2020年9月19日 18時00分:ヤンマースタジアム長居
中2日連戦の2試合目となる明治安田生命J1リーグ 第17節。セレッソ大阪は本拠地ヤンマースタジアム長居に鹿島アントラーズを迎えての一戦となる。
■現在の鹿島アントラーズ
大岩監督が退任し、今季からザーゴ監督が就任した鹿島アントラーズ。
しかし昨季なんとか掴んだACL出場権もまさかのプレーオフ敗退。そしてリーグ開幕戦、さらに再開後も含めてまさかの公式戦6連敗。
8/23のリーグ戦第12節まででの公式戦16試合で4勝しかできていないというかなり苦しい状態となっていた。
しかし8/26の第26節でFC東京に勝利するとそこから5連勝。ついに状態を上げてきた。
苦戦が続いていた理由は、サッカーを大きく変えたからだろう。
変えたのは戦い方というレベルではなくサッカーそのものである。
これまでの鹿島は人でサッカーをしていた。もちろんチームとしてのまとまりもあり、目の前の試合をどう戦うのかというコンセプトを共有していたが、主体となるのは鹿島の伝統といえる「勝負に徹底的にこだわる」中心選手。
彼らが若い選手や新しい選手にも「勝負に徹底的にこだわること」を求めることで目の前の試合に勝利していく。これが20ものタイトルをとったクラブのやり方だった。
なのでボールを持つ試合もあれば、ボールを渡す試合もある。目の前の試合に勝つために必要であれば戦い方を変えることに躊躇がなく、試合によって、さらには試合の中でも時間帯によって様々な顔をみせていた。
しかし「人」では解決できない問題が出てきたのがここ数年。選手が海外へと移籍するようになった影響もあるのだろうが、ヨーロッパで生まれた「サッカーとは何か」をベースにサッカーという競技自体を再構築したポジショナルプレーの考え方が世界的に広がり、サッカー自体が大きく変化したことで選手個々が徹底的に勝負にこだわるだけでは対応できない場面が増えてき始めていたのだ。その象徴的な試合が昨季の天皇杯決勝。個々が徹底的に勝負にこだわることで結果は0-2の敗戦となったが、内容的には点差以上の完敗だった。
そこで招聘されたのがザーゴ監督。鹿島伝統のブラジル人監督ではあるが選手時代はイタリアでのプレー経験もあり、指導者としてもローマ、シャフタール・ドネツクでゼーマンやルチェスク監督らの下でコーチをしていたことからヨーロッパの文脈も持つ監督として就任時には紹介されていた。
しかしこのサッカーそのものの変化になかなか適応できなかったのが序盤の苦しい試合といったところだろう。
各選手がポジションを取り、自陣からビルドアップしてボールを運ぼうとするものの、ことごとくミスでボールを引っ掛けられショートカウンターで失点を重ねていた。
サッカーそのものが変わるということは当然選手に求められるプレーや資質も変わる。
そして連勝を続けている現在、ようやく変化したサッカーそのものが浸透してきたのだろう。
そして当然ながら選手も何人か入れ替わっている。
入れ替わっている代表格はGK。クォン・スンテ、曽ヶ端と実績も経験もある選手がいたが、現在7試合連続で出場中なのが沖悠哉。下部組織出身のプロ3年目。去年まで公式戦の出場は0だった。沖のストロングポイントはキック。かなり飛距離も出るが、なにより精度か高い。
自陣からビルドアップしボールを繋ぐという戦い方をしているので相手も前線からプレッシングをかけてくることが多い。沖のキックはそれを一気に裏返すことができる。前節の清水戦ではロングレンジのキックをピンポイントでつけてる場面が幾度となく見られた。
そしてもう1人。ここ数試合で先発のチャンスを掴んでいるのが荒木遼太郎。同じポジションには名古屋から加入した和泉がおり、和泉の方が出場機会は多いのだが、連勝が始まった8/26のFC東京戦、9/5名古屋戦、9/9仙台戦と先発している。
荒木遼太郎は去年の東福岡の10番。高3の昨年は怪我で苦しみ選手権出場も逃したが、一昨年のAFC U-16選手権では大会MVPを獲得した西川潤と共に出場し優勝に貢献した選手である。
鹿島の現在の戦い方だが布陣は4-4-2。ビルドアップではCHの1枚が最終ラインに落ちる形をよく使う。なので自陣からビルドアップでボールを前線に運んでいこうという戦い方をするのだが、セレッソの様にじっくりゆっくりというよりも、縦パスをいれるタイミングを狙っているというようなボール保持をする。
