スタジアム | 県立カシマサッカースタジアム | 主審 | 今村 義朗 |
入場者数 | 11,251人 | 副審 | 武部 陽介、木川田 博信 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 9.1℃ / 28% | 第4の審判員 | 岡部 拓人 |
メンバー
鹿島
C大阪
- 監督
- ザーゴ
- 監督
- ロティーナ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き(入場可能数の「50%以下」又は
入場可能数が「20,000 人以上のスタジアムは30%程度からの段階的な緩和」)での試合開催
※入場可能数や適用時期は主管クラブが決定
<監督コメント>
<選手コメント>
今季最終節でありロティーナ監督が率いる最後の試合となる明治安田生命J1リーグ第34節、敵地県立カシマサッカースタジアムに乗り込んでの鹿島アントラーズ対セレッソ大阪の一戦は、先制するも終盤に追いつかれ1-1で引き分け。同時刻に行われた試合で名古屋グランパスが勝利したため3位に上がることはできなかったが、この引き分けで4位となり天皇杯でJ1から出場の川崎F、G大阪が優勝した場合、来季のACLにプレーオフから出場することとなる。
■メンバー
鹿島アントラーズのスターティングメンバーは、直近の試合から2人入れ替え。外れたのは小泉と山本の両SBで、小泉は負傷により今季右SBでの先発は初となる永木に、そして左SBは当初発表されたメンバーでは直近の試合から引き続き山本だったが試合前のアクシデントにより10/18の札幌戦以来の出場となる杉岡に変更された。
また直近の試合で負傷交代となったエヴェラウドだが鼻骨骨折ということでフェイスガードを使用しての出場となっている。
鹿島は前節にあたる第33節はACLに出場していた神戸戦だったため10/21に前倒しで実施。この試合は12/12の第32節以来中6日での試合となる。
一方のセレッソ大阪のスターティングメンバーだが、セレッソは中2日での試合となるが、鹿島同様に前節から2人入れ替え。こちらも外れたのは松田と丸橋の両SBで、前々節に負傷交代となった木本と、今季の先発は8/30の第13節以来となる高木を起用。前節は負傷交代となったことで心配された豊川は打撲だったということで引き続き先発メンバーに名を連ねている。
■坂元のポジション
この試合では松田が外れ木本、そして豊川と高木を起用ということは坂元のポジションはこれまでよりも1つ下がることとなる。
今のセレッソは4-4-2と5-3-2の可変で戦っているので4-4-2の時は慣れ親しんだ右SHだが、5枚になればWB。4-4-2の時も坂元が落ちるという形で対応していたこともあり、守備のタスクは問題なくこなせる選手だが、本格的に可変を使用している今は以前よりも守備の負担は高くなっている。
ただ、前線での起用はどうしても中央でのプレーが増えるのでドリブルで勝負できる回数が減り、またサイドにポジションを取れば中の枚数が減る。なので1つ下げる決断をしたのではないかと思われる。もちろん前節の松田があまり良くなかった影響もあるだろう。
この坂元を一つ後ろに置いたことがうまくいったのは5分を過ぎた頃から10分ぐらいまでの時間帯。
ビルドアップから清武がドリブルで運んだ場面では右サイドの大外に坂元がいて、さらに2トップもいるので坂元を使わずにクロスという選択ができたし、その後の坂元がドリブルで仕掛けようかという場面では2トップに加え大外から片山も入って来るという状況も作っている。
後ろにCBが3人いるので片山も思い切って前に出てくることができる。
しかしこの後はなかなか思うように、この坂元を1つ後ろに下げたメリットを活かす形を作れなかった。
鹿島にすれば当然坂元はセレッソで最も注意すべき選手の1人。ここを何とかしようとするのは当然だろう。
CHが下がって3バック化し、SHが中に入りSBが出ていくのは鹿島の定番の変化の形だが、それに加え坂元のいる鹿島の左サイド/セレッソの右サイドでは左SBの杉岡を前に出し土居が下がってくるという形でボールを運ぼうとする。
この形を取られてしまうと坂元も下がっていかざるを得なくなり、ボールサイドでありながら5バック化する時間が増えて行ったのだ。
