2020年9月1日火曜日

8/30 明治安田生命J1リーグ第13節 VS. 横浜FC @ ニッパツ三ツ沢球技場

スタジアムニッパツ三ツ沢球技場主審飯田 淳平
入場者数3,373人副審馬場 規、塚越 由貴
天候 / 気温 / 湿度晴 / 29.1℃ / 77%第4の審判員窪田 陽輔
横浜FC横浜FC
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • 下平 隆宏
 
  • 監督
  • ロティーナ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>

横浜FC:下平隆宏監督
セレッソ大阪:ロティーナ監督

<選手コメント>

横浜FC:小林友希、手塚康平
セレッソ大阪:清武弘嗣、瀬古歩夢

今節から始まる9連戦の初戦となる明治安田生命J1リーグ第13節、セレッソ大阪は敵地ニッパツ三ツ沢球技場で横浜FCと対戦し1-2で勝利。
前々節の大敗後2連勝となった。

■メンバー

横浜FCの先発メンバーは前節から4人入れ替え。変わったのはGK南、右SBマギーニョ、CBヨン・ア・ピン、FW斉藤光毅で、六反、志知、小林、一美を起用してきた。
六反は前節の対戦相手が期限付き移籍元の清水戦だったため出場していなかっただけなので復帰した形、マギーニョ、ヨン・ア・ピンは前節負傷交代(ヨン・ア・ピンは詳細不明)しているので、戦術的・チームマネージメント的な入れ替えは一美のみと言える。
志知は左利きで本来左SBの選手だが、横浜FCは右SBの控えにいわきFCから今季加入したばかりの熊川しかいないので志知という判断になったのだろう。志知はルヴァンカップ札幌戦で右SBで起用されている。
またベンチには6試合ぶりに中村俊輔が入った。

一方、セレッソ大阪の先発メンバーは前節から2人入れ替え。変わったのは丸橋とデサバトで、左SBには片山、CHに奥埜を落としFWには高木を起用してきた。
試合後の会見によるとデサバトは小さな負傷を抱えているとのこと。そして丸橋はここ最近のプレーで少し疲れが見えていたこともあるが、この試合ではCKの時にこれまでは丸橋が大外のゾーン、その内側に瀬古(CB)という並びだったのを、内側に片山、大外に瀬古という形で立ち位置を入れ替えていたので、前節やられた大外へのCK対策という部分もあったのだろう。
人を入れ替えて空中戦にも強い片山を左SBで起用するなら元の並びでもいいんじゃ無いかという気がしないでも無いが、まあいいだろう。
ベンチには西川、都倉が戻っている。

■ボールを保持する横浜FC

横浜FCはCHに佐藤と手塚を起用してきたことからも分かる様にボールを保持する展開を望んでいた。
セレッソと対戦するチームのほぼ全ての監督が「先制されると難しくなるので、先制されたく無い」というコメントを出すほど対セレッソでは「先制点を奪われないこと」が相手チームにとって重要なポイントの1つとなっているが、下平監督にとってその手段の1つがボールを保持することだったのだろう。
横浜FCのビルドアップ
実際に試合が始まると、横浜FCは自陣からのビルドアップでボールを握っていく。
セレッソもある程度高い位置からのプレッシングを行うが、横浜FCのSBに幅をとらせて、SHは中にという立ち位置を取ってからの2CBと2CHによるビルドアップはバリエーション、精度ともに高く、「セレッソがボールを奪う」というところまではいたらない。
その結果セレッソは4-4-2のブロックを作り、横浜FCがボールを握るという展開になっていった。

とはいえこの状況はセレッソにとっても想定内。もちろんできればボールは持ちたいが、そうでなかったとしてもセレッソにとってそれほど大きな問題ではなかった。というのも横浜FCが保持するボールがあるのはほとんどセレッソの作る4-4-2のブロックの外だったから。ここにボールがある限りはセレッソが失点することはほぼ無い。こうして試合展開は静かなものになっていった。

