせる状況を作り出すことができる様になった。

こうしてセレッソが15分ごろから相手陣内にボールを運び始め、柏を押し込む場面を作り出すとると試合展開が変わる。
柏も4-3-1-2で間に選手を配置しているもののそれをどう使うか、誰がどこに立つかというのはアドリブに近く、自陣からボールを運ぶというビルドアップの仕組み自体は整備されていないようだった。
その結果、せっかくボールを奪い返しGKからCBにパスを出すもそこでセレッソの2トップに寄せられてしまって時間がなくなると結局前線に長いボールを蹴ってしまう場面が続出。そうなれば瀬古、西尾の2CBも跳ね返す力はあるので十分対応できる。
そして柏はセレッソを押し込めないのでセレッソにボールを奪い返されても前線3人で中央を消す守備の形を作ることができない。となるとセレッソはCHを使ってボールを持てる。その結果が21分、24分の豊川のチャンス。そして26分の奥埜のシュートに繋がった。
そして奥埜のシュートで得たCKから丸橋のハンドにも繋がった。

ただ、これで完全にセレッソのペースになったとまでは言えなかった。
というのも、セレッソのビルドアップも選手個々で対応しているに過ぎず、チームとして確実にボールを運べる様になっていたわけでも無かったからだ。
なのでセレッソが柏を押し込むことができている時はいいが、ひっくり返されるとまた試合の立ち上がりの様になってしまう可能性も十分あった。

■試合を決めたレッドカード

しかしその後の35分。丸橋からのロングフィードで大久保が背後に抜け出そうとしたところを上島が後ろから手をかけてしまいファール。DOGSO、決定機会阻止で上島はレッドカード、退場となる。
DOGSOの4要件、反則とゴールの距離、プレーの方向、ボールをキープできるまたはコントロールできる可能性、守備側競技者の位置と数、全てを満たし上島のファールがなければ大久保はDFラインの背後に抜け出しGKと1対1だったということで、ファールの程度に関わらずファールであれば全て退場となるプレーである。
上島にとって難しくなってしまったのは丸橋のキックに対して中途半端に大南が動いたこと。大南にとっても反応はしたものの後ろに上島がいるということで途中でプレーを緩めた。その結果、お見合いの様な形になってしまった。上島にとってはほろ苦いJ1デビュー戦となってしまった。

この退場で柏は呉屋を下げてCBに染谷を投入。江坂が右SH、瀬川が左SH、クリスティアーノが1トップに入る4-4-1になる。

このレッドカードで得点が入ったわけでは無かったが、この退場により柏が4-4-1になったことでセレッソはかなり楽になった。
数的有利はもちろんだが、柏が4-4-1で守らざるを得なくなったことが大きかったのだ。

4-4-1で守ると、前半の立ち上がりに見せていたような中を閉めてサイドに誘導してという形で高い位置から守備をすることはできなくなる。
となるとセレッソはビルドアップで簡単にCHのところにボールをつけることができる様になる。
ここにボールをつけることができれば左右に展開しながら押し込むことができる。それができるだけの選手は揃っている。

もし相手が例えば昨季のセレッソの様なチームだったらまた話しは違っただろう。スペースを巧みに消して押し込むことができたとしてもフィニッシュはやらせないという形で守り、低い位置であってもボールを奪えばグループで運んで行ってしまうことができるからだ。
しかし柏の特徴は全く異なる。激しくアプローチに行くことで試合のペースを握ろうとするチームが、アプローチに行けなくなってしまった。そしてビルドアップもまだまだ整備中。となるとボールを奪っても前線に長いボールを蹴るしかなく、そのターゲットとなる1トップに入るのもDFを背負ってプレーするよりもDFに向かって前を向いてプレーするのが得意なクリスティアーノ。さらにセレッソに押し込まれているのでそのクリスティアーノのサポートに入りたい江坂と瀬川との距離も遠くなっている。
この状況であれば瀬古と西尾は十分対応できる。

そんな展開の中で生まれたのが42分の先制点。
両サイドを広く使いながらボールを動かし柏を押し込むと、原川と奥埜のCHで変化をつける。そして最後は松田のクロスに大久保がニアに飛び込みゴール。大久保嘉人のJ1通算186得点目、セレッソ大阪のユニフォームを纏って2006年11月11日ジュビロ磐田戦以来14年と109日、5,223日ぶりのゴールはこれぞストライカーという見事なゴールだった。

■落ち着いた後半


柏は後半開始から大谷、椎橋に代えてヒシャルジソン、三原を投入。おそらくセレッソのCHを自由にさせ過ぎているということでガッツリいける2人を入れてきたのだろう。

ということで前半の終盤に比べるとセレッソはCHのところで自由にボールを持てなくなりボールを運ぶのに苦労し始める。
そして51分にはクリスティアーノのクロスに瀬川がボレーシュート。キム・ジンヒョンがセーブするが柏の後半の狙いが垣間見える場面だった。
というのもこの場面ではクリスティアーノが少しサイドに流れ、そこにDFラインから長いボール。サイドに流れることにより江坂との距離が近くなる。なのでクリスティアーノはワンタッチで江坂に落とし、そこで江坂が一気に縦にドリブルすることで運ぶことができたのだ。
そしてセレッソとしてはクリスティアーノのところで瀬古がファール気味にでも潰せなかったこと、そしてボールをロストした時のポジショニング、縦にボールを運ばれている時のポジショニングがアドリブなんだなということも感じさせた。

