2021年3月19日金曜日

3/17 明治安田生命J1リーグ第5節 VS. 大分トリニータ @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審岡部 拓人
入場者数5,230人副審八木 あかね、松井 健太郎
天候 / 気温 / 湿度晴 / 9.7℃ / 47%第4の審判員村井 良輔
VAR山本 雄大
AVAR吉田 哲朗

セレッソ大阪C大阪

 

大分トリニータ大分

 
  • 監督
  • レヴィー クルピ
 
  • 監督
  • 片野坂 知宏

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き

(入場者数上限「10000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催

<監督コメント>


<選手コメント>


開幕7連戦の6試合目となる明治安田生命J1リーグ第5節、セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居に大分トリニータを迎えての一戦は試合終了間際の坂元のゴールで1-0の勝利。3連勝となった。

■メンバー

セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節と全く同じ11人。クルピ監督はレギュラー組とサブ組にハッキリと線を引くタイプなので、メンバーを入れ替える理由は「(前の試合で圧倒されたなどの)結果が出ない」か、「レギュラー組のコンディションに問題があるか」のどちらかのみ。そのどちらにも該当しないということであれば、そのままの11人ということになる。
プレビューでも触れたが現時点のレギュラー組と言えるのは「先発11人+ほとんどの試合で途中投入される加藤陸次樹・藤田直之・高木俊幸の3人」。
なので、ベンチ入りメンバーを含めた18人のうちレギュラー組14人と控えGKを除く3人がチーム内で競争されている枠となるが、ここに今回入ってきたのが西川潤。松田力が外れ西川がベンチ入りとなった。

一方の大分トリニータのスターティングメンバーは前節からGK高木駿、CH下田北斗を除く9人を入れ替え。こちらは前節までのリーグ戦消化がセレッソよりも2試合少ない(G大阪戦の延期に加えセレッソが前倒しで11節を消化済み)3試合にもかかわらず既に19人の選手が先発していることからもわかるように、片野坂監督はターンオーバーで選手を入れ替える戦い方を採用していることと、セレッソが前節から中3日での試合であることに対し、大分は中2日であるという影響もあるのだろう。
刀根亮輔、黒崎隼人、香川勇気は今季リーグ戦初先発。小出悠太、高畑奎汰、高澤優也、伊佐耕平は今季リーグ戦2度目の先発となる。
ちなみに高澤は昨季の第29節、アウェイ大分戦の試合終盤にキム・ジンヒョンのスーパーセーブで何とか守り切ったヘディングシュートを放った選手。そしてもっと遡れば、2014年度の高校サッカー選手権準決勝 前橋育英対流経大柏、1-1で迎えたPK戦で唯一PKを失敗したのが流経大柏の高澤、そして前橋育英の決勝進出を決めた5人目のキッカーは坂元達裕。またさらにいえば、流経大柏の1点は今回坂元と共に日本代表に選出されたFC東京の小川諒也が決めたものである。

■出来るだけ前で守備をしたい大分

前半のボール保持率はセレッソ52%、大分48%。ボール保持率ではそれほど差はつかなかったが、ピッチを3分割したプレーエリア比較では明確な違いが見られた。
セレッソゴールに近い1/3でのプレー比率(セレッソにとってのディフェンシブサード・大分にとってのアタッキングサード)が14%に対して、大分ゴールに近い1/3でのプレー比率(セレッソにとってのアタッキングサード・大分にとってのディフェンシブサード)が32%と倍以上の差。立ち上がりに少し大分がセレッソ陣内に攻め込む時間はあったが、前半はどちらがボールを保持しているかに関わらず、多くの時間で大分陣内にボールがあったということである。
ただしJ1で3シーズン目を迎える大分の過去2シーズンでの武器となっていたのは疑似カウンター。相手を自陣に引き込みカウンターの様な状態を作って一気にフィニッシュまで持ち込むという展開が武器のチームなのでこういうスタッツになることも多い。
とはいえ、この展開は大分にとって狙い通りという訳ではなかったと思う。