セレッソの4-4-2のブロックが作られるのはおそらく現在のJリーグで最も速い。そしてブロックのスライドもかなり速いと言われている。
しかし、実際の試合を見ていると、例えばものすごいスプリントで自陣に戻って来る選手は他のチームと比べてそんなに多い訳ではないし、スライドでもそんなに素早く動いている訳ではない。
なのに素早くブロックが作られている様に感じるのは、選手の戻るべき場所、埋めるべきスペースの優先順位が明確に決まっていてそれを徹底しているからで、無闇にボールにチャレンジせずに先に優先順位の高い、つまり相手にとってチャンスになりやすいスペースから確実に埋めていくので相手の攻撃をスローダウンさせるからだろう。
これは相手がボール保持している時だけでなく、自分たちがボールを保持している時にも同様である。
そしてスライドについても同様。ボールの場所が変われば守備時のポジショニングも変わるので選手は移動しなければならず、その移動のスピードは急いだ方が良いとも言える。
しかし急ぐとズレに繋がりやすい。ズレると間に隙間が生まれる。一番嫌なのがこの隙間。中央に隙間ができてしまうことが大きなピンチに繋がる。なのでそれほど速くない皆が同じスピードで移動する。これであれば隙間を作ることもなく移動できる。
もちろんこれを行うためには絶え間なくポジション修正を続けていなければならないのだが、急がないことで隙の無い素早いスライドを実現している。

ただし下平監督にとってもこうした「静」の展開になることはもちろん想定していただろう。なのでこの試合では斉藤光毅をベンチスタートにし一美と皆川を2トップに起用、「静」から「動」への手段として高さを求めたのだと思われる。

■「静」から「動」の手段を持つセレッソ

今節もセレッソが持ち込んだ「静」の展開。この展開は失点しにくいが得点も入りにくいのは昨季から得点力不足と言われていることからもよく知られている。
しかしセレッソには「静」から「動」へと持ち込む手段はある。それが前節試合終了後のコメントでロティーナが「われわれは、ビルドアップはチャンスを作るためにやっているので、彼らが最後、フィニッシュで終わる形が増えているのは、チームにとって良いことです。」と語っていたビルドアップである。
試合を動かしたのは14分。
得点につながるセレッソのビルドアップ
キム・ジンヒョンからのビルドアップに対して横浜FCはマンツーマン気味に捕まえにくる。
それに対してキム・ジンヒョンは横浜FCのCHの裏にいる清武へ正確なパス。
マンツーマン気味に捕まえ行っていたにもかかわらずキム・ジンヒョンからのパスが清武へと通ったのはもちろん正確だったこともあるが、最終ラインではセレッソの2トップと横浜FCの2CBが2対2の同数になっていたから。そのため清武を捕まえに行っていた右SBの志知はキム・ジンヒョンのキックモーションを見てCBのサポートへと下がっていった。なので清武には少しスペースと時間があった。
そして清武がワンタッチで藤田に落とすと藤田はドリブルでボールを前進。その後清武が右サイドに展開する。
先制点の場面
この右サイドからの崩しのパターンは今まで何度も見てきた形である。奥埜にボールが戻った時にブルーノ・メンデスが右サイドの奥へ。それに連動して高木がブルーノ・メンデスがいた場所へ。ここに奥埜から縦パスが入り、高木がフリックで清武へ。
この展開で清武にボールが渡ったときは十中八九は清武がフリー。(そういう設計になっている)。
ここから清武が志知を滑らせてから落ち着いてゴール右隅へ流し込んだ。
最後の局面だけ見れば清武の個人技だが、そこに至るまでの展開を見れば全てチームとして意図したものであり、チームとして「静」から「動」へと持っていったことがわかるだろう。
そもそもあそこで個人技が発揮できるのも一番上手い選手がバイタルエリアで前向きにボールを持てる様に組み立てられているからなのだが。