この形はSBが高い位置に出ずっぱりになるので、セレッソがボールを奪えばSBの背後のスペースを狙うことができる。だからこその背後を狙える豊川と高木の2トップだったのだろうが、左サイドでは清武がボールを持って時間を作れるので片山が出て行く時間が作れる一方、右サイドでは時間を作れないので坂元が出て行く時間が無い。ということで坂元を高い位置でプレーさせることができず、坂元を一列下げた攻撃面でのメリットを出すことはできなかった。
■攻められない鹿島
こうしてセレッソはボール保持でやりたいことができていたわけではないという状況だったが、ボール保持はサッカーで4つあると言われる局面のただの1つでしかない。その他の3つの局面(ボール非保持、攻撃から守備への切り替え、守備から攻撃への切り替え)ではやりたいことが出来ていたので、ボールは鹿島がもつ時間が長かったもののセレッソとしては全く慌てるような展開ではなかった。俗にいう「ボールを持たせている」というヤツだ。
鹿島が杉岡を高い位置に出すようになって見られたのが左CBの町田がドリブルで持ち運ぶという形。これに対してはセレッソは2トップの1人主に高木がついていき5-3-2から5-4-1のような形になる。逆サイドではこの役割を清武が担当するので2トップでついていくのはこちらのサイドだけ。この動きをすることでドリブルで運ばれてCH(奥埜)やWB(坂元)を引き出される場面というのを少なくした。
そしてもう1つはFWが下がってクサビを受ける動きに対してはCBがついて行くこと。FWは間に立つことでセレッソのゾーンディフェンスの2列目を動かそうとしてくるのだが、ここに対して後ろからついていくことでCHの2人は惑わされることがなくポジションをとることができる。これは左右両サイド、つまり木本も瀬古もやっていた。
その結果鹿島はセレッソのブロックの中にボールを入れられることは全くできず、外でボールを動かしているだけという状況が続く。
16分にはエヴェラウドのシュートがポストに直撃するという決定機を作られたが、これはヨニッチのクリアミスから。
こういったミスが絡まない限り、鹿島はボールは持っているもののなかなかチャンスには結びつかない、さっきの「ボールを持たされている」という時間が続いていた。
■ビルドアップが安定していたことで
そしてこの状態を支えていたのは、セレッソがビルドアップで優位に立てていたことだろう。
前回対戦時は、藤田が最終ラインに落ちる3バック化に対して前半途中から鹿島に守備のスタート位置を調整され清武をCHに捕まえられることが多かったが、今回は最初から3バック。その中で木本が立ち位置を調整しながらビルドアップを行うのだが、今回は藤田が下がらない分CHは2枚と2枚でマッチアップしているので、CHを引き出せばその背後で清武を浮かせることができる。
マッチアップ的には清武と対面する右SBの永木のところには片山が空中戦のターゲットとなるべく高い位置に出て行っているので、清武を捕まえにいくわけにはいかず、また食いついて対応することも考えられる右CBの犬飼も、横で空中戦に強い片山と永木がマッチアップしているのでカバーリングのためにも前に出ていくわけにはいかない。ということでどうしても清武のところが浮いてしまうのだ。
ボール保持では坂元のポジションの関係で狙った通りではなかったが、ビルドアップでは一定の成果が出ていたセレッソ。
ここで成果が出ていたということは、鹿島がショートカウンターを仕掛けられていなかったということであり、攻撃から守備への切り替えの局面を減らすことが出来ていたということ。
なのでボール非保持でも、ボールは持たれているもののそれほど危険な局面を作られていたわけではなかったのだ。
■坂元を前に
松田はこのチームが始まった昨季開幕時点ではファーストチョイスの選手ではなく、昨季第2節まではベンチスタートだった。
しかし以降はプレーの幅を広げチームになくてはならない存在に。ロティーナ監督の下で最も成長した選手の1人だと思う。
その松田が、前節の内容もあって今節はベンチスタート。怪我で欠場はあったが、ベンチスタートとなったのは先ほど紹介した昨季の第2節以来である。
試合後のコメントで残している「スタメン落ちしたので、絶対に結果を残してやろうと思ってプレーしました。」というのは、そんな松田の本心だっただろう。
坂元が高い位置に出たことで攻撃に関わる回数が一気に増える。
