2020年9月18日金曜日

9/16 明治安田生命J1リーグ第25節 VS. ヴィッセル神戸 @ ノエビアスタジアム神戸

スタジアムノエビアスタジアム神戸主審佐藤 隆治
入場者数3,206人副審馬場 規、浜本 祐介
天候 / 気温 / 湿度曇 / 26.2℃ / 73%第4の審判員松井 健太郎

ヴィッセル神戸神戸
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • トルステン フィンク
 
  • 監督
  • ロティーナ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>


<選手コメント>


ACLの関係で前倒しで行われる明治安田生命J1リーグ第25節。敵地ノエビアスタジアム神戸でのヴィッセル神戸対セレッソ大阪の一戦は前半に退場者を出してしまうという難しい展開になりながらも0-1でセレッソ大阪が勝利。9連戦の中でも最も難しい試合の1つである中2日連戦の試合で劇的な勝利を挙げ、リーグ戦の連勝を6に延ばした。

■メンバー

ヴィッセル神戸の先発メンバーは、前節から3人入れ替え。飯倉、安井、初瀬が外れ、前川、大崎、イニエスタが起用された。
イニエスタは前節途中出場で復帰していたが、リーグ戦の先発としては8/19の第11節柏戦以来。またおそらく負傷していたであろう大崎は8/29の第13節横浜FM戦以来の先発。前川はセカンドGKとしてずっとベンチには入っていたが、リーグ戦では第14節湘南戦以来で今季4度目の先発となる。
怪我人が続出しているとはいえ、この試合に限ればまだ前節から中3日。疲労度的にはまだ余裕があるという事で程んどの選手が継続して先発メンバーに名を連ねている。

一方のセレッソ大阪の先発メンバーは、こちらも前節から3人入れ替え。片山、坂元、清武が外れ、丸橋、西川、柿谷が起用された。
こちらは中2日での試合で、さらにこの試合の後も中2日で次節が待っていることを考えるともう少しメンバーを入れ替えるかと思われたが、強力なアタッカーを揃える神戸なので、走る川崎Fを追いかけている立場としては代えにくかったのだろう。
片山、坂元、清武と前節決勝点を奪った高木はベンチスタート。そして8/30の横浜FC戦を最後に離脱していたブルーノ・メンデスもベンチに復帰。ただし藤田が2試合連続のベンチ外となり、代わりに喜田がベンチに入っている。

■前回対戦の続き?を狙う神戸

神戸の布陣

神戸の布陣はJリーグ公式の表示では3-4-2-1になっているが、正確には3-1-4-2。しかも2トップが左にずれて古橋が左のハーフスペースに立つ形になっていた。
これは前回対戦時に神戸が選択したものと同じフォーメーション。最近は、5試合勝ちなし、ホームでは6試合勝ちなしという厳しい状況になっている神戸にとって、引き分けとはいえ手応えある試合だった前回対戦をベースにした戦い方をしようということだったのだろうか。
セレッソの敵陣での守備

神戸のビルドアップに対してセレッソは2トップの1人がアンカーのサンペールを意識しながらもう1人がボールホルダーへとアプローチをかける。
セレッソとしては中央を最短距離で来られるのを制限したいので取りに行くというよりも牽制をかける。
しかしその中でチャンスとあれば当然奪いに行く。そのスイッチになっているのがSH。それまでWBのポジションを基準にしていたSHが3バックのサイドの選手を基準に切り替えて一気に詰める。この動きに合わせて、2トップも3バックの残り2人に。CHも神戸のIHを基準にしていたところから1人がアンカーの選手へと基準を変える形になっている。
この形で何度かボールを回収できていた様に、これでボールを奪い返す、相手のパスを引っ掛けることができれば最高。2トップによる守備の1列目を突破されれば4-4-2のブロックへと形を変える。
このあたりはこの試合に向けて特別な形というよりも、セレッソのいつもの形だと言っていいだろう。
セレッソのセットディフェンス

4-4-2のブロックにセットした時は、2トップの1人がサンペールを捕まえるので4-4-2から4-4-1-1になる。前節横浜FM戦でもマルコス・ジュニオールのところで立ち上がり苦しんでいたので2トップの1人がCHのところに行く様になったのと同じ様な形だ。
サイドでの対応

そしてさらにSBの松田は普段よりも絞ったポジションをとる。これも横浜FM戦でもやっていた。同じ様な形にしていたのは神戸の布陣が左ズレの3-1-4-2で左のハーフスペースに古橋が最初から立っているからだろう。しかも神戸にはその背後に世界最高クラスの選手であるイニエスタがいる。なのでセレッソはハーフスペースには蓋をする。
サイドでの対応2