■自分たちの時間

セレッソが先制点を奪ったことでより「静」の展開が続く試合となる。
横浜FCがボールを持つ時間が長いので「横浜FCがペースを握っている」や「横浜FCの時間」という様に見えるかもしれないが、セレッソが持ち込むスローテンポの「静」の展開が続く試合になっているので実際に試合のペースを握っているのはセレッソだった。

30分に一度袴田のパスで松尾がハーフスペースに入り込んだ場面は一瞬セレッソのブロックがスペースを埋めきれていない状態になりかけたが、左SHの清武が内側に絞って対応したことで再びスペースを埋める状態へ。
横浜FCはボール保持率で60%を記録したが、前半の枠内シュートは0。
一方のセレッソは、38分の片山からのサイドチェンジを松田がワンタッチで落として坂元がシュートを放った場面、44分の藤田からのサイドチェンジで片山がシュートを放った場面などチャンスを次々と作っていた。
片山が活きる
先制点後あたりから片山が前線でボールに絡む回数が増えていたのは、セレッソのビルドアップの時に横浜FCのSBがセレッソのSHに対して徹底してマンツーマンでついてきていたからだろう。
そうなればSBの元いたスペースは開く。そこに対して片山が出て行くとSHの松浦がついていくしかない。
片山はセレッソでは右サイドでの起用が多いが、岡山時代の2016年は左WBが定位置だった。右利きということもあり、丸橋の様に相手のDFラインとMFラインの間に斜めのパスを入れたりはできないが、ビルドアップを他の選手がやってくれるならそれ以前はFWだったこともあって左サイドから前に出ていくのはむしろ得意なプレーである。
後半開始〜
後半開始からセレッソは高木に代えて木本を投入。木本はCHに入り奥埜をFWに。
高木は前半44分の片山のシュートの場面で負傷し、頭部にテーピングを巻いていたのだが交代はその影響というよりも事前に準備していたものと思われる。

そんな後半立ち上がりもセレッソのペースは変わらず。
47分にプレッシングから横浜FCが苦し紛れに蹴ったボールを木本が跳ね返し、坂元がポストを叩くシュートを放っている。

状況が変わらない横浜FCは2枚替えを準備。その直後に瀬古歩夢のミスで一度ピンチにはなりかけるがそれを凌ぐと次の横浜FCのボール保持を藤田がカットしカウンター発動。
志知が上がって空っぽになった左サイドを清武がドリブルで持ち上がるとそのままカットイン。一旦はディフェンスに止められるがそのボールのこぼれ球を拾った奥埜が冷静にブルーノ・メンデスに流し、そのままブルーノ・メンデスが流し込みゴール。58分にセレッソが0-2とリードを広げる。
この時の横浜FCの対応は、最終的に清武に追いつくことができるのだが、清武のドリブルそのものをスローダウンさせることはできていない。スローダウンさせなかったことでボールを引っ掛け奪い返すチャンスを作ったのだが、スローダウンさせなかったことでこぼれ球を奥埜に流されブルーノ・メンデスに決められたとも言える。
おそらくセレッソならここで奪い返すチャンスが出来なかったとしてもスローダウンさせる方を選ぶだろう。チームの考え方の違いが出た場面だったと思う。

■前に出る横浜FC

67分〜
セレッソが追加点を奪った直後に横浜FCは準備していた2枚替え。佐藤と皆川に代えて瀬古樹と斉藤光毅を投入する。
斉藤光毅は2トップの一角なのだがサイドにもどんどん出ていき2列目の松浦、松尾とポジションを入れ替えるセカンドトップの様な役割だった。
するとセレッソも67分に奥埜に代えて鈴木を投入。リードを広げたことでプレータイムの調整に入る。