これまでのチームを支えた多くの選手が去ったこと、一昨季から継続しての課題となっている得点力不足。今季の大分にはこの2つの大きな問題点があり、それを解消するために「これまでの大分のスタイルは継続しつつも現代サッカーの新潮流も取り入れたい」との狙いを持って今季をスタートさせた。
その狙いの具体案の1つが開幕戦で見せた4-4-2だったのだろうが、うまくいかなかったために布陣は昨季のものに回帰。しかし出来るだけ前で守備をしたいという狙いはあるのだろう。
その流れは片野坂監督の監督としてのルーツでもある札幌のペトロヴィッチ監督も同じように進んで行ったので、その意図はなんとなくわかる気がする。

ということで5-4-1の陣形で守備をする大分は、1トップの伊佐がハーフウェイラインを超えたところに立ち比較的高い位置でブロックを作る。
その伊佐はセレッソのCBにまでアプローチに出ていくいくことはほとんど無いが、CBからCHやSBにボールが出るとそこには迎撃型で必ずブロック2列目の4人がアプローチに出るという形をとっていた。

しかし、これに対してセレッソは原川・奥埜のCHが最終ラインに落ち、さらに清武も降りてくることで大分の守備の基準点をぼかそうとする。
大分の守備はCH、SBにボールが入ってきた時という「人」が基準となっているので、人が入れ替わったり動いたりすると2列目4人のポジションも動かされることになるのだ。

そうなればセレッソが大分の5-4-1の5と4の間に縦パスを入れる場面が出てくる。
ここに縦パスを入れられると守備ブロックは撤退するしかなくなるので、守備ブロックを下げて守る場面が続出。
最終ラインに5人並んでいるのでゴール前で早々スペースを開けてしまうことはないが、パスをブロックの内側に差し込まれて撤退するというケースが多かった。
ただ、セレッソもそれに対して、例えば去年までのチームの様に「急いで攻め込まず真綿で首を絞める様な形でボールを動かしながら坂元が1対1で仕掛けられる状況を作ろうとする」戦い方ではなく、「積極的にゴールに向かってチャレンジする」戦い方をするのでボールを奪い返すことができ再び高い位置からの守備にチャレンジできるのだが、結局縦パスをライン間に差し込まれて撤退するという、前からと撤退を繰り返す様な形になっていた。

■ビルドアップがうまくいかない大分

前半のシュート数はセレッソの5本に対して大分は3本。
今季の1試合平均シュート数が11.8本で、前半なのでその半分と考えると両チームとも平均に満たず、両チームともにシュートをなかなか打てないという前半だった。
セレッソのシュートが少なかったのは先に書いた大分の守備が理由。最終的に最終ラインに5人並んだ形で撤退するのでシュートを打つためのスペースを開けてもらえなかったからだった。セレッソの戦い方的にはこれに対しては何度もチャレンジする中でアタッカー陣のアイデアに期待というところだろう。続けるしかない。
一方の大分はゴール前に良い形でボールを届ける回数を増やしたいところ。大分はそもそもシュート数が多いチームではない。(なのでシュート数を増やしたいというのが今年の課題なのだが)その理由は疑似カウンターが大きな武器だからで、チームの方向性として沢山シュートを打ってというよりも、疑似カンターでボールを運んだところで確実にチャンスをゴールに結びつけようとするスタイルのチームだからである。
しかし大分はその武器を発揮するための肝となるビルドアップがあまり上手くいっていなかった。

大分がビルドアップを行う時のベースとなる形は3-2-5。WBは高い位置をとり前線は5枚になる。それに対するセレッソの陣形は4-4-2。そしてこの大分のビルドアップに対してセレッソは最初から2トップが最終ラインにまでアプローチにでる形ではなく、2トップはCHを背中で消す中を閉める形を取った。
大分としては数的有利となっている最終ラインの3人で2トップの背後にボールを入れたいところなのだが、しかしこれが全く上手くいかず。セレッソの2トップが食いついてくれないので全く良い形でボールを運べない。

ならばと大分はCHの下田を最終ラインに落として4バック化、いわゆるミシャ式を使う。しかしセレッソはそれは知ってるとばかりに2トップの内のボールと逆サイドの選手が1人になったCHを捕まえる。
ではと大分はシャドウの選手が下がってビルドアップの出口になろうとするが、そこにはセレッソのCHが迎撃型で対応。
なので大分は全く良い形でビルドアップ(守備のファーストラインの裏にボールを運ぶこと)ができず、ボールは大外のWBに出すだとなり、そこから大分がアタッキングサードまでボールを運べるかどうかは、大外レーンから縦にボールを運ぶことができるかどうかだけという状態になる。
これまでも何度も書いているが、4バックに対して有効なのは「横断」に代表されるようなブロックの中にボールを刺すことができたとき。
しかし大分はそれができず大外レーンを縦に運ぶことがほとんどなので、クロスがよほどピンポイントで合わない限り厳しい。
また大分がサイドでボールを運んでも、セレッソは坂元が昨季もやっていたように松田陸の隣にまで落ちてくることもできるので同サイドだけで崩し切るのはかなり難しい。