もしここに西川が出ていけない、出て行くのが遅れる場合は松田が出て行く事になるのだが、その場合は西川が松田のいたポジションに入る。
セレッソはSBがサイドに出て行った時にボールサイドのCHが埋めるというのがベーシックなパターンとなっているが、前節の横浜FMやこの試合の神戸は徹底してここを狙ってくるのでSHで埋め、「ハーフスペースは何がなんでも蓋をする」というやり方になっていた。

セレッソのこの対応によって神戸はセレッソのブロックの中にはなかなか侵入できない。イニエスタから西へのサイドチェンジが増えていたのはそのためである。
またセレッソにすればこうして神戸をいつもの様に自分たちの前でプレーさせることができていた。
セレッソにとって最も嫌なのが守備陣形を動かされること。動かされるのは背中を取られた時である。なので自分たちの前でプレーさせることができれば、誰がどこをどの順番で埋めるかまで徹底されているセレッソにとってはエラーが起こらない限りそう簡単に失点することはない。

そしてもう1つ。この段階では誰もそう思ってなかっただろうが、この形がこの試合のキーポイントだった。

■柿谷のドライブ

Jリーグではほぼ全てのチームが高い位置からボールを奪いに行く。自陣に引き込んでカウンターを狙うという戦い方もあるが、高い位置でボールを奪うことができれば一気にチャンスになるし、自陣に引き込む事で起こる事故も避けることができる。
例えば首位を走っている川崎Fは8/26からの3週間毎週水曜日に神戸と3試合を戦ったのだが、3回目の対戦となった試合では1-2とリードされる苦しい展開となったが、高い位置からの守備を徹底することで3-2の逆転勝ちへと持っていった。
神戸もその例にもれず、できるだけ前からボールを奪いにいきたいチームである。
神戸のプレッシング

神戸はセレッソのビルドアップに対して2トップが左にずれている事で空いている藤本の右に山口蛍が出てきて前線3人でアプローチをかけてくるやり方をとっていた。
これも前回対戦時にも行っていた方法であり、直近だと横浜FMがやっていた方法に近い。SBに誘導してそこにWBで縦にアプローチをかけ時間を与えない事で蹴らせてしまおうという狙いだろう。
柿谷のドライブ

そこでセレッソはCBを広げ、間に木本を落とす形で対応した。そして狙ったのは木本についてきたサンペールが空けたスペース。ここに入ってくる柿谷にボールを届け、柿谷がドリブルでボールを運ぶ。10分の都倉がシュートを放った場面もこの形からだった。
前回先発した浦和戦でも見せていたが柿谷のこのドライブ力は半端ない。浦和戦では入れ替わるきっかけにもなった部分もありハーフタイムで交代となってしまったが、この試合の様にチームの設計の中に配置すれば清武のプレーとはまた異なる特徴があるので、大きな武器になっていた。

■33分のアクシデントと素早い対応

神戸がボールを保持するもシュート数はセレッソの方が上、という展開が続いていた33分、大きなアクシデントが起こる。
カウンターで奥埜のパスから都倉が抜け出し放ったシュートは前川が弾く。そのこぼれ球を再び都倉が詰めようと左足を振るがその左足が前川の顔面をヒット。S1、著しく不正なプレーでレッドカードを受ける。
こういうこぼれ球に対するプレーは両者必死なので危険な状況になりやすいが、流石に足を振ってしまったのはマズかった。レッドカードでも当然のプレーだった。
5-3-1

この退場を受けてセレッソは木本をヨニッチの右隣に落とし布陣を5-3-1に変更。
41分~

そして41分に西川に代えて片山を投入する。
片山は投入直後は左に入ったが、5分ほどで奥埜と左右を入れ替える。
リーグ戦初先発となった西川はあまり自分のプレーができないまま残念ながら41分で交代となってしまった。

布陣変更直後の神戸はセレッソがどうなったのかが掴みきれていない様で、38分に柿谷が都倉退場後両チーム最初のシュートを放つ。
しかしすぐに把握すると再び神戸がボールを持つ様に。
45分にはダンクレーが足を滑らせたことがフェイントになってイニエスタがシュートを打つ場面があり、その後も山口蛍のシュート、酒井高徳のシュートなどあったが全て枠外。前半は0-0で折り返す。

■守備の人ロティーナ

退場者を出してすぐに5-3-1の布陣へと変更したセレッソ。1人少なくなったこの試合は最後までこの布陣で戦うこととなるのだが、この試合で見せた5-3-1は実に見事だった。

通常4-4-2から退場者が1人。しかもFWとなると4-4のブロックは生きているのでそのまま4-4-1の布陣となることが多いだろう。まだ前半30分。ここから60分は試合が続き試合も0−0。変更は最小限で済む。しかしロティーナは迷わず5-3-1を選択したのである。