51分には坂元からのスルーパスで豊川が決定機。GKからのビルドアップで始まっているので中に入っていたのはゴールキックでSBをピン留めしている片山だった。
そして55分には永木の背後に坂元が抜け出す。直後には藤田も抜け出しておりセレッソがカウンター気味にチャンスを作る時間が増えていた。
ただしこうなっているのは鹿島が後半からより前への意識を強めたからという部分もある。
3位を狙うにはセレッソも勝利が必要だが、この2チームは4位争いの直接対決でもある。そして4位は天皇杯の結果次第で高確率でACL出場権を得ることができる。
なので鹿島は何としてもこの試合で勝利が必要だからである。
前半にも書いたSHを下げてSBを出す形、そしてFWが降りてくる形を中心にセレッソを押し込もうとしていたからである。
■5-3-2
一方の鹿島は64分に永木に代えて広瀬を投入。
セレッソがSBの背後を完全に狙っており、永木は56分にイエローカードを受けている。前半にイエローカード2枚で退場となってもおかしくなかった三竿のプレーもあったので(ザーゴ監督は少し覚悟していた表情にも見えた)早めにケアしたかったというのもあるのだろう。
セレッソは布陣をハッキリさせたことで狙いも戦い方もよりハッキリする。
柿谷投入直後には松田のクロスに柿谷が飛び込む場面を作り、65分には清武のクロスに柿谷が合わせる場面、と鹿島がボールを持っている時間は長いのだが、チャンスの数は圧倒的にセレッソという展開となっていた。
時間の経過に合わせて前がかりになる鹿島に対して、もうセレッソの狙いはハッキリしていた。
広瀬、犬飼、町田が3バックを組み、右のWBには松村、遠藤がCHで、前線はエヴェラウドが左にずれ右に荒木が入る3-4-2-1のような並びにする。
しかし直後にこの布陣変更の隙を突いたのはセレッソ。広瀬が安易に食いついたところで柿谷が背後をとり一気にボールを運ぶと、最後は松田のスルーパスに柿谷が抜け出しGKと1対1に。沖がセーブして鹿島はことなきを得るが完全に1点ものの決定機。セレッソとしては決めておかないといけないものだった。
ここまでチャンスがありながら決められず、さらに決定機を外してしまっただけに嫌な流れになるかと思われたが、83分に中盤で清武がレオ・シルバからボールを奪ったところからショートカウンター。柿谷のシュートはブロックされるもそのこぼれ球を拾った松田が左足でビューティフルゴール。
「スタメン落ち」した松田の意地を感じさせる見事なゴールでセレッソが先制する。
が…後がない鹿島は長いボールをどんどん前につけてくる。
そんな中でキム・ジンヒョンからのゴールキックのこぼれ球を拾った杉岡はシンプルにロングボールで前線の上田に。そのこぼれたボールをエヴェラウドが落ち着いて流し込みゴール。90分に鹿島が1-1の同点に追いつく。
3-4-2-1にして前線に段差がある関係になっていたのがうまくいった形。そして自軍のゴールキックからの展開だったので、ここまで制限出来ていた攻撃から守備への切り替えが発生し、セカンドボールを拾う選手がいなくなっていた。
同点では足りない鹿島は、そこからCBの町田を上げパワープレーで攻め込みあわやという場面を作るも、キム・ジンヒョンと3バックを中心に何とかカバー。ポストにも助けられそのまま試合終了。
ロティーナ監督最後の試合は1-1の引き分けで終了となり、最低限のタスクである4位確保に成功し、天皇杯の結果次第で来季のACLに出場することとなった。
■その他
ロティーナ監督の最終戦は鹿島にボールを持たれる時間が長い試合となったが、ロティーナ監督らしく安定感のある素晴らしい試合だった。
チャンスの数を考えればできれば勝利で終えたいところだったが、タスクとしては引き分けでもOK。そのタスクは全うした。
ロティーナ監督の総括、そして来季については別の機会にまとめたいと思うので今回は触れないが、本当に楽しい2シーズンだった。
ロティーナ監督、イバン・パランコヘッドコーチ、トニ・ヒル・プエルトフィジカルコーチ、分析兼通訳の小寺真人さん。
本当にありがとうございました。
新しい学びや、これまで知らなかった楽しさ、そして上で戦うことの厳しさと苦しさを教えていただいた2シーズンを、忘れることは無いと思います。
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