そして時間の経過とともにセレッソが大分のボール保持に慣れていくと、最終ラインでボールを動かしている時にパスがずれたりしたところをきっかけに中からFW、SHを順に押し出すようなアプローチを受けWBのところがボールの奪いどころに。
また何とかそのプレッシャーを回避しようとGKにバックパスを戻したとしてもそこにもプレッシャーがかかるのでロングキックで逃げるしかない状態に。しかしロングキックに対しては瀬古と西尾のCBで確実に対応できる。
このあたりは主力選手がごっそりと抜けた影響もあるのだろうが、大分としてはもう少しビルドアップからボールを運ぶ形を整理しなければならないだろう。

とはいえ、大分にとってはセレッソボールになっても最終的にブロックを落として5-4-1になれば守り切ることができていたので悪くはないという状態だったのかもしれない。
そしてどこかで一度疑似カウンターの様な形を作る、それまでは粘り強くやり続ける。という考え方が大分のスタイルとも言える。

■オープンな展開に

両チーム交代なしで迎えた後半。前半の終盤からセレッソはブロックを作るだけでなく大分の最終ラインに対してうまくアプローチをかけることができるようになっていたので、後半はその流れを継続。立ち上がりに大久保が2度ほどチャンスになりそうな場面を迎える。

しかし、前に出ていくということは相手の攻撃のスピードを上げることにもつながる。
ということで徐々に試合はオープンに。前半はあまりなかった大分がアタッキングサードに侵入していく場面が、後半になると少し目立つようになる。

そんな中で目立っていたのが、前半にも書いた坂元が松田陸の外側に落ちて守る形。これは昨季の大分との開幕戦でもやっていた形である。

今季は全くトレーニングを見ることができていないのでわからないが、これまで通りであればクルピ監督の試合に向けてのトレーニングは、サブ組を対戦相手に見立てた紅白戦が中心となる。
もちろんある程度のスカウティングや対策は行うが、相手を置かずに選手の動き方やボールの動かし方を確認するというトレーニングは全くと言って良いほどやらず、サブ組が対戦相手と同じフォーメーションを使う紅白戦を行い、その中でレギュラー組がどういう対応をするのかを実際に動きながら、そして話し合いながら戦い方が定まっていくという形である。
こういう部分には昨季までやってきたことが活きる。新しく何かが加わることは少ないだろうが、これまでやってきたことはまだ選手に残っている。

この状況を受けて大分は58分に下田と高畑に代えて小林裕紀と三竿雄斗を投入。下田は中2日連戦だったからで高畑はビルドアップの部分の改善なのかもしれない。

そしてセレッソは64分に大久保に代えて西川潤を投入。大久保は流石に少し疲れが見えていた。
この交代で布陣としては西川が左SH、清武がトップ下の4-2-3-1にしたんだと思うが、清武は西川に中央でプレーさせてあげたいと気遣ってか清武と西川がポジションを入れ替える場面がかなり多かった。

しかし試合は動かず。
オープンな展開になっているのでボールはかなりいったりきたりするのだが、両チームともにシュートは全くないという不思議な展開。
もちろん過密日程による疲労感も大きいのだろう。
71分には西尾がルーズボールの対応をミスし、カウンターを受けそうな場面があったがことなきを得た。

71分に大分は黒埼と伊佐に代えて松本怜と小林成豪を投入。高澤がトップに。さらに83分には渡邉に代えて2種登録の高校生屋敷優成くんを投入。屋敷くんはルヴァンカップではすでにプレーしているがリーグ戦ではこれが初出場となる。
そしてセレッソも85分に豊川に代えて加藤陸次樹を投入。両チームともに前線の選手を入れ替える。