4-4-1ではなく5-3-1を選択したのは最前線が1人になったからだろう。
FWの枚数なんて関係あるのか?と思うかもしれないが、セレッソの守備の場合大いに関係がある。1人だと1つのパスで剥がされてしまうので、相手のボールを運ぶ方向を全く限定できなくなるのだ。
限定できないと起こりやすいのが、SHを動かされること。SHが動かされるとCHとの間が広がりライン間を使われる。となるとCHの背中のスペースも使われるようになり、相手をブロックの中に侵入させてしまう。セレッソの堅守の秘訣の1つである「自分たちの前でプレーさせる」という状態が維持できなくなる。
5-3-1の仕組み

そこで選んだのが5-3-1。中盤の3人の役割としては全てCH。試合後のコメントで片山が語っている様に優先するのは中央を締めることである。中には何がなんでも入らせない。
しかし中盤3人で中央を締めるということは当然サイドにはスペースがある。しかしそこは空けてもOK。その変わりに最終ラインを5枚にし縦のスペースは消してしまうのだ。

相手のボール保持を制限できないのであればとにかく優先順位の高いスペースから順に予め人を立たせて消してしまおうということである。
4-4-2だと2トップで相手の攻撃方向を制限できるが4-4-1だと制限できない。であれば、予め埋めるところ/埋めないところを決めてしまう。
そして埋めないところに関しては全て前向きで守備をできる様に、5バックにして大外の最終ラインに人を立たせているのである。
これであれば4-4-2で守備を行っている時と同じ様に相手は常に自分たちの前でボールを持つ事になる。つまりセレッソは常に前向きで守備ができるのだ。

そして1トップになった柿谷のタスクはアンカーのサンペールを見る事だった。

ということでこの形、よく見ると最初に書いたサイドで神戸がボールを持った時の守備陣形とほぼ同じ立ち位置になっている。
ロティーナはこの布陣にすることで神戸がボールを持つ場所(=神戸にとってゴールへの直線距離が最も近い場所)を3センターの脇となるサイドのスペースにする。そしてそこにボールが入った時の守備陣系をそのまま最初の立ち位置にしたのだ。

なのでセレッソの選手にとっても布陣こそ変わってはいるが、普段それぞれのポジションで行なっていることと役割自体はそう変わらない。
木本も瀬古もCBもCHもやっているのでSBとCBの間を埋めるプレーの経験がある。3バックになっても今までやったことのない、特別に何か新しい役割が増えたわけではない。
中盤の3センターを当初左右何度か入れ替えたのは、神戸のボール保持の重心がどちらにあるのか見たかったのだろう。

さすが守備の人。ロティーナはどこをどう埋めれば守れるのかを知り尽くしているんじゃないかと思わせるほどの凄みを感じさせる采配である。

■ビルドアップ

これで神戸はセレッソの作るブロックの外ではボールを持てるものの中には入れないという展開が続く。
前半30分までの神戸がボールを持つがシュートはセレッソの方が多いという展開と同じである。
ただ、セレッソは重心を下げており、さらに1トップの柿谷もサンペールの場所にいるので最前線に人はいない。ということは前半の様なシュートまで持っていく形というのは作りにくくなるとも言える。
なので通常5-3-1にしてスペースを消すということは、攻撃はほぼ諦める、とにかく守りきるという選択になりかねない。そして「とにかく守る」という選択にとって残り時間60分はあまりに長い。なので多くのチームにとっては5-3-1で守るという選択は取りにくいという側面もあるだろう。

しかしセレッソは5-3-1で守るという決断ができた。
これができたのは先に書いた守備の安定だけでなく、セレッソはカウンターに頼らず、セットした状況であればボールを運ぶ術を持っているから。つまりビルドアップである。
5-3-1でのビルドアップ

セレッソはビルドアップの時に3バックが大きく両サイドに開きSBの松田と丸橋は前に出る、3-3-2-1の様な形にした。
神戸は引き続き藤本、古橋、山口の3人で制限をかける形。
ここで狙ったのはデサバトでサンペールを動かすという方法。サンペールが動いたスペースに奥埜が入って行く。
そしてこれが難しい様であれば片山へのロングボール。片山がSBに入った時も片山へのロングボールという方法を時々使うが、ここでは前線のターゲットとしてもプレーしてもらう。