ということで拮抗した展開に。
しかしセレッソは既にリードしているので、ここからバランスを崩す必要も、無理をしたりする必要もない。
柏は4-4-1の分、セレッソのCBでは楽にボールを持てるし、柏には相手を動かしながらボールを運ぶいった形も無いので、嫌な状態では無かった。そして柏にとってもまだ1点差だし無理をして仕掛けるには時間が早い、ということもこの拮抗している状態が続いていた要因の1つだろう。

そこでセレッソは61分に大久保に代えて高木を投入し、豊川1トップ、清武トップ下、高木左SHの4-2-3-1に。
さらに70分には豊川に代えて加藤を投入。
前線にフレッシュな選手を入れチャンスを伺う形をとる。

■追加点で試合を決める

そんな展開の中、75分ごろから再びセレッソが柏ゴールに近づく場面が増え始める。
柏にとってはビハインドの中で時間が少なくなっていく。しかし思うようにボールを運ぶことができない。そんな隙をついてセレッソがスペースを活用できるようになっていた。
後半は前半に比べ坂元がプレーする機会が増えるのだが、それは坂元のポジションを見て自身のプレーするレーンを変え、また時にはCHの横でプレーすることで坂元にアイソレーションの状況を作っていた松田のサポートによるものだろう。
83分には松田のパスミスから高木がイエローカードをもらうことになったが(笑)

84分にセレッソは清武に代えて藤田を投入。奥埜を前に出す。

するとその直後の85分。キム・ジンヒョンのロングキックから加藤がヘディングで背後に流すとそこに奥埜がサポート。さらにそこに高木が入るもボールがこぼれるが、加藤が拾う。
加藤のシュートは惜しくもポストに跳ね返されるが、後ろから飛び込んだ坂元がこぼれ球を右足で叩き込みゴール。
セレッソが待望の追加点を奪う。
無理をせずに我慢して試合を進めることでやってきたチャンスを確実にものにして見せた。
加藤のシュートも惜しかったが、初ゴールは次の機会に。
おそらくクルピ監督が言う「気に入った若手2人」の内の1人だろうから次のチャンスもやってくるだろう。

その後もセレッソは着実に試合を進めてそのまま試合終了。開幕戦は2-0で柏レイソルを下し勝ち点3を獲得。クルピ監督の対柏、対ネルシーニョの無敗記録はまた伸びる形となった。

■その他

結果としては2-0、危なげない勝利という展開になったが、正直なところ退場者次第でどっちに転んでもおかしく無かった試合だったと思う。
もしセレッソに退場者が出ていたらスコアはひっくり返っていた可能性もあるし、退場者が出ていなければどうなっていたのかわからなかった。
とはいえ、相手に退場者が出た中で確実に勝ち切ったという点で十分評価できる試合であったことは間違いない。
また無駄なイケイケ感もなく、焦らずじっくり試合を運ぶという大人の試合ができた点も良かったと思う。

この試合がトップチームデビュー戦となった西尾。試合展開にも恵まれたが自分の強みも発揮できたし、そこでは十分J1でも勝負できるということがわかったのは大きな自信になったのではないかと思う。
翌日の練習試合で進藤、ダンクレーもプレーしているが、このままポジションを掴むつもりで頑張ってほしい。

また15年ぶりの復帰戦で先発しゴールを決めた大久保。得点の場面はこれぞストライカー、これぞJ1最多得点記録者という見事なものだった。そしてもう1つ感じさせたのが中盤に落ちてくる時の上手さ。1トップだとあまり落ちてこられても困るが、豊川や加藤といったDFラインの背後を狙えるストライカーとの2トップだといい関係を作れるのではないかと思う。

そして柏レイソル。
退場者を出してしまったという難しい試合にはなったが、ちょっとビルドアップの部分がまだまだ苦しいなあと感じさせた。
なかなか意図した形でボールが運べないので、セレッソにとってはかなり楽だった。
組み立てが上手いと評判のドッジが入れば変わるのか、それとも別のやり方を考えるのか。
柏にとってはここをどう解決するのかが今季のポイントとなりそうだ。


1 件のコメント :

  1. いつも分析ありがとうございます。
    ・昨年までのベースがどのへんで引き継がれていて、引き継がれていないのか?
    も教えていただけると嬉しいです。

    あと、見ていると、セカンドボールの回収が良くできていたな、というのは素人ながらの印象でした。
    昨年はポジションはいいのに、セカンドボールはうまく拾えないもどかしい場面も多かったなと。

    最後に、相手の守り方に対してこちらがどうやってビルドアップを行うかということが準備されていたと書かれていますが、
    見ている側としては、去年のほうが窮屈感はありましたね。ミスも多かったからかもしれませんが。

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