この両チームの交代策が次々と行われている途中の80分には渡邉が切り返したボールをスイッチするような形で自分のものとした小林が思い切ってシュートを狙うがポスト直撃。セレッソはことなきを得た。
この小林のシュートと、そこからのこぼれ球を高澤が右足で放ったシュートの2本が大分の後半のシュート全て。後半の大分にこの2本以外はシュートとして記録されたものはない。

ボールは行ったり来たりするものの両チームともにチャンスはなかなか作ることができないという展開が続いたが、87分に突然目の覚めるようなシュートがポストの内側を叩いてゴールネットを揺らす。
坂元が必殺技を使いながら右サイドからクロスを入れるも三竿に跳ね返されてセカンドボールは清武の元へ。
清武はドリブルで左に持ち出してから身体を捻ってクロスを入れるがそれも三竿に跳ね返される。
しかしそのこぼれ球を坂元がダイレクトでシュートを放つと、ボールの真芯を捕らえたか目の覚めるほどのスピードでゴールへ。
これには誰もがノーチャンス。強烈なゴールでセレッソが先制に成功した。
そしてこれがセレッソの後半唯一のシュート。前半からシュート数が少ないと書いたが、後半に至ってはセレッソ1本、大分2本。両チーム合わせても3本しかない。

ちなみにこの後VARチェックが入るが、ゴールシーンには全てVARのチェックが入る。確認されていたのは主にオフサイドに関する部分だとは思われるが、VARでチェックするのは当然ながらシュートを打った場面だけではなくシュートに至った過程もチェックする。具体的にいえば、昨季のACL準決勝神戸対蔚山戦で佐々木のゴールを取り消されたが、その対象となったのが最初に相手からボールを奪った安井のプレーだったというやつ。(あのプレーがファールだったかどうかは別)正式には攻撃のスタート地点からシュートに至るまでの一連を「APP(アタッキング・ポゼッション・フェイズ)」と呼んでおり、ゴールシーンではこのAPP全てがVARのチェックの対象となる。
で、この場面を振り返ると、セレッソの攻撃は自陣でセカンドボールを拾ったところから始まり、右サイドに展開、そして右サイドで坂元が仕掛け、そのこぼれ球を清武、清武のクロス、そのこぼれ球を坂元がシュートとAPPがかなり長いと考えられる。
なのでVARチェックに時間を要することになったのだろう。またAPPについては常に主審とVARの間で「APPスタート」とやりとりをされているそうだ。

得点後の90分、セレッソは奥埜に代えて藤田を投入するという時間を消化するための交代を行う。

そのままアディショナルタイムを消化して試合終了。
セレッソ大阪が1-0で大分トリニータに勝利。これで大分トリニータはセレッソ大阪から7戦連続勝利なし、7戦連続得点なしとなった。

■その他

セレッソにとっては試合を通して押してるという感覚はあったとは思うが、チャンスらしいチャンスが作れていた訳ではなく、一方で大分にとってもチャンスが作れていた訳ではなかったが、ピンチらしいピンチがある訳でもなく。そんな感じのなんともいえない試合だった。
ただ、この「試合を通して押している」というのも、最後に個人技・アイデアが爆発して勝ったからこそ言える言葉だろう。
こういった試合展開をどちらが望んでいたかといえば、アウェイゲームであり順位も下、そして戦い方のスタイルから考えても、大分の方だっただろう。大分にとってはもちろん最も狙っているのは勝利だろうが、失点以外は悪くはない試合だったはずである。もしかするとこういう展開というのもある程度考えていた、プラン通りだったかもしれない。

なので、勝ったとはいえセレッソには課題が残った試合だった。
クルピ監督は試合後に「拮抗した試合で交代に関してはかなり悩んだ」と語っているが、スタイル的にもこういった試合展開をより望んでいないのはセレッソの方だったはず。シュート数が前半5本、後半1本の計6本というのは明らかに現在のチームが意図する形とは異なる。
今回はたまたま最後に上手くいったが、この試合を動かすことができなかったこと、そのまま時間を進めるしかなかったことはチームの課題である。
なので、クルピ監督自身が語っている「勝ったので交代が良かった、ということにはならない」というのはまさにその通り。そしてそれ以上に変化をつける方法が単純に人を入れ替えるだけの交代しかないというのも大きな課題だと言える。

最後に坂元と原川、日本代表初選出おめでとう!


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