最終的に狙うのはハーフスペース。SBが幅をとりながらファン・アラーノ、和泉(荒木)らの両SHや、2トップの一角に入ることの多い土居がハーフスペースに入り込み、そこからのクロスやコンビネーションでゴールを狙う。
スコアラーとして活躍しているのはエヴェラウド。オルンガに次ぐ10得点を記録している。
この選手はサイズもありヘディングも強く、さらに強烈な右足も持つ。
こうして書くとパワー系の選手かな?と思うが、実は結構なんでも出来るタイプ。
足下のテクニックもあり、ドリブルも出来る。さらにシーズン序盤には左SHでも出場していたように献身的にプレーも出来る。厄介な選手の1 であることは間違いない。
ハーフスペースアタックが上手くいかない時にでてくるのが、左SBに入る永戸からのクロス。
左SBには永戸に加え杉岡もいるというハイレベルなポジション争いをしているのだが、その中でも出場機会が多いのは永戸。仙台時代同様に、前に出てくるスピード、何度も繰り返すアップダウン、そして左足の高い精度は大きな武器となっている。
■プレビュー
セレッソ大阪の予想スタメンだが、中2日、中2日で続く連戦だが、前節は坂元と清武の温存に成功。当然彼らは戻ってくるだろう。そしてブルーノ・メンデスも怪我から復帰しており先発が濃厚だ。残りのメンバーは厳しい連戦となるが、変えにくい。藤田が戻ってくるとの報道もあるので変わるとすればそこか。そして左SBは昨季のホームでの対戦のことを考えると片山になりそうか。
一方、鹿島アントラーズの予想スタメンだが、こちらは中6日での試合ということで休養十分。
個々最近のレギュラーメンバーが揃うことになるだろう。前節は左SBに杉岡、左SHが和泉という組み合わせだったので、今節は左SB永戸、左SH荒木という人選になりそうか。
試合のポイントだが、まずは守備、非保持の面では、ハーフスペースをいかに閉めることができるかだろう。鹿島の攻撃は徹底してハーフスペースを狙ってくる。特徴的なのは個々数試合の相手とは異なり右サイドからの攻撃が多いこと。なのでCH、CBも含めたセレッソの左サイドで蓋をすることが必須となる。
中2日連戦でエヴェラウドと対峙するのは簡単なことではないが、約束事さえ徹底できれば十分抑えることはできるはずだ。
そして攻撃、ボール保持の面では、鹿島の得意なパターンはプレッシングからのショートカウンター。なのでビルドアップでミスをしないことが重要となる。左SBに片山が入るなら清武を上手く使ってボールを保持したいところだ。
そしてプレッシングのファーストラインを突破できれば鹿島は4-4-2でセットするのだが、SBが結構食いついてくる。なので狙いたいのはSBの背後。ブルーノ・メンデスを走らせるパターン、そして清武と片山の縦のポジションチェンジでSBの背後を使いたい。
クロス対応はセレッソほどの精度はないので、そこからのクロスでチャンスは生まれるはず。
アイソレーションからの坂元が1対1を仕掛ける場面ももちろん有効だ。
昨季は鹿島に2戦2敗とダブルを食らってしまったのだが、2試合とも勝たなければならない試合だった。
特にアウェイでの1戦目は、前半は完全に試合をコントロールし、チャンスも何度も作っていた。しかしそこで決められなかったことで鹿島にチャンスを与えてしまい、後半立ち上がりに一気に前に圧力をかけてきたことで失点。後はずらされないようにリトリートして守りながらカウンターを狙うという術中にまんまとハマってしまった。
そしてホームでの2試合目も、1試合目の経験から鹿島は普通に戦うと難しいということを把握していたので、立ち上がりに仕込んだセットプレーで勝負をかけ、そこでセレッソは失点。あとは完全に引きこもられそのまま敗戦。
最初に書いた鹿島の「勝負に徹底的にこだわる」姿勢にやられてしまったという試合だった。
現在鹿島も5連勝中と調子を上げているようだが、セレッソはこのサッカーで2年目。1年のアドバンテージがある。
中2日連戦という難しさはあるが、チームの完成度の違いを見せつけ、勝ち点3を獲得する。
このチームならそれが出来るはずだ。
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