ここから給水タイムぐらいまでは横浜FCは前がかりになり少しずつ走られる場面が出てきたもののまだセレッソは試合をコントロールできていた。
しかし給水タイム明けぐらいから簡単にボールを失う場面が目立つ様になり、横浜FCはそれまでのスローテンポではなく自分たちのリズムでプレーできる様になる。
76分〜
<7>
73分セレッソはブルーノ・メンデスと清武に代えて都倉と柿谷を投入。下がったブルーノ・メンデスに対してロティーナが熱心に何かを伝えていたのが印象的だった。
その状況をみた横浜FCは76分に袴田と松浦に代えて中村俊輔と齋藤功佑を投入。瀬古樹が右SBに入り志知が左SBに。中村俊輔はCHに入る。
横浜FCのポジショニング
この交代後も布陣としては同じ4-4-2なのだが、左の大外レーンは完全に志知。松尾は中に入り斉藤光毅は少し右に出る形。齋藤功佑は斉藤光毅をサポートする様なポジションをとる場面が多かった。
志知は元々アタッカーだったが昨季水戸で左SBにコンバートされ何度もアップダウンを繰り返すオーバーラップでブレイクを果たした選手である。左SBで前を開けてもらうと、窮屈そうにプレーしていた右SBの時とは異なりいきいきと前に出て行く様になっていた。

そして86分、志知のパスを斉藤光毅が胸で落としたところに松尾が入りゴール。
横浜FCが1点を返す。試合後の瀬古歩夢のコメントで入ってくる松尾を誰も見れていなかったと言った主旨の発言をしているが、確かに松尾に簡単に入られてしまったことが悔やまれる。
ただ、それ以上に押し込まれる時間が長すぎたことが問題と言えるだろう。
87分〜
さらに横浜FCは86分に一美に代えて星キョーワァンを投入。星はCBだが空中戦が得意なタイプなので前線に投入される。
一方セレッソは87分に坂元に代えて西川を投入。中村俊輔、鈴木孝司、西川潤というマリノスのジュニアユースから桐光学園高校へという同じ進路を辿った3人が同時にピッチに立った。(鈴木孝司はジュニアユース追浜だが)

ここから横浜FCが押し込む時間を続けるもそこまで危ない場面はなく、唯一のピンチとなった90+4分に松尾が入り込む場面も松田とキム・ジンヒョンが対応してセーブ。そのまま試合終了となり1-2でセレッソ大阪が逃げ切りに成功。これでセレッソは2連勝となり、横浜FCの連勝は3でストップした。

■その他

順当に勝利したという試合だったと思う。後半の給水タイム以降に試合のコントロールを失ったのが反省材料。
押し込まれる様になった時にどう押し返すのか。柿谷や坂元、西川などのドライブという方法もあるが、こう言った場面でもう少し2トップが貢献してくれると助かるのだが、その辺りをどうするのかがチームとしての課題だろう。
ただ、そこまでの試合の進め方は万全。ボールは握られたが試合をコントロールできていた。
あと失点の場面に関する瀬古歩夢の試合後のコメントについて。

--失点の場面での反省点は?
正直あのゴールは相手を褒めるというか、パーフェクトな攻撃だったと思います。その中で1つ防ぐことができたとすれば、落とされたときの3人目の飛び出しに対して、自分たちのチームの選手が誰も付いていっていなかったこと。あそこで自分が寄せた方が良かったのか、寄せなかった方が良かったのか、今後考える部分です。

どんな選手でも反省はするとは思うが、その中で「寄せなかった方が良かったのか」という選択肢があることと、個人の問題ではなくチームとしての問題として取り組もうとしていることが印象的だった。




1 件のコメント :

  1. 瀬古の発言がチームとしての問題として取り組もうとしているということが、チームの好調の要因のように思えます。片山や奥埜や木本がどこに入ってもプレーできるというのは、チームとしての取り組みが皆に浸透しているという事で、非常に頼もしく、楽しみです。とりあえず、明日柏を撃破してまず1冠取りたいですね。相手は川崎でしょう。リーグでも、天皇杯でも(?)争うと思われるため、楽しみです。

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