もちろん1人少ないわけで、この方法で毎回うまく行くかと言えばそうでもない。なので片山へのロングボールという手段も用意している。
ただ、ボールを運ぶ場面も作ることができていた。
ビルドアップではポジショニングやキックの技術の部分に注目が集まるが、それと同等、もしくはそれ以上に大切なのはボールを受ける時の身体の向き。この身体の向きによって次に出すことができるパスのコースや選択肢が決まる。
かつてヴェルディでロティーナ&イバンの指導を受けた林陵平(群馬)が「イバンはポジショナルプレーのことを「ロケーションプレー」とも呼び、身体の向きも合わせてトレーニングを行う」と話していたが、セレッソでも当然そういったトレーニングを行なっているはずである。(前半は少し木本の身体の向きが怪しい場面もあったが…)

こうしてカウンターに頼らずとも、セットした状況を作ればボールを運ぶことができるからこそ5-3-1という選択ができたのだ。

■クルピパターン

61分、丸橋がボールを運んだところでダンクレーに倒されFKを獲得する。
このFKは跳ね返されるが、最終的にこぼれ球はデサバトが回収。デサバトは巧みなボールコントロールで山口、サンペールのアプローチを外すとアーリークロス。これをニアに飛び込んだ柿谷がヘディングで合わせゴール。62分に1人少ないセレッソが先制する。
先制点の場面

このアーリークロスにニアへ走り込みヘディングで合わせるというのは、3度に渡ってセレッソの指揮をとったレヴィー・クルピが多用した攻撃パターンの1つ。
この形は専用のトレーニングもあるほど何度も何度もトレーニングしてきた形。柿谷にとってもかつて何度も何度も繰り返しトレーニングしてきた形なので、身体に染み付いているのだろう。最近でもボールが出てこないことも多いが、試合中にもこの動き出しを見せることもある。
この場面でそれが見事に実ったのだ。

■危なげなく逃げ切り

68分〜

1人少ないセレッソに先制点を許した神戸は68分に一気に3枚替え。
大崎、酒井、西に代えて郷家、初瀬、小川を投入。3バックにしておく意味はないということでダンクレーとフェルマーレンの2バック。WBは左に初瀬、右に小川。郷家は前線に入る。

しかし神戸はセレッソの5-3-1の前にチャンスを作りきれない。
セレッソが消しているのは人ではなくシュートを打たれたくないスペース。さらにセレッソは常に守備ブロックの前にボールをおいた状態で守備をするのでチャンスらしいチャンスはほとんどない。
最後神戸はフェルマーレン、ダンクレーを前線に上げたがそれでも決められず。
DAZNでは神戸のシュート数は18、枠内シュートは10と紹介されたが、キム・ジンヒョンがセーブしたのは2本。つまり18本のシュートのうち16本は、10本の枠内シュートのうち8本はシュートブロックなどでゴールに向かって飛んでこなかったということである。
90+6分〜

セレッソは82分に柿谷に代えてブルーノ・メンデス、90+6分に奥埜に代えてJ1初出場となる喜田を投入し逃げ切り。

セレッソ大阪は退場者を出しながらも0-1でヴィッセル神戸を下し、連勝を6に延ばし、首位川崎Fとの勝ち点差を5に詰めた。

■その他

都倉の退場でゲームプランが大きく崩れたが、見事な対応で勝利した。
5-3-1を選択し、最後まで穴を開けることなくやり切ったのは本当に見事だった。
また結果的にではあるが、清武と坂元を完全に休ませることができたのも大きい。

次はまた中2日での鹿島戦。
この中2日連戦は今季の大きなポイントとなりえる試合である。
昨季の鹿島戦は2試合ともにこれしかないという形でやられる試合運びの巧さに敗戦となってしまったが、今季こそはチームの完成度の高さを見せつける勝利を期待したい。



2 件のコメント :

  1. 柿谷のニアでのヘッドがクルピがいた頃に練習した形、というのは初めて知りました。
    実際にクルピの頃にそういう得点があったという記憶はないんですけども…
    そういえばユンが監督の頃にはなんどかあったのを思い出しました。
    (山村が何度かやってたのを見た覚えがあります)

    ともあれ、練習してたとはいえあれをここで出せる柿谷のポテンシャルの高さに脱帽です。
    結果的に1トップになって(2トップより)、
    クルピ時代のような動きが出しやすかったというのもあるでしょうか。

    こちらに退場者が出たときどうするかというのは(あまりカードをもらわないセレッソでは)
    確認する機会がなかったのですがそれも今回確認できましたね。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      クルピの頃にこの形のゴールは結構ありましたよ。
      柿谷が1トップをやってた2013年は裏抜けパターンが多かったですが、その前の小松塁やカイオ、アドリアーノが1トップをやってた時はこの形のゴールもありましたし、これ一発で決まらなかったとしてもこからの展開でっていうのもありました。
      かつて酒本がよくやってたアーリークロスと見せかけてDFとMFの間に入れるボールも、このパターンがあるからこそ成立していたプレーでした。

